安倍氏の最重要課題である教育改革。
その第1弾が「教育再生会議」であるとすれば,
第2弾はまもなく行われるであろう「教育基本法」の審議であろう。
2006年9月30日の読売新聞に掲載された伊吹文明文科相のコメントによれば,
臨時国会の最優先課題は教育基本法改正とのこと。
この中で伊吹氏は,次のように語っている。
 法律の分量から見ても、審議は70~80時間やれば十分だ。
 早くお願いして通したい。
 ただ、成立しても仏を作っただけで、魂が入っていない。
 魂の部分が個別の教育改革であり、実効性を持たせるため、教育制度改革に手をつけたい。
  引用 http://www.yomiuri.co.jp/feature/fe6900/fe_ab_06093002.htm
そもそも,審議の時間は問題ではなく,
審議の内容こそ問題にすべきかと思います。

2006年4月に自民党から,翌5月には民主党から,教育基本法の改正(改悪)案が発表になりました。
これより2年前の2004年2月25日,
自民党や民主党など超党派の議員による「教育基本法改正促進委員会」が結成されましたが,
この設立総会で当時民主党(2005年に除籍処分を受け現在は無所属)の西村眞悟議員は挨拶の中で,
次のように述べています。
●お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す。
 お国のために命を捧げた人があって,今ここに祖国があるということを子どもたちに教える。
 これに尽きる。
●お国のために命を投げ出すことをいとわない機構,
 つまり国民の軍隊が明確に意識されなければならない。
 この中で国民教育が復活していくだろう。
ようするに,これが教育基本法を変えたい本当の狙いといえます。
国には,国民を守るという姿勢がまったくないということです。

郵政民営化を争点に行われた先の第44回衆議院総選挙
自民党の得票率は比例区38.2%,小選挙区47.8%という結果にもかかわらず,
議席の上では480議席中296議席と,全体の62%を獲得する結果となりました。
公明党を含めた与党全体では327議席となり,全体の3分の2以上である68%となっています。
そのため,
 衆議院を通過し,参議院で否決された法律を,衆議院で可決させることができる。(過去20例)
とのことで,いわゆる愛国心の部分が自公の両者の間で食い違っていることから,
4月に発表された教育基本法案がどのように変わったか,
もしくはどのように公明党を納得させたかが,見守る必要がありそうです。

そもそも郵政民営化の是非を問う選挙という触れ込みで自民党は圧勝したのですから,
それ以外の議論で,数の優勢を利用しないでいただきたいところです。
そんなことを言うと,
 国民にはきちんとマニフェストを説明した。
 そのすべてを納得した上で我々に投票していただいたなどと,
多くの国民をメディア戦略でだましておいて言うんだろうなぁ。

それに,自民党の得票率を考えると,獲得議席数は明らかに民意を反映していません。
1票の格差問題もありますが,
こういう理不尽な結果になってしまう選挙制度を根底から見直さないと,
日本の民主主義は崩壊してしまいそうですなぁ。

参考までに,
ドイツでは比例代表が基本で,
日本で用いられているドント方式は,議席配分が大政党に有利とのことで,すでに廃止されています。
フランスでは,2回投票制による政治勢力の結束によって,
過半数以上の得票率で与党となるための仕組みが出来上がっています。

余談ですが,
戦後,最も多く与党の地位にいるのは自民党ですが,
過半数の得票率で与党となったことは,
 衆院選では,
  1958年5月22日の第28回衆院選で57.8%
  1960年11月20日の第29回衆院選で57.6%
  1963年11月21日の第30回衆院選で57.6%
 参院選では,
  1959年6月2日の第5回地方区で52.0%(全国区は41.2%)
となっており,結党後の最初の4選挙のみです。
つまり国民の過半数に支持されたことは,かれこれ40年以上ないということですなぁ。

教育基本法は,国の根幹を担う教育の最も重要な法律です。
国民の過半数から支持されていない政党の思惑通りになっては,
過半数の国民が後悔することは必至です。
少なくとも郵政民営化より重い議題だと思います。
誤解を恐れずに言うと,郵政程度の問題で衆議院を解散させたのなら,
今回は明らかに衆院を解散し,国民に審判を受けるべきではないかと思います。
マスメディアは,教育基本法が変わった場合の,
予測されうるメリットとデメリットを徹底的に国民に知らせるべきです。
それほど重要な法律です。
結論を急ぐべき問題ではないかと思います。