今回は、「会社に雇用されるのではなく、個人事業主(フリーランス)という立場で働く」場合について考えます。
(かなり長文になってしまいましたが、中断出来る箇所がありませんでしたので、最後まで突っ走ってしまいます)
結論からお話しますと、僕は会社と交渉してこの形で進めたいと考えています。
前回書いたような”会社に雇用される安定”を捨て、あえてハイリスクな道を選ぼうとしているわけです。
「それでも絶対大丈夫」という自信のある方なら良いかもしれませんが、正直言って確固たる自信もない状況ですので、この決断にゾッとしている自分がいます。ただ、同時にこのゾクゾク感をちょっと楽しんでいる自分もいます。
非常に厳しい戦いになるのは重々承知しています。多少の不平不満があったとしても、組織に属して守られているほうがいろいろな意味で安心・安全・安定です。ですから、僕もこの決断には何十回・何百回と躊躇してきました。
でも、どうしても「このまま終わるわけにはいかない」という意地がそれを上回り、自分を強く突き動かしているのです。
さて、「個人事業主として独立」というと、通常は現在勤めている会社を退職し、独立開業という流れになると思いますが、僕が考えているのは「業務委託」からのスタートです。すなわち、現在勤めている会社の経理業務を独立した立場で引き受け、徐々に税理士業務のウェイトを上げていくという計画です。
ただ、一般企業より休日の少ない会社に勤めているため、現在の勤務日数・仕事量、そして、子育てとの両立を考えると、ここで税理士業務をプラスすることはとても無理な状況ですので、勤務日数&業務量の削減交渉をすることになります。
本来は経理担当者がやることではない業務も非常に多いですので、まずはそれらを削ぎ落とし、勤務日数を週3~4回に減らしたい考えです。
フリーランスとして独立した場合の税務面ですが、まずは税務署に「開業届」を提出し、毎年「事業所得」として確定申告をすることになります。
会計帳簿を作成し、電子申告を行うことで、「青色申告特別控除」を受けることも出来ますし、会社員時代と違い、業務に関する支出を経費として計上することが出来るようになります(もちろんプライベートのものを経費に入れてはいけません)。
ただ、2023年10月1日からスタートする消費税のインボイス制度によって、新規事業者の多くが開業して間もなく消費税の納税義務を負うことになりそうです。現行のルールでは、基本的に開業してしばらくの間は消費税を納める必要がありませんでしたので、これはかなりの痛手です(※)。
※現行のルールでは、ざっくり言ってしまえば、売上が1千万円以下であれば消費税を納める必要がありませんので、お客様から受け取ったお金に含まれている消費税相当額を、そのまま自分のお金にすることが出来ます。
でも、インボイス制度のスタート後に課税事業者(消費税を納める義務がある事業者)の方たちと取引を行う場合は、基本的にインボイス制度の事業者登録をせざるを得なくなります。なぜなら、自分が事業者登録を行わないと、お客様が自分に対して支払った対価に含まれる消費税を、お客様の確定申告時に「既に納付したもの」として引くことが出来なくなってしまうからです(いわゆる「仕入税額控除」が出来ない)。
税理士事務所は多くの課税事業者のお客様から顧問料をいただくことになりますので、事業者登録は不可避かと思われます。
さて、自分自身の頭を整理するためにも、この業務委託という策のメリットとデメリットをまとめてみたいと思います。
○メリット
①自由が得られる
組織に縛られず、自分で意思決定・行動出来る自由が手に入ります。僕は本性が“一匹狼”で独立志向の塊なので、気性的には間違いなく向きます。
②税理士資格を生かせる
仕事を辞めて無職になって勉強し、最終的に大学院にまで通って取った資格です。「せっかく取った資格を生かしたい」という思いは潜在的にずっとありましたし、税理士として働くことを望んでいる両親にその姿を見せてあげたいという気持ちもあります。
③今の職場に極力迷惑をかけず、独立という目的が果たせる
会社の経理責任者という立場上、今このような決断をすることは決して本意ではありません。責任を感じますし、周りの方に迷惑をかけてしまうことになって、「本当に申し訳ないな」と感じています。
ただ、会社の実情や将来性を鑑みると、「このまま同じ船に乗り続けてはいけない」という確信がありますし、経理の本業以外の業務が多すぎて、自身のスキルアップに繋がっていないことがストレスと焦りを生んでいます。
業務委託という形であれば、会社や周囲のスタッフへの迷惑をある程度抑えつつ、独立という目的を果たすことが出来ると思っています。
④スタート時点から最低限の収入が得られる
いきなり独立開業をしても、最初はお客さんがゼロですので、文字通り無収入からのスタートになってしまいます。独身ならともかく、妻と子どもがいる状況でさすがにそこまでの博打は打てません。今の職場での経理業務をベースとして残せるのであれば、資金的にも精神的にも非常に有難いです。
⑤税理士と経理責任者の立場を両方味わうことができる
税理士業界を一度離れた理由の一つに、「お客様側の立場を知りたかった」ということがありました。実際、一企業の経理担当者として働く中で数多くの経験を得ることが出来ました。
あえて両方の立場で居続けることで、”お客様の感覚を持った税理士”、”税理士業務を生かす経理担当者”(=会社にとっても利益になる)、という2つの姿を実現出来る可能性があります。
税理士業界ではあまり見られない形になるはずですので、ここを強みにしたいと思っています。
●デメリット
①収入が減る
独立して業務委託に切り替えることで、上記の大きなメリットを得ることが出来ますが、勤務日数・業務量を減らせば減らすほど当然収入は減りますし、雇用契約が解消されて退職扱いになりますので、社会保険、退職金制度、福利厚生制度がなくなるのが現実です。
②そもそも会社が認めてくれない可能性がある
副業を認めない今の会社において、自分のような希望を出す従業員はおそらく初めてです。
前例がないということで難色を示される可能性がありますし、会社の事務の中でも特に重要性・機密性の高い経理業務ですので、その部署に穴が生じることや、掛け持ちを許すことで会社の機密情報が洩れるのではないか、などというリスクも懸念すると思われます。
③両立が難しく、どちらも中途半端になる恐れがある
今の会社は休日が少なく、基本的に週5~6日間仕事をしています。春から一人スタッフが増えてかなり助かっていますが、それでも残業をする日が結構あります。
そういった状況ですので、今抱えている業務を相当リリースしないと、税理士業務にかける時間を十分取ることが出来ず、中途半端な結果に終わる恐れがあります。ただ、「仕事を誰に引き継ぐのか」、「新しい人を採るのか」、「何の仕事をどこまで渡すのか」といった難しい判断が求められます。
④事務所がない
一般的にはテナントを借りたり、自宅で仕事をする形になると思いますが、この計画の場合、税理士事務所として活動するのは週2~3回になりますので、事務所を借りると確実にテナント料の元が取れません。そこで、まずは自宅で仕事を始めるつもりでいたのですが、2LDKのアパートで妻と子どもと生活していると、どう頑張ってもスペースが足りません…笑
ただ、自宅から徒歩10分ほどのところにワークスペース(スポーツジムのような形態で自由にデスクを借りることが出来る)があることを知り、早速昨日見学に行ってみたところ、とても綺麗で料金も格安でしたので、まずはそこからスタートすることになるかもしれません。
今思い付いたのは、おおよそこんなところでしょうか。
頭の中で考えていることをこうして文字にしてみることで、かなりクリアに整理することが出来ました。
これがブログの良さですね。