　前回記事「仏典を読む（その24）観無量寿経３」の続きです。

　前回は、お釈迦様が「自分の死後に残された人々が極楽浄土を見ることができるよう、極楽浄土をイメージする方法を教える」といって、夕日、水、大地を思い描く手順を説きましたが、今回もこれに続きます。今回の着目点は「スケールのデカさ」です。

【観無量寿経】４

⑨　釈尊が阿難とイダイケ王妃に仰せになった。

　地想観が成就したなら、次に極楽浄土の宝の樹を思い描くがよい。宝の樹を思い描くには、まず一つ一つの樹を思い描き、七重の並木になった様子を思い描くがよい。これらの樹は、64000キロメートルの高さで、七つの宝でできた花や葉をつけて様々な光を放っている。樹々の上には美しい真珠でできた網が一面を覆っており、網と網の間には500億の美しい花で飾られた天の童子が住む宮殿がある。樹々の花は様々な実をつけており、その実が放つ大いなる光明は天蓋となり、仏のはたらきの全てが映し出される。このような極楽浄土の樹々の姿を一つ一つ順に想うがよい。このように想い描くことを樹想といい、第四の観と名付ける。

　次に極楽浄土の池の水を想い描くがよい。極楽浄土には八つの池がある。それぞれの池の水は、優れた宝玉から湧き出ており、14の支流に流れ出す。各水路は、黄金でできており、底には汚れの無い様々な色の砂が敷かれ、水面には直径96キロメートルの蓮の花が60億個浮かんでいる。支流を流れる水の音は素晴らしく、苦・空・無常・無我や六波羅蜜などの教えを説き述べ、あるいは、仏たちの姿を称賛する声となる。宝玉から発せられる光は、宝の色を持つ鳥となって優しい鳴き声を発している。このように想い描くことを八功徳水相といい、第五の観と名付ける。

　様々な宝で飾られた極楽浄土の各地には、500億の素晴らしい楼閣がある。その中には無数の天人がいて素晴らしい音楽を奏でている。空には楽器が浮かんでおり、奏者がいなくても自ずから鳴り、その響きは仏・法・僧を念じることを説くのである。このように想い描き終えたら、極楽浄土の宝の樹と大地と池を見たということができる。これを総観想といい、第六の観と名付ける。

【メモ】

　お釈迦様による「極楽浄土の想い描き方講座」が続きます。まず、極楽浄土の樹木を想い描けということですが、毎度お馴染みの「宝でできている」というのはお約束として、その高さが8000由旬であると説明されており、仏教の論書であるアビダルマの「1由旬＝8kｍ」という基準を当てはめれば、極楽浄土の樹々の高さは64000kmであるということになります。現代の我が国では、広さを伝える際に「東京ドーム何個分」などと、イメージの難しい表現がよく使われますが、高さ64000kmの樹木を他人にイメージさせるにはどうしたらいいのでしょうか。そして、極楽浄土の池とそこから流れ出る川については、直径が96kmある蓮の花が60億個も浮かんでいるとのことですが、果たして「皇居から箱根くらいまでの大きさの蓮の花が60億個ある」と思い描くことにどれほどの意義があるのか…。

　次回以降の内容も、このスケールのデカさが継承されますが、この異常なデカさについては仏教の教義上、どのような意味があるのか気になります。仏教の経典に登場する数字はいつでも異常にデカい。これはなぜなのか。今後の要約作業と並行して調べてみようと思います。

　次回に続きます。

『仏典を読む（その25）観無量寿経５』　前回記事「仏典を読む（その24）観無量寿経４」の続きです。【観無量寿経】５⑩　釈尊はさらに阿難とイダイケ王妃に仰せになった。お前たちは私の言うことをよく…

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