　今までの人類は、外に拡散していくという、ある意味男性を象徴するエネルギーの使い方をしてきました。これからは、内に集約していく、融和していくという、女性を象徴するエネルギーの使い方を学ぶことでしょう。皆がそう変わるわけではなく、そのような女性的エネルギーでもって、これからの時代がリードされていくということです。

　魂が目覚めていない時代には、ピラミッド型の縦の組織で指示・命令を降ろしていく必要がありました。それぞれの個性よりも目標達成を主眼として、効率的な拡大を目指していました。確かにそれは、前進するには機能的でした。リーダーが主導していき、他はそれに従うという男性的で依存的な組織でした。

　しかし、一人ひとりが個性を放ちはじめると、その枠の中では納まりきらなくなります。誰かが決めたゴールよりも、自分の中の正直な思い（魂の願い）のほうが大切に思えてくるためです。自分の中の真実に軸足を置けば、他の人と競争したり、比べたりする必要がなくなります。その結果、違うからこそ、それぞれの存在意義があり、違いという個性を活かして、持てるものを分かち合うというフラットなグループが出来ていきます。一人ひとりが自分のリーダーであるという、自立的で女性的な組織の在り方といえます。

　それが男性原理から女性原理への流れです。オーケストラからアンサンブルへの流れです。

　これまでのようにリーダーが主導し、組織化された男性的・支配的な潮流から、それぞれの個性が生かされることで、柔軟な助け合いのコミュニティが育つという女性的・調和的な潮流が、再び潮目を大きくしていくことでしょう。それら２つの潮流は、どちらも同じ１つの海の流れであり、優劣があるわけではありませんが、季節によって潮の流れが変わるように、今、潮目が変わる時に来ているということです。

　かつて日本では、女性的・調和的な社会の在り方という潮流が、大きく流れていました。しかしその流れは、男性的潮流が押し寄せることで海底に沈められていたのですが、それが再び上昇して大きくうねり始めることでしょう。

　もともと持っていた国の素質があらわになり、男性海流の良さを程よく取り入れた、新たな流れへと変化していくことでしょう。つまり、相互依存的調和ではなく、自立的な調和、協奏的な調和の流れになるということです。

　そして、スピリチュアリズムという西洋に吹いた風も、東に流れてきました。スピリチュアリズムを原点回帰と伝えたのは、もともと日本人の自然観である神道が語るところと、根幹において一致するためです。つまり、人や自然は霊的な存在として繋がっており、死の関門を越えても存在する、ということです。

　その上で、西は個の責任を強調しました。東はつながりの中での調和を主張します。そのどちらも包含した在り方が、目指すところです。父性的な自己責任の世界観と、母性的な受容と調和の世界観が、大きな時代の流れの中で、融和していくことでしょう。

　個の中に、対極の特質を秘めることはよくあります。それらの多くは、社会適応のために一方の特質は表出されていても、もう一方の特質は無意識層に眠らせることになります。しかし、いざ魂が目覚め、自分という全体に光が当たり始めると、納屋の奥にしまっておいたものが明るみに出されることになります。

　個の中の変化は、地球という一個の生命の変化とも連動します。男性的・支配的宗教を基盤とした社会における霊的真理が語られながら、その一側面を否定することなく、新たな女性的・調和的宗教を基盤とした霊的真理が立ち上がって来るのは必然のことです。

　つまり、地球という一生命において、それぞれの側面が時代と場所を違えて表出し、そして全体調和が徐々に露わになってゆく、ということです。

　個の話に戻れば、相矛盾するものを自らの内に保有することになりますが、これは意識の広がりによって可能となります。魂の目覚め・覚醒とは、自我という小さな箱から出て、より広い範囲に意識を広げることを言います。

　男性原理では、プロジェクトを進めるにあたり、結果を追いかけ、そこに着地するように逆算し、すべきことを組み立てていました。力と支配のエネルギーが強く働いていました。

　女性原理では、直感の導きに従うことで、タイミングや出会いがシンクロ的に演出され、あたかも川下に向かう舟に乗っているかのごとく、自然と事が流れていきます。信念と柔軟さがあれば、その舟に身を任せていられることでしょう。

　男性的な宗教のもとでは、玉座は支配の象徴でした。そこに座った者は権力を得、人々を導き、教えを説きました。祈りの対象にもされて、忠誠心と信仰心はイコールとみなされていました。

　しかし、これから向かう女性的な思想と文化においては、玉座には誰も座っていません。その誰も座っていない玉座は、神がいないことを示しているのではありません。支配する神がいないのです。

　人々は、それぞれに合った居心地のいい椅子に座ることができます。独占されていた椅子はなくなり、平らな空間にめいめいが自由に座っています。各自が神とつながるようになれば、玉座はいらなくなるのです。

　それぞれが座っているその椅子は、信念という椅子です。信仰と呼んでも、思想と呼んでも、価値観と呼んでも構いません。その座り心地は、自分にピッタリとくるため、他の人にも同じ椅子に座るよう勧めたくもなるでしょう。しかし、それぞれの椅子でいいのです。

　これまでは玉座に統率された一団同士が、自分たちの正しさにとらわれ、正しさと正しさのぶつかり合いで争いが起こってきました。そして境界線を作ってしまいました。彼らは不一致が許せなかったのです。

　それぞれの椅子に座ったなら、同じ事を繰り返してはなりません。不一致は、理解という愛の種なのですから、それぞれに合った椅子に座ればよいのです。そして、それを尊重し合えばよいのです。

　　　　　　　　　　　『サラ・メッセージ　　山川蓮著　三上直子編』　より

大峠のその先に訪れる世界