今週はハロプロ研修生の名盤『1 Let's say“Hello!”』の解説です。
プロデューサーにとって
「自分のやりたい音楽をとことん追求する」のか、
「歌い手(演奏者)の個性にあわせた音楽をやる」のか、
頭を悩ませるところだけど、
つんくはその両方できるのが強味ですね。
モーニング娘。や太陽とシスコムーン、プッチモニ、Berryz工房の結成初期は、
まだメンバーの個性が固まっていないところもあり、
つんくが最初に考えたコンセプトを自由に追求できていた時期でした。
その都度、彼の中でまさに旬という音楽を表現していたわけですから、
当時のレコーディング風景を見てもわかる通り、心の底から楽しんでいる様子がいい意味で作品にも出てますね。
初期に作られた娘。の2ndアルバム(『セカンドモーニング』)や、
松浦の1stアルバム(『ファーストKISS』)が、名盤として今も語り継がれているのも、
つんくのやりたいことがそのまま表現できたからでしょう。
そして、この研修生アルバム。
まあ、歌うのはプロになる前の研修生なわけですよ。
別に本気で売るモンじゃないし、忙しい仕事の片手間に作るようなモンだと思いがちですが、商業主義から解放されている分、ついついつんくが楽しんでしまい、
「うっかり本気を出してしまった」アルバムとして、高い評価を得ることになったわけです。
1.Say! Hello! (編曲:鈴木俊介)
「赤羽橋ファンク」の最高傑作ともいうべきこの曲。ファンクといえばこの人、鈴木俊介の登場です。
元来はジャズ指向の彼なので、MJQ風ビブラフォンが印象的なモーニング娘。『好きで×5』、松浦亜弥『オリジナル人生』などで本領を発揮していますが、
そういったジャズ、ソウルのニュアンスをうまくファンクに取り入れ、
おとめ組『愛の園 〜Touch My Heart!〜』や、最近では赤い公園・津野米咲と組んで
『泡沫サタデーナイト!』といった名曲を生んでいます。
この曲の聴きどころ①:
鈴木俊介のリズムギターと笹本安詞のベースのコラボレーション。
やっぱベースが良い曲は間違いない。
この曲の聴きどころ②:
つんくは王道のコード進行を使っても必ず一つ音を外してくる。
「いまできる、100%」の「るー」と最後の「せーん」の音を全然変えてくるとか、
「地球がディスコディック、戦え乙女チック」の最後の「ちーっく」の「く」を半音上げる感じとか、
あえての不協和音でアクセントを付けるのが効果的なんですねー。
この曲の聴きどころ③:
遠近法を使った歌詞。
例えば、2番に出てくる「初恋」「純情」とか内面的で深いテーマと、
「身長」「赤ニキビ」といった外見的な身近なテーマを並べることで、
歌詞に奥行きを出す手法であったり(参考例:モベキマス「もしも…」(*1))、
「遊び慣れたあの子だって純情」といった逆説的な言い回しも
コロコロと表情が変わる多感な年頃にピッタリ。
この曲の聴きどころ④:
最後は聴きどころというより見どころ。
2番の後の間奏のダンスバトルが何といっても見どころですね。
2016年12月18日、加賀楓、横山玲奈にとって最後の研修生発表会(Zepp Tokyo)となった
回は、よこやんと当時小4の橋迫鈴(はしさこ・りん)ちゃんの超世代コンビのダンスバトルが、なんとも言えない多幸感に溢れていて思い出に残るシーンです。
苦節の末、夢を掴んだかえでぃの「やってみなきゃ分からない、人生の結果もあるから」も感動的でした。
ついつい長くなってしまった。2曲目以降は明日以降さらっと。
(*1)「もしもこの星が一日で最後迎えるとしても」⇔
「もしもお腹が空き過ぎててキュルルと音がなっても」
人間が生きている世界は刹那的だけども、それより重要な問題は彼の前でお腹がなっちゃったりすることだっ たりする。
「聞こえないフリするくらいじゃダメ」と書けるつんくは本当に女心をわかってる。
うむ、これがモテる秘訣だな。