ずいぶん時期がずれてしまったが、ヤオコーの年末チラシを振り返ってみた。

ヤオコーの年末チラシのポイントは、特集における①簡便手作りの追求、②ハレと普段のメリハリと、③日替わり、カテゴリー割引、ポイントアップ等による価格訴求、の3つである。

 ヤオコーの昨年12月のチラシ特売の取り組みは図表①の通りである。特集企画は、普段食の刺身、鍋商材を扱った「生鮮大市」(2日~4日)からスタートし、年末の際の拡販を見込み、生本まぐろ50%引きを打った「まぐろチャレンジ」(5日~7日)、クリスマスの惣菜需要を狙った「マイホーム・クリスマス」(23日~25日)、そして年末際にはハレ商材を徹底して訴求する「大歳の市」(29日~31日)を構えた。

クリスマス商戦の二つの山

これらのうち、まず注目したいのは、クリスマス関連の特集である。

ヤオコーは、クリスマス需要に対し、二つの山を構えた。一つは簡便手作りをメーンに打ち出した「ハンドメイド・クリスマス」(9日~15日)、もう一つはヤオコーの惣菜の強みを存分に発揮させた先の「マイホーム・クリスマス」である。

 「ハンドメイド・クリスマス」では、アンチョビのリーフサラダ、肉巻モッツァレラのビーフシチュー等、関連商品を訴求しながら、簡便調理提案をメーンに据えた特集を組んでいる。特売期間中は、ドレッシング、サーモン、チーズ、ワイン等のカテゴリー割引も投入し、ハンドメイドを促す仕掛けも行った。

 サラダは、ハレの食卓機会に、主婦が手作りの一品として調理することが多いメニューの一つ。「ハンドメイド・クリスマス」では、手間が掛からず、家族からも喜ばれ、主婦の手作りニーズも満たすサラダを提案した。

これに対し、クリスマス本番の「マイホーム・クリスマス」では、サラダ、アヒージョ、豚スペアリブ等の簡便調理の提案も行ったが、ピザ、寿司、チキン(焼成済み)等の即食アイテムをメーンに取り上げた。今年は、天皇誕生日もなく、イブが木曜日であることから、クリスマスの惣菜需要は大きかったと思われる。

ヤオコーが、強力な惣菜部門を抱えながらも、調理にこだわるMDを強化していることは、家庭での調理機会を重視する姿勢の表れと言える。

新型コロナ以降は、巣ごもり消費と言われ、家庭での調理機会が増えていると見られるが、長い目で見れば、家庭の調理離れは明らかだ。簡便性に配慮し、調理機会を維持・拡大することは、生鮮部門を抱えるスーパーマーケット・ビジネスを続けていく前提になると言えるだろう。

ハレと普段のMDのメリハリ

 12月の年末商戦において、ハレと普段のMDのメリハリの重要性は、かねてから言われてきた。ハレ需要が基調であっても、普段食のMDを織り交ぜることが、12月の売上げを確保する条件になる。

 ヤオコーの年末チラシでは、12月中旬の1618日に、「楽らく豚肉メニュー」の特集と「94円・77円均一」の企画を展開。「楽らく豚肉メニュー」の企画では、鍋つゆを使った簡便調理を提案し、均一セールとの連動で、メーン食材の国産豚モモ肉や野菜ミックス等を94/100gで訴求。「94円・77円均一」企画では、3日間限定で、食パンや納豆、豚肉等、普段食の高購買頻度品を揃えた。

 また、1922日のチラシで取り上げた「和風ごはん」特集では、「おうちでグルメを楽しもう」とし、ブランド豚の桜島優泉豚やカナダ産生アトランティックサーモンを使った煮豚や漬け丼を提案。クリスマスや年末のご馳走提案と異なり、食材にこだわった普段食という切り口でのグルメ訴求を行っている。

 さらに、冬至をテーマに取り上げ、カボチャ等を使った、調味酢で食べる焼き野菜のサラダの提案や、惣菜の煮物を訴求。伝統行事にも目配せをしながら、普段食の掘り起こしを行っている。

3つの方法で価格訴求 

 12月に限ったことではないが、ヤオコーでは「価格コンシャス」をキーワードに価格訴求を強める傾向が見受けられる。年末チラシでは、①日替わり特売、②カテゴリー割引、③ポイントアップの3つの価格戦略が採られている。共通点は、「分かりやすい安さ」づくりだ。

 第一の日替わり特売では、2日のキリン生茶299円、16日の熊本産他長ナス39円、23日の日清オイリオキャノーラ油ナチュメイト900158円、30日のデルモンテトマトケチャップ50099円等、圧倒的な安さで訴求。目玉となる単品を投入することで、集客のフックにする狙いと思われる。

 第二のカテゴリー割引では、個人的には、カテゴリー割引の取り組みが早かったのはサミットストアであったと記憶しているが、とくにストック需要が見込める賞味期限の長いカテゴリーで訴求効果が高いのではないか。

 図表②は12月のカテゴリー割引の一覧である。1回当たりの期間の長短はあるが、対象カテゴリーの多くが月1回の頻度で、複数回投入されているのはドーナツやたらこ・明太子等に止まっている。

 また、ハレ需要向けには、年末際の拡販に向けてハレ商材を仕掛けた5・6日、「ホームメイド・クリスマス」を掲げた1213日、散発的にハレ商材を仕掛けた19日以降等が注目される。

 これらに対し、米、コーヒー・ココア・紅茶・お茶、のり・ふりかけ・おかずびん詰、消耗雑貨等、賞味期限が長いカテゴリーでは、次回のカテゴリー割引までに消費する量を購入するまとめ買い効果が期待される。「安い時にまとめて買っておこう」という気分に導くのだ。

 また、ヤオコーが上手なのは、カテゴリー割引で、先に触れた「分かりやすい安さ」づくりを行っている点だ。これは2月下旬のカテゴリー割引の売場の例だが、あるカテゴリーでは、多くの商品について通常価格のプライスラインを絞り込み、そのカテゴリーのゴンドラ上部に各プライスラインの価格に対する割引金額を示したパネルを掲出。例えば、3割引であれば、「198円→139円」となる。割引の分かりにくさを、プライスラインに従った割引金額に置き換えることで、安さを分かりやすく訴求している。

 第3のポイントアップは、「分かりやすい安さ」づくりよりも、カードの定着と年末年始商材の売り込み、さらにPBの拡販に狙いが置かれている。

 図表③は、チラシに掲載されたポイントアップの対象商品について、PBのアイテム割合を示したものだ。12月中旬まではPBの訴求に力点が置かれ、12月全般から後半に向けてはハレ商材のポイントアップが顕著である。

 ヤオコーのPB販売は、20年度中間決算時点で、ヤオコー仕様商品を含め、アイテム数で1197品、売上構成比が10.2%。前期末比では横ばいの状況。今後も、PB拡販に向けた取り組みは強化されるものと見られる。