今日は、3月31日に発売された

モーニング娘。'21の

約3年半ぶりとなるオリジナルアルバムの寸評です。

 

<収録曲>
01.愛してナンが悪い!?
02.ギューされたいだけなのに
03.信じるしか!(生田、石田、小田、加賀、森戸、岡村)
04.TIME IS MONEY!(佐藤、野中、横山、山崎)
05.泣き虫My Dream
06.二人はアベコベ(譜久村、牧野、羽賀、北川)
07.純情エビデンス
08.このまま!
09.KOKORO&KARADA
10.人生Blues
11.Hey! Unfair Baby
12.恋愛Destiny~本音を論じたい~
13.LOVEペディア
14.人間関係No way way
15.青春Night


タイトルが「That's J-POP」。
この大きく出たところに、
久々につんくらしさを感じるわけですが、
中身は、今のJ-POPの風潮を幅広く表現したというよりは、
今のモーニング娘。らしさをより追求したアルバム、

ということになるでしょうか。

キーワードは、

 

◆スピード感、疾走感
◆歌声のハーモニーによる厚み

 

の2つです。

今のモーニング娘。'21の最大の強味は、ライブにおける疾走感です。
時に「体力オバケ」と称された、
ノンストップで一気に畳み掛ける圧倒的なスピード感。
ロックなナンバーにしても、EDMにしても、

一切休憩なし、手抜きなしのメガトンパンチの雨あられ。
歌うことだけでさえ大変なのに、

そこにフォーメーションダンスまで付いてきて、

メンバーからしたら「私達を殺すつもりなの?」と思っちゃうくらい
ハードなライブをこなしています。

 

そんな「疾走感」溢れる曲が、このアルバムにも多いこと。
スピード感を出すには、ただただテンポを速めればよい、

休符を少なくして音符を増やせばいい、

というものでもありません。
リズムの緩急によって、

スピードを表現することだってできるのです。
例えば、野球のピッチャーが、ストレートを速く見せるために、
時には球速の遅いカーブやチェンジアップを投げて、

緩急の差でスピードを速く見せるよう工夫するのと同じです。

このアルバムの楽曲にも、

そんな工夫が随所に見られます。

 

シングル曲の「純情エビデンス」はもちろん、

アルバム1曲目「愛してナンが悪い!?」、
ゴキゲンなアッパーソング「このまま!」、
このアルバムのメインアンセム的な「恋愛Destiny~本音を論じたい~」などは、
初聴の段階ですでに

『これはライブで聴きたい!』と思ったファンも多いはず。
コロナ前の、モーニング娘。のライブがどんな感じか、

その「スピード」を知っているファンにとっては、
このアルバムを聴けば、

モーニング娘。'21がステージでパフォーマンスしている姿が
容易に想像できてしまうのです。
 

もう一つは、歌声の「ハーモニー」(和音)です。
アルバム全体を通じて、

主旋律のメロディだけ歌声がシングルで乗っている場面が
極めて少ないことに気付きます。
レコーディング時、常にバックコーラスを入れて、

音を二重、三重にも重ね合わせる作業を行っているのです。
これも、今のモーニング娘。の楽曲制作スタイルの特徴的な部分です。
言い換えれば、

人間の歌声もインストゥラメンタルのひとつ、と捉えて、
音を重ねてハーモニーを作り、

「厚み」のある楽曲に仕上げています。

 

アップテンポの曲はもちろん、
エキゾチックな「信じるしか!」や、
爽やかなバラードの「泣き虫My Dream」は
サビのハーモニーが特に印象的な曲です。

そんなハーモニーの連続の中に、

たまにソロパートが聴こえてくると
より個性が引き立って、それも聴きどころのひとつとなっています。
「二人はアベコベ」は、

羽賀朱音、牧野真莉愛の12期コンビの出だしが新鮮。
「TIME IS MONEY!」では、

佐藤優樹、野中美希がパンチのある歌声を聴かせてくれます。
で、最もエッジが効きまくっているのは

「恋愛Destiny~本音を論じたい~」の小田さくら「留まらない」。

ひなフェスでもおいしいところをかっさらっていました。

 


最後に、このアルバムで

個人的ベスト(シングル以外)を1曲挙げるとしたら、
「恋愛Destiny~本音を論じたい~」。
これぞロッキン用のメロディック・ハードコア。
間奏のギターリフも特徴的なのだけれど、
大久保ちゃん(大久保薫)の本領発揮は

シンセサイザーが奏でるキレッキレでドープなサウンド。

これに尽きます。