「お願いがあるんだけど…」
和訳するとそんな意味が込められたタイトルの鈴木愛理デビューアルバムが
6月6日についにリリースされました。
一通り聴いてまず思ったのは、
じっくり十分な時間をかけて、しっかりコンセプトを練り上げ完成した作品だということ。
捨て曲なし、粒揃いの全15曲、
とりあえず頭数揃えるためにそれっぽく作ってお茶を濁すといった手抜きの部分は
一切感じませんでした。
そしてこれだけ楽曲のタイプがバラエティに富んだアルバムは近年では珍しいということ。
それを、鈴木愛理がスポンジのような吸収力の高さ、柔軟性を発揮して、
一度彼女の中で咀嚼した上で、外に表現したのがこの作品。
つまり、いろいろの顔を持った愛理が見れるアルバムとなっています。
01.DISTANCE
名刺代わりの一発目は、疾走感あふれるダンスチューン。
もともと喋りでは決して滑舌の良くない愛理だけど、英語の発音が上手くなっているし、
日本語の部分も子音を使いながらリズミカルに刻まれ、
サビの「っすっべってーの」のタメから一気に解き放たれるグルーヴ感が抜群に心地良い。
02.未完成ガール
ブレス音から始まるところなんかも、モロ亀田誠治に影響を受けているロックナンバーだが、
愛理ならではの声の清涼感、前向きな明るさは聴いている者を元気にさせる。
Buono!からのコンビである岩里祐穂さん作詞ですが、
彼女がチョイスする言葉はメロディラインにスムーズに乗って、耳に入りやすいんですよね。
03.GOOD NIGHT
タイトルは「おやすみ」だし、スローでブルージーな出だしなのに、
ついつい踊り出したくなるようなご機嫌なハッピーソングにガラッと展開が変わります。
キーが高く、サビでは裏声も駆使していますが、
そのつなぎ目のところもスムージーなのはさすが。
04.光の方へ(鈴木愛理×赤い公園)
赤い公園サウンドそのまんま。
彼女達の楽曲は、普通の女の子の日常を切り取ったものが多いイメージだけど、
津野米咲がつばきに提供した『笑って』のように、比喩的表現が多くちょっとシュールな世界観。
それを、あえてポップに可愛らしい声で歌ってます。
05.Be Your Love
愛理の声と曲調がピッタリ合っている。
ミディアムテンポのダンスナンバーだが、曲線的な滑らかさや繊細さの表現の中に
しっかり力強さも兼ね備えています。
06. STORY(鈴木愛理×SCANDAL)
赤い公園がチャットモンチーなら、SCANDALはピンクサファイアか(古いか)。
よりロックテイストを受け継ぐ彼女達との共演によって、アッパーなロックナンバーに仕上がりました。
HARUNAのコーラスも効いてます。
07. MOMENT
今風のR&Bバラード。
愛理のボーカルはやっぱり高音部分に特徴があるよね。
透明感とか、優しさとか。基本的にはここが一番の売りだと思っているし、
それが堪能できる曲。
08.君の好きなひと
アンジュの新曲レビュー時でも褒めた山崎あおいは愛理の大学の先輩。
山崎あおいの心の中の闇の部分と、
そこに光を当てる鈴木愛理という関係性は今後も面白くなるんじゃないかと思ってる。
この曲の主人公の暗い心情を、愛理が明るく歌うから、絶望的にならずに済む、
そのバランスみたいな。
09.たぶんね
ツイートのアルバム曲内人気ランキングでも上位だった曲。
m-floが好きな自分としても、リリカルで切ない感じのメロディがいかにも好みです。
できれば、☆Takuにトラック付けてもらえば個人的に完璧(笑
10.いいんじゃない
そしてなぜか歌謡曲がここにくると(笑
ここではあえて川瀬智子のようなけだるさを出してますが、
これならフレンチポップ風で聴きたかったかなと。
11.Perfect Timing
最近はどうか良く知らないけど、昔クラブに行けば、こんなスローなレゲエナンバーが
よく流れてた。
そういう意味で、このアルバムで最も洋楽色が強いけど、
普通にこなしてしまう愛理のポテンシャルの高さに驚く。
12.Candy Box
ベリーキュートなガーリーポップス。こちらはBuono!の延長線上にあるバンドサウンドなので、みんなライブでも盛り上がれるでしょう。うれしい!楽しい!大好き!
で、この曲を聴くと、ドリカムじゃなく椎名林檎『病床パブリック』を思い出す。
わかる人にはわかってくれるかな?
13.私のそばで
「ずっと探してきたんだぁ⤴」の上がる部分がポイント。
壮大な青空が広がっていくような開放感にも繋がる部分。
アコースティックverとかももしあれば聴いてみたい。
14.#DMAF (鈴木愛理×SPICY CHOCOLATE)
SPICY CHOCOLATEならではのドラマチックで切なく美しいメロディ。
愛理自身の言葉で、周りの人達やファンへの想いが綴られています。
武道館でもこの曲がクライマックスになるでしょう。名曲。
15.start again
そして新たな道への再出発。
「baby don't you cry no more」という詞も含め、
安室奈美恵の『Baby Don't Cry』を連想せずにはいられない。
安室ちゃんの歌は、聴いている多くの人に勇気を与えました。
このアルバムを聴き、鈴木愛理もそういう存在になれると確信しています。