水蒸気が空中で昇華し、結晶となって降る白いもの。
古来、花・月とともに代表的景物とされる。
缶コーヒー、道路に響くチェーンタイヤの音、白い吐息、コタツののミカン、赤い鼻、マッチ売りの少女。
雪は、日常を若干狂わせる代わりに、温もりの偉大さを知る素敵なひととき。
時間に縛られない少年時代の雪は、景色よりも体を使って噛みしめていたような気がします。
石を入れた雪合戦、シャドー雪ボクシング、木の下に人を呼んで木を蹴り雪を落とす、雪を食べる、雪に顔面を押し付け自分の型作りなど、トム・ソーヤな日々の記憶が、まだ左胸のポケットに。
時は過ぎ、時計を見る仕草は、ドラマの中のサラリーマンだけではなく、現実のものになりました。
雪を体を使って体感することはなくなりましたが、視覚的な部分、雪のしんしん音、冷たい匂いなどに、なんとなく立ち止まってしまいます。
先日、数年ぶりに路線バスに乗りました。平日だったのでお客さんは2人ぐらい。
雪は止んでいましたが、待っている間に冷えきった体を、バスの車内は温もりをゆっくりと与えてくれました。
窓から見える雪を被った山々、
心地よい振動、
なんともいえない柔らかさの椅子。
お金では買えない、一瞬の安らぎ。
でも、
『あるべき所に無く』、『あってはならない所に有る』この物体を見つけた途端に、
安らぎは無くなってしまいました。

