92歳のおばあさんは
小学5年で竹槍突いた
学校の先生が言った
親に竹槍作ってもらって持って来い
先を斜めに切っただけの竹
雨の日も猛暑の中でも竹槍突いた
色んな事を忘れたけれど
竹槍突いたは覚えてる
私の娘が5年生になる頃
私は何を持たせるだろう
それは鉛筆であって欲しい
それは絵の具であって欲しい
大好きな本やぬいぐるみ
縄跳びや自転車のハンドル
私のこの手を握って欲しい
練習中のピアノを上手に弾いて欲しい
まだした事のないゲーム機の
ボタンを夢中で押して欲しい
夏は家族で海に行き
何とか持てる投げ竿で
大きなキスを釣って欲しい
もしも竹を切るのなら
そうめん流しをするのがいい
冷たく流れるそうめんを
はしゃいでお箸で掬って欲しい
夕暮れまでには怪我なく帰り
ただいまと言ってドアを開け
今日の冒険の出来事を身振り手振りで教えて欲しい
いつか娘が巣立って行って
私もとっくに星になり
うんとうんと歳を取り
92歳になった頃
小学5年生の頃を
静かに思い出したとしたら
朧げな記憶の中でも
幸せな手であって欲しい
そして92歳の娘の皺皺の手を
誰かが優しく握って欲しい