先日、京都嵯峨野の厭離庵で

新緑の庭を屏風に三絃と胡弓の会をいたしました


歌・三絃 菊央雄司(きくおうゆうじ)

胡弓 菊津木昭(きくつきあき)


番組

一、千鳥の曲

一、浮舟


この日の菊央は声の調子が不十分で、当日まで決め兼ねていましたが

本番前リハーサルの段階で二曲目に予定していた「影法師」を断念。


 ほな、千鳥の曲は前弾きからここに飛んで、ここまで弾きましょか

 なんぼでも合しますよ


菊津木先生の気遣い、優しさは胡弓の音色からもうかがえました。


夏に88歳を迎えるという、小さな体の師匠が

本番になればなんとアグレッシブで


しかし繊細で

その音色が心の隙間に染み渡るかのようで、

ふすま越しに聴いていた私は感動のあまり目に涙を浮かべておりました。


二曲目は演奏ができませんでしたので、菊央と菊津木先生の対談になりました。


 (芸事は)何でも1番の先生の習うもんや聞かされておりましたんで

 当時大阪で1番やった、菊原琴治先生のお稽古を4月から待っておりましたんです

 でも 待てど暮らせど来られなかったんで

 とうとうしびれを切らして9月に琴治先生の家に電話しましたら

 喉頭がんをわずらっておられて、出稽古に向かう事ができへんと聞きました。

 「初子に出稽古に向かわせますんでええですか」

 と言われまして、

 私は琴治先生に習いたかったんですけど、

 無理やと言われましたので初子先生のお稽古をお願いしたんです。

 それが初子先生との出逢いでした。


菊津木先生は優しい声で、お客さん(15人ほど)を前にゆっくりお話を続けてくださいました。


 初子先生はとても気に入っている矢絣のお着物を、よほど気に入っていたんでしょうね

 そのうちモンペにされておりました

 残った物で巾着にもされておりましたね。

 それと、当時はお金があっても物が手に入らなかったので、

 (菊津木先生のご近所の農家の)尺八を吹く方と何度も合わせてあげていた御礼に

 お米をいただいて嬉しそうに持って帰っておられました。

 荷物沢山持って重かったと思うんですけどね。


しばらく初子先生との思い出をお話いただきました。

それから、胡弓の音の出し方や音色を皆さんに分かりやすく説明してくださいました。


     次回に続く      邦楽GENDAI わたなべ