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行政書士試験合格を目指す人のためのブログ(作成中)

行政書士試験合格を目指す人のために、各法律科目解説ブログです。

単なる暗記ではない正確な知識と法的思考に基づいた
「王道の合格法」を身につけていただけたら幸いです。

 さて、いよいよ民法の解説に入っていきましょう。

 その前に、民法の解説の進め方について少しお話をさせていただきます。


 まず、この解説は、六法の目次の順番に従って解説していきます。これは、体系的理解という点から合理的だからです。多くの基本書や参考書もこの順番に従っていますし、行政書士試験も、概ねこの順番に従っています。

 また、行政書士試験の難易度を考慮し、必要がないと思われる部分は、大胆に飛ばします。民法は1044条もあり、その中には、行政書士試験には不必要に難しい部分や、絶対に出ないマイナーな部分があります。そういった部分は解説しませんので、予めご了承ください。

 なお、タイトルにある「1-1」とは、「第1編、第1章」を意味しており、「第1編、第1章、第1節」ならば、「1-1-1」となります。六法の目次でご確認ください。


 では、本題に入ります。今回は1条と2条です。まずは条文を読んでみてください。


 この中で特に重要なのは、1条2項の「信義誠実の原則(信義則)」と、1条3項の「権利濫用禁止の原則」です。

 過去問の傾向からすると出題可能性は高くありませんが、これらは民法の一般原則として極めて重要な概念ですから、今後出題されないとは限りません。

 出題方法としては、「以下はそれぞれ、信義誠実の原則と、権利濫用禁止の原則について述べたものである。これらの中から、権利濫用禁止の原則について述べているものを選びなさい」などといったものが考えられます(2008年度新司法試験民事系第1問など)。


 信義即と権利濫用の違いを見分けるポイントはズバリ、「権利の行使の話か、両者の関係の話か」ということです。

 「権利濫用禁止の原則」とは、文字通り「権利」の「濫用」を禁止するのですから、権利を持っていることが前提になっています。権利を持っていない人は、それを濫用することはできませんね。権利の行使ではなく、相手から金を脅し取るような行為は、単なる不法行為です。

 例として、金を貸した人が、貸している金を返せと相手に暴行を加えるような場合、権利の濫用にあたります。貸した人は、金を返せと言う権利はありますが、暴力を用いてまで返させようとするのはいきすぎ、すなわち権利の濫用です。


 「信義誠実の原則」は、一定の社会的接触関係に入った人は、相手のことを考え、誠実に対応しなければいけないという原則であり、権利の行使とは直接関係ありません。むしろ、相手に対する態度や接し方の問題です。

 例として、契約を結ぼうとお互い交渉を重ねているのに、理由も告げずに一方的にこれを破棄するなどの行為は信義則に反する行為です。


 これらを見分ける際は、権利濫用にあたる行為か、という視点で問題を見るのがわかりやすいでしょう。信義則に関連する行為は極めて多岐に渡りますが、権利濫用禁止の原則に関する行為は、間違いなく権利を行使している状況のはずですから、わかりやすいはずです。


 なお、1条1項は、憲法12条や13条にいう「公共の福祉」が民法でも尊重されるべきであることを、2条は、憲法13条の「個人の尊厳」と24条の「両性の平等」が民法でも尊重されるべきであることを規定していますが、試験に出ることはまずないでしょう。
 民法とは何かという解説の最後は、そもそも民法は何を言いたいのか、ということをお話しておきます。


 端的に言うと、民法は、「その権利又は義務があるのか、無いのか」「権利があるとして、それが有効か、無効か」を言いたいのです。


 ちなみに、刑法は、「その行為が有罪か、無罪か」を言いたいわけです。


 民法は、とにかくある人が、人や物に対して権利を主張するためにあるんです。


 「自分には所有権がある!だからそれを返せ!」
 「私はあなたに金銭債権がある!だから金を支払え!」
 「私はあなたに不法行為責任を負わない、だから金は払わない!」
 「たしかに売買契約をしたが、騙されて契約したんだから無効だ!」


 などなど、とにかく権利義務の存在を争うのが民法なんです。だから、そもそも権利の主体になるのは誰かとか、権利の目的になる物とは何かとか、どんな契約が有効か無効かとか、そいういうことが書かれているんですね。

 このことをしっかり意識して、民法の勉強に臨みましょう。
 では、次に民法の全体像を見ておきましょう。


 民法は、大きく分けて5つのパート、すなわち、総則、物権、債権、親族、相続から成っています。


 総則とは、全ての項目に共通する事項を、あらかじめくくりだした部分です。xy+xz=x(y+z)の式のxみたいなものです。全ての前提になる部分でもあります。

 その中には、そもそも「権利」を持つのは誰なのか、権利の対象となる「物」とはなにか、「時効」とはなにか、などが書かれています。


 物権とは、物に対する権利のことです。

 その中には所有権や抵当権や質権などについて書かれています。聞いたことがある権利だと思います。


 そして、債権とは、人に対する権利のことです。

 その中には、連帯債務や保証債務などの複雑な権利関係や、弁済、相殺などの権利の消滅、売買契約、賃貸借契約、雇用契約など、契約に関することのほか、不法行為や不当利得といった、契約以外の権利義務の発生原因が書かれています。


 親族、相続は前述までの「財産法」に対し「家族法」と言われている分野です。

 親族の分野では、親戚や親子や養子などの関係について記載し、相続の分野では、相続や遺言などのことについて書かれています。

 民法の森は広いので、今自分がどの分野を勉強しているのか、常に意識しておくことが重要です。