冬休みに入りました。今日の夜は友人3人と焼肉を食べに行く予定です。

 

 「焼肉に行く」と宣言することは、仏教をテーマとするこのブログでは、あまりふさわしくないのでは?…などと思われるかもしれませんが、仏教と肉食について論ずる良い機会となるので、あえて取り上げさせてもらいました。

 

 まず、仏教では飲酒はダメとされています。これは、釈迦が明言していて初期の仏典でも完全明記されています。では、肉食は?というと、結論から言えば、上座部仏教では「条件付きでOK」、大乗仏教では「ほぼNG」となっています。

 

 大パリニッバーナ経(涅槃経)という原始経典では、釈迦が「きのこ料理」を食べて食中毒になり、その後、症状が悪化して亡くなられた旨が伝えられますが、実のところ、「きのこ料理」とされている「スーカラ・マッダヴァ」については、意味が未だ確定されていません。上座部仏教の学僧であるブッダコーサは、「上等の野豚の生肉」と説明しており、それが正しければ、釈迦は豚肉を食べて亡くなったと解されるわけです。実際、上座部仏教では肉食が禁じられていないのです。

 

 では、仏教徒は肉を自由に食べてよいかといえば、そうではありません。仏教の戒律では「生き物を殺してはいけない」という「不殺生戒」があり、肉食については、これに抵触するのではないか?ということが問題になります。そのため、整合性を持たせるため、肉食に関するルールが別途設けられています。

 

 仏教僧のルール(律)が記される「四分律」では、肉食に関するルールが以下のとおり記されています。

1 提供される肉となった動物について、殺されるところを見ていない

2 提供された肉となった動物について、自分に供するために殺したと聞いていない

3 提供された肉となった動物について、自分に供するために殺したと知らない 

 これらを「三種の浄肉」(さんしゅのじょうにく)と言います。これらの条件に該当すれば肉食は許されます。仏教僧は、食事を「托鉢」(たくはつ)といって信者に提供してもらうことが基本となりますが、自分に提供される肉が、自らの不殺生戒に抵触しないようになっているわけです。

 

 さて、この内容であれば、スーパーで肉を買うことや、自分の意思で焼肉を食べにいくことは許されるのか?といった疑問が生じます。また、偉いお坊さんが我が家にゲストで来てくれる…となると、ホスト側は肉を含む高級料理でもてなそうと思うのは自然です。そして、それが常態化すると、僧侶もそれを期待するようになるでしょう。

 

 そのため、その後の大乗仏教、特に中国や日本においては、厳格な肉食禁止となっていきます。特に、大乗仏教では「一切衆生悉有仏性」と言って「いのち」に焦点を合わせますので、「大乗涅槃経」や「梵網経」等の大乗経典には肉食がNGと明確に記されています。結果、肉食の可否については、経典や戒律の記載内容がバッティングしている状況になってしまっているのです。

 

 現状において、日本の僧侶の多くは肉を食べます。他方、大乗経典に厳格に従って一切食べない方もいます。ただ、どちらかというと、条件付きで肉食OKである「四分律」を重視しているように見えます。本山での修行中などは精進潔斎といって肉を食べないようにしていたり、状況に応じた区別をした上で「肉食」と向き合っている…というところでしょうか。