モーニング娘。は1日にして成らず。

モーニング娘。やハロープロジェクトが出来たのは、

つんくという絶対的プロデューサーの存在があってこそだけれど、
そもそも、つんくにどこまで決定権があって、例えば曲作りに対しても
どこまで主導権を握って進めていたのかということについては、
あまり明確になっていない。

言えることは、つんくは彼を取り巻く優秀なミュージシャン、音楽制作者達に囲まれて

仕事をしていたということだ。

それは、アップフロントが音楽への取り組みに対して

自由闊達な雰囲気を持つ会社であるということに起因している。


◆森高千里『銀色の夢』(1996年)


 

作詞:森高千里
作曲:伊秩弘将

V(ボーカル),Cho(コーラス):森高千里
P(ピアノ):前嶋康明
G(ギター),Key(キーボード):高橋諭一
B(ベース):瀬戸由紀男
Ds(ドラムス):森高千里
大正琴:橋本慎


アップフロントらしいのは、気が合う仲間同士で、
その場のちょっと軽いノリで音楽やってみた、というところである。

ちょっと面白いことをやってみようという遊び心が、音楽の可能性を
引き出すことだって往々にしてある。

前嶋康明は、ジャズ・ラテン音楽のキーボード奏者でしばらく活動した後、
森高千里バンドマスターになり9年間務めた。

ビートルズ大好きなギター奏者・高橋諭一は、瀬戸由紀男の勧めで
森高バンドの制作陣に加わった。

誰の発案かは知らないが、森高千里にドラムを叩かせたり、とにかく何でもアリだった。
森高のドラム手腕は一部で高く評価され、

吉田拓郎に「その辺のドラマーより全然うまい」と言わしめている。

そしてこの曲では、橋本慎が大正琴を弾いている。
大正琴を取り入れようというのも、遊び心があるからこその発想だろう。

後につんくが「どうしてもイントロに使いたかった」と語った
モーニング娘。『AS FOR ONE DAY』(2003年)のギリシャ楽器も同じようなノリだろう。

 

そしてこの大正琴とギターを使った『銀色の夢』の間奏部分が、
後に前嶋康明が編曲した『Memory 青春の光』(1999年)の間奏部分へと
繋がっていくのである。

 

この継続したストーリーこそ、アップフロントが音楽事務所たる所以である。