　前回記事「仏典を読む（その11）無量寿経(上巻)７」の続きです。

　前回は、極楽浄土における音楽や風呂や食べ物に関する説明でした。上巻の要約は今回で終わりとなります。疲れた。

【無量寿経(上巻)】６

⑱　極楽浄土には真に清らかで安らかであり、そこでは誰もが悟りの境地に至る。聖者や菩薩、天人、人間は、誰もが優れた智慧と神通力を備えており、外見は同じで違いがない。ただ慣習に則り、「天人」や「人間」と呼称されるのであって、全ての者たちは外見を超えた優れた悟りの身を得ている。

⑲　貧しい物乞いを王のそばに並べて比べると、物乞いの醜いことは言うまでもない。ただ、王は人間の中では外見が優れているとはいえ、転輪聖王に比べると卑しくて見劣りがする。それは、王と物乞いを比べるのと同じようなものである。しかし転輪聖王も帝釈天と比べると見劣りし、さらに帝釈天は他化自在天より見劣りし、そしてそのような他化自在天でも極楽浄土の菩薩や聖者より見劣りするのである。

⑳　極楽浄土の人々が用いる衣服・食べ物・音楽・建物など全ては、人々に適したサイズとなり、思いのままの姿ですぐ現れる。大地には宝でできた布が敷かれており人々はその上を歩み、また、数限りない宝の網が覆い巡らされており、優れた徳を備えた極楽浄土の風が吹くと、網が揺れて優れた教えの声が聞こえ、香りが漂う。これらを感じる者は、精神統一の境地に至った修行僧のように心地がよい。

㉑　また、極楽浄土に吹く風は花を散らし、余すところなく大地を覆う。花々は色ごとにまとまって混ざることがなく、柔らかく光沢があり、素晴らしい香りを放っている。足で花を踏むと10センチほどくぼみ、足を上げるとすぐ戻る。花が必要でなくなれば、地面が開いて、花はその中に消えて綺麗になる。また、様々な宝でできた蓮の花が咲いて光り輝いており、それぞれの花から何千億という光が放たれ、そこから何千億という仏が現れる。これらの仏がそれぞれ光を放ち、広く全ての者たちのために教えを聞き、悟りの道を歩ませてくれる。

無量寿経上巻　おわり

　ようやく上巻が終わりました。まだ下巻もあるぞ…。どうしよう…。

　⑱では、極楽浄土の住民について、「菩薩」や「天人」や「人間」という一応の区別はされているけれども、実際には、外見や能力に違いはないと説明しています。一方、⑲では、物乞い＜国王＜転輪聖王＜帝釈天＜他化自在天＜極楽浄土の人々…と、外見に圧倒的な優劣があるとしています。比較されるということは上下・優劣があり、仏教が戒める「慢心・劣等感」が発生するということですが、極楽浄土の住民は違いがないので「慢心や劣等感」が発生しないということを言いたいのでしょう。

　ちなみに、⑲の原文では、釈迦と弟子の阿難の問答があるのですが、ここで、阿難は「国王として生まれたのは前世の行いが良かったから。物乞いに生まれたのは前世に善行を積まず、欲深かったから」などと述べています。仏教論争のテーマになりがちな「業報輪廻思想」と言われる内容です。このような差別を引き起こしかねない内容が仏典に明確に書かれているんですが、現代仏教宗派は、この部分について黙して語らない傾向にあります。

　⑳では、極楽浄土では「何でも思うがまま」「風や香りがそのまま悟りの教えとなる」というお馴染みの内容です。極楽浄土に往生してしまうと、もう悟りたくなくても悟ってしまう環境のようです。油断すると悟ってしまうという…。恐ろしい（笑）。

　最後の㉑では、極楽浄土における花の説明です。面白いのは、地面を覆った花が不要になったら、穴が開いてそこに吸い込まれていくということ。花をゴミ扱いしているように見える(笑)。そして、そういう仕掛けを阿弥陀仏が作ったことを想像すると面白い。それよりも、花の中から仏が現れるというのはいいですね。阿弥陀如来を本尊とするお寺は花がたくさんあれば素敵です。

　次回、これまで行った無量寿経(上巻)の要約を一つにまとめ、体裁を整えたものを掲載します。通読すれば無量寿経の内容を理解できるはずです。

　合計6000文字程度です。かなり削ったと思いますが原稿用紙15枚分…。

　複写自由です。皆様の学習にご利用ください。

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仏典を読む（その12）無量寿経(上巻)８