馬の司法試験合格

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1、設問1

()逮捕①について

 逮捕①が212条2項に基づく準現行犯逮捕として適法といえるためには、212条2項各号の一にあたること、「罪を行い終わってから間がないと明らかにみとめられる」こと、逮捕の必要性があること、である。以下、検討する。

ア 212条2項各号の一にあたること

 まず、本件では甲の上下の着衣及び靴に一見して血とわかる赤い血液が付着しているところ、他人を殺傷等するのでなければ着衣及び靴という広範囲に血が付着することは考えにくいこと、夜10時に血液が付着したまま歩くことは著しく不自然であること、といった事情からすれば、甲の衣服等に付着した血液は間近に他人を殺傷した際に付着したものと考えるのが合理的である。

 よって、「被服に犯罪の顕著な証拠があるとき」(同項3号)にあたる。

イ 「罪を行い終わってから間がないと明らかにみとめられる」こと

 まず、準現行犯逮捕が裁判官の事前審査(憲法33条)なしに適法とされるのは、その者が犯行したことが明らかであるために誤認逮捕による不当な身体拘束のおそれがないといえるからである。

 そこで、「罪を行い終わってから間がないと明らかに認められる」とは、①犯罪と犯人が明白であること、②時間的・場所的近接性が認められることをいうと解する。そして、明白性の判断にあたっては客観的事情に基づくべきであるが、供述であっても客観的事情に合致するなど高度の信用性を持つ場合には考慮することも許されると解する。

 本件の場合、犯行を目撃したWによれば男1がVの胸を2回突き刺したというのであるから、その際に男1の着衣等に血が付着した可能性がある。そして、Wの供述する男1と甲の身体的特徴が完全に合致しており、前述のように甲の着衣等に血液が広範囲に付着していたという客観的事情からすれば、甲がVを刺突したのではないかという極めて高度の嫌疑が生じていたといえる。

 さらに、本件では甲と一緒に歩いていた乙が「20分前にH公園でVを殺したからだ」「午後10時に俺がVをH公園に誘い出した」「俺が『やれ』といってVを殺すように指示」「甲が包丁でVの胸を2回突き刺して」「俺が甲に『逃げるぞ』と呼び掛けて」など述べているところ、かかる供述は第三者たるWの目撃供述と時間、場所、発言内容等が細部まで一致しており、その場にいなければ知ることができないような情報であることからすれば、その信用性は極めて高いということができる。

 以上のことからすれば、甲がVを刺殺したことは明白であったといえる(①)。

 また、甲を逮捕したのは午後10時30分と犯行から30分しか経過しておらず、また犯行現場たるH公園から800メートルの範囲だったのだから、時間的場所的近接性もあるといえる(②)。

ウ 逮捕の必要性

 まず、準現行犯逮捕について逮捕の必要性を要求する明文の規定はないところ(199条2項但書参照)、不当な身体拘束の防止という見地からすれば逮捕の必要性が要求されると解すべきである。

 本件の場合、被疑事実はVの殺害という重大事件であるところ、甲が質問に対して一切答えていないことからすれば、甲の逃走のおそれがあるといえ逮捕の必要性を肯定できる。

エ したがって、以上より逮捕①は適法である。

(2)逮捕②について

 それでは、次に逮捕②は212条2項に基づく逮捕として適法といえるか。同項の一に該当するといえるのか問題となる。

 まず、本件で乙は甲と路上を歩いていたにすぎないことから「犯人として追呼」(同項1号)されていたわけではない。また、乙は「明らかに犯罪の用に供したと思われる兇器その他の物を所持」(同項2号)していたわけでもない。そして、乙は甲とことなって着衣等に血液が付着していたわけでもないから3号にもあたらない。さらに、乙は自ら犯行を認めているため、「誰何されて逃走」(同項4号)しようとしているわけでもない。

 したがって、乙は同項の一に該当するわけでないから、逮捕②は違法である。

()差押えについて

ア 本件差押えは逮捕に伴う差押え(220条1項2号)として適法といえるか。甲を移動させているため、「逮捕の現場」といえるのか問題となる。

 まず、逮捕に伴う捜索差押えが無令状で許容されるのは、証拠物が存する蓋然性が高いため、捜索差押許可状によらなくとも、捜査機関による不当な人権侵害のおそれが低いからである。そうであれば、「逮捕の現場」とは捜索差押許可状が発付されたならばその効力が及ぶ範囲と解すべきである。

 しかし、被疑者の身体については、移動したとしても証拠物が存する蓋然性が変わらないことを根拠に「逮捕の現場」にあたると解するのは妥当でない。なぜなら、「逮捕の現場」という文言に反するし、捜査機関による濫用のおそれがあるからである。

 もっとも、その場で捜索差押えをすると、被疑者の名誉、呼通の安全を害する等の事情がある場合には社会通念上相当といえる距離の移動であれば、「逮捕の現場」と同視しうるとして適法と解する。捜索差押許可状が発付された場合でも、その効力として多少の有形力の行使、移動は許されると解されるからである。

 本件の場合、Pが路上において甲に対し逮捕に伴う捜索を実施しようとしたところ、甲が暴れ始め、ちょうどそのころ、酒に酔った学生の集団が同所を通りかかり、P及び甲を取り囲んだというのであるから、そのまま捜索差押を実施することは甲をさらし者にし甲の名誉を害する状況であった。また、一台の車が同所を通行できず、停車を余儀なくされていたのだから、そのまま捜索差押を実施することは同所における交通の安全を害しかねなかったことも考慮すれば、甲を移動させたうえ捜索差押を実施すべき必要があったといえる。

 そして、Pは甲を300メートルという近接したI交番につれていくつもりで甲を移動させ、また実際に携帯を差し押さえたのも逮捕した路上から約200メートルという近接した場所だったのだから、距離として相当な範囲内にあったといえる。

 よって、「逮捕の現場」と同視しうる。

イ 次に、「逮捕する場合」とは、逮捕と同時並行的であることが必要なところ、本件では甲を逮捕した午後10時30分から10分しか経過しておらず、距離も200メートルと近接していたのだから、同時並行的であるといえ、「逮捕する場合」にあたる。

ウ さらに、本件差押えが適法といえるためには、携帯電話について被疑事実との関連性が認められなければならない(222条・99条1項)。

 本件の場合、乙はP及びQに対して甲に対してメールでVを殺害することの報酬金額を伝えた旨述べて、「報酬だけど、100万円でどうだ。」と記載されたメールを示している。そうして、このように携帯電話でメールを送るのであれば甲も携帯電話でメールを受信したと考えるのが合理的であり、殺害の報酬という被疑事実に関連する情報が携帯に含まれていたと考えることができるから、甲の携帯電話には関連性がある。

エ また、甲は質問に一切答えておらず、殺人という重大事件であることも考慮すれば、甲と犯罪を結び付ける証拠として携帯を差し押さえる必要性もあった。

オ したがって、以上より本件差押えは適法である。

2、設問2

()実況見分調書全体について

 まず、本件実況見分調書はPによる供述書であり、知覚・記憶・叙述の過程を経ていることから伝聞証拠にあたり証拠能力が認められないのが原則である(3201項)。

 もっとも、実況見分は検証と同様の性質を有し、その内容を口頭で説明するよりも文書の方が詳細かつ確実であるから、3213項を準用し、「真正に作成されたものであること」、すなわち、名義の真正と内容の真正についてPが供述すれば例外的に証拠能力を認めることができると解する。

(2)Wの説明部分

 もっとも、本件実況見分教書にはWの説明部分が含まれている。そこで、かかる部分についてさらに伝聞法則の適用があるのではないか。

 まず、伝聞法則の趣旨は供述証拠が知覚・記憶・叙述の各過程に誤りを介在させるおそれがあることから、反対尋問によって内容の真実性を吟味できない場合には証拠能力を否定するという点にある。

 そこで、伝聞法則の適用があるのは要証事実との関係で、原供述内容の真実性が問題となる場合と解する。

 ア 資料1

 まず、検察官は「犯行状況」を立証趣旨としているところ、これは本件において甲が一貫して黙秘していることから、甲がVの胸を突き刺した状況を立証し、もって甲の犯人性を証明しようとするものであると解される。

 かかる要証事実との関係ではWの「このように…突き刺しました。」という原供述内容の真実性が問題となることから、伝聞法則の適用がある。

 また、資料1に貼付された写真は「このように」というWの説明内容をなすものであるから、上記Wの供述の一環として一体的に捉えられるべきと考える。

 そうすると、資料1はWの供述録取書としての性質を有するからWの署名、押印が必要なところ(321条1項柱書)、本件ではこれを欠いている。

 したがって、上記部分について証拠能力は認められない。

 イ 資料2

 次に、検察官は「Wが犯行を目撃することが可能であったこと」を立証趣旨としているところ、これは午後10時、H公園という本件犯行と同様の日時場所においてWを立会人とした実況見分を行った結果、距離、明るさ等からWが犯行を目撃することが物理的客観的に可能であったことを立証し、Wの供述の信用性が高いことを推認させようとするものであると考えられる。

 そうであれば、資料2のうち「私が犯行を目撃した時に立っていた場所はここです。」というWの指示は、実況見分すべき地点を指示するものにすぎず、指示したこと自体が要証事実となるのだから、原供述内容の真実性は問題とならず、伝聞法則の適用はない。

 これに対して、「このように…十分みることができます。」という部分は実況見分すべき地点を指示するものではなく、実況見分と関連しないことから、原供述内容の真実性が問題になると考えざるをえない。

 したがって、かかる部分については署名、押印を欠く以上証拠能力は認められない。

 

                                          以上