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続きものですので・・・あしからず
























郷ひろみのサイン



そこには威風堂々と郷ひろみのサインが鎮座しておられた。ご丁寧にもサインの横には物凄い決め決めの表情で写る郷ひろみのプロマイドも添えられており、どうやらそれが箱の隙間から見えていたようだった。



確かに「大切な物」だろう。郷ひろみのファンだったと推察される前の住人の方にとっては大切なものだったのだろう。
でもな、さすがにこの仕打ちはあんまりだ。


エロという原動力で恐怖心に打ち勝ってここまできた僕だったが、そのエロが郷ひろみのサインに置き換わった今、この真っ暗な廃屋を1人突き進んで家に帰らなくてはならない自分の状況に、死ぬほどの恐怖を感じ泣きだしたのだった。



この体験がトラウマとなり、まあ、日常生活を営んでいてそうそう郷ひろみのサインに出くわすことなどないのだけど、未だに彼のサインを見るとあの時の落胆と恐怖が思い起こされ、ついでに命からがら家に帰ったら、抜け出したことがバレていて親父に殴られたことを思い出す。


それから郷ひろみのサインが怖い、郷ひろみサイン恐怖症なのだ。

「大切な物」


そう書かれた段ボールはやはりそこにあった。
よかった、不良たちに荒らされているかもと心配したが大丈夫なようだ。
まるでビックリマンチョコを開けるときのようなワクワク感というかワキワキ感を感じながら蓋に手をかける。


ついにエロ写真を入手する時が来た。エロ写真が手に入ったらどこに隠すかが問題だ。生半可な場所じゃすぐに親父に見つかってしまう、よし、エロ写真が手に入ったら洗濯機の裏側に隠そう、あそこならそうそう見つかるまい、でも段ボールいっぱいのエロ写真を隠せるかなあ、全部は無理だからおっぱいが写ってるやつだけ持ちかえるのもありかも!などと様々な想いが交錯する中、ついに段ボールの箱を開けた。

「お兄さん、僕と一緒に遊んでよ、ウフフフ」


身を隠し、お兄さんたちに聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で何度も話し掛ける。
さあ、驚いたのはお兄さんたちですよ。
深夜に廃屋でシンナー吸ってたら子供の声が聞こえてくるんですから。


最初は、1人の人が僕の声に気が付いたみたいで、仲間に向かってシッ!と促します。そこで全員が気付いたみたいで、凍り付いてました。
で、1人のお兄さんが
「うわぁーーー」
と悲鳴を上げて逃げ出すと、ソレを合図に全員が物凄い勢いで走って逃げて行きました。なんか、モヒカンみたいな頭したお兄さんはラリッていたのか逃げるときに8回くらい転んでた。


よし、これでシンナー不良たちも追い払った、深夜の廃屋の恐怖にも打ち勝った。まるで一仕事終えた充実感に包まれながら居間に入る。
散乱しているゴミに注意しながら歩みを進め、問題の押し入れに到達する。