実際の裁判は、手続きが複雑です。誰もが気軽に利用できるというもとではありません。
例えば、1,000万円に関する事件なら裁判してでも支払ってもらおうと考えても、 10万円であれば裁判を起こそうと思わないのが一般的です。
しかし、それでは、小さな事件においては、権利が保護されないということになってしまいます。
そこで誰でも、気軽に、しかも簡単に裁判所を利用できるようにしたのが、少額訴訟制度です。
金銭に関する30万円以下の少額案件を対象とした制度です。
この制度は、一般の裁判のように弁護士を代理人としなくても、自分自身で裁判ができるように工夫されています。
少額訴訟の特徴
少額訴訟の特徴について見てみたいと思います。
■訴訟できるのは、金銭の支払いのみ
少額訴訟の対象としては、お金の請求である必要があります。
よって、「貸家から出てほしい」あるいは「土地の境界線を決めてほしい」といった事件は、少額訴訟の対象にはなりません。 この金銭の請求ですが、「貸したお金を返してほしい」といった場合だけとは限りません。 「相手に殴られ、慰謝料として10万円を請求する」といった場合も金銭の支払いを請求しますので、対象となります。
■請求の額は、最大30万円まで
少額訴訟に関する法律の条文には、「訴訟の目的価額が30万円以下」となっています。 この訴訟の目的価額とは、対象は元本のみで、元本に付随する利息分はこの価額には、含まれません。 したがって、例えば、元本30万円に利息分としての3万円を上乗せした請求は認められます。
■申立ては簡易裁判所へ
少額訴訟の申立てができるのは、簡易裁判所です。 原則として訴える相手方(被告)の住所地を管轄する簡易裁判所で申し立てることになります。
■同じ簡易裁判所で、年に10回までしか利用できない
少額訴訟は主に一般の人を対象とした制度ですので、同一の簡易裁判所では、年に10回までの制限が設けられています。 これにより、30万円以下の請求金額が多い消費者金融会社などの企業が頻繁に利用するのを制限しています。
■被告の住所が不明の場合は、利用できない
一般の訴訟では、被告の住所が不明なとき、「公示送達」という手続きが取られ、 その内容は伝わったとみなして裁判手続きを進めることがあります。 しかし、少額訴訟の場合は、一方的に被告の不利とならないように、 被告の住所が不明な場合は利用できない制度になっています。
■1回の少額訴訟での裁判が無理と判断したときは、利用できない
少額訴訟は、1回で裁判を終えるのが原則です。よって、現場検証を必要とする事件の場合は、 裁判官が少額訴訟手続きによる裁判は無理と判断します。
■被告が通常手続きの裁判を希望するときは、利用できない
当事者の双方が了解した上で少額訴訟手続きによる裁判が始まりますので、 被告が通常手続きの裁判を希望するときは、利用できません。
■開かれた親しみやすい裁判を目指している
裁判というと一般の人には、非常に堅いイメージがありますが、 少額訴訟は誰もが気軽に利用してもらえるようにとの配慮で、円卓形式にて行われます。
少額訴訟のメリット
少額訴訟の長所は、なによりも利用者にとって、「早く」、「安く」、 「簡単」に訴訟を行うことができることです。
■「早く」審理が進む
少額訴訟は、裁判が原則1回の審理で終わって、審理終了後その日のうちに判決をもらえます。 審理に手間がかからないと予想される比較的簡単か事件を、早く処理することを目的としているのが少額訴訟です。
■最少の負担で「安く」裁判ができる
少額訴訟は、利用者に経済的な負担がなるべくかからないようになっています。 費用が必要な法律の専門家の助けをできるだけ必要としないように工夫されているのです。
■訴訟手続きが「簡単」
ひとことで言えば、訴訟における複雑な手続きを省いているのが少額訴訟です。 この制度には、手続きを簡素化させるために次のような工夫があります。
手続きを簡素化させるための工夫
1、反訴手続きの禁止
2、すぐに判決を出せるようにするため、判決書を作成しなくてもいい
3、控訴ができない
4、本人の出頭を命じることができる
5、証人や証拠は、その場ですぐに調べられるものに限定される
初めて少額訴訟手続きを利用する場合は、まず最寄の簡易裁判所に行って、 相談してみるのがいいと思います。
簡易裁判所の窓口で少額訴訟手続きを利用したいと話せば、裁判所の書記官が相談にのってくれるはずです。 また簡易裁判所には、少額訴訟の手続きをわかりやすく説明したリーフレットやビデオも用意されています。 これらを見せてもらうことで、少額訴訟の手続きの概要を理解することができます。
また、訴訟を起こすためには、自分が相手に請求したい内容などを書いた「訴状」という書面を作って、 裁判所に提出しなければなりません。
少額訴訟での請求は、賃金の返還請求や給料の支払い請求など、いくつかのパターンに分けることができます。
簡易裁判所には、こういたパターンにあわせたて定型の訴状用紙が備えられています。 定型の訴状用紙には、それぞれ書き方についての説明がついているので、その説明に従って必要事項を記入していけば、 訴状が完成します。
その他の相談窓口としては、地元の市役所や区役所で行っている法律相談や、 弁護士会が開いている法律相談センターなどがあります。
こうした所を利用して、法律の専門家である弁護士のアドバイスを受けるのも、一つの方法です。 市役所などで行っている法律相談は無料のところが多いですが、 弁護士などに相談すると1万円程度の相談料が必要となります。