ファンダメンタル投資の基本
3m 3sの間、思考
以下では、ファンダメンタル投資を行う上で「まず押さえるべきポイント」や「具体的な分析方法」「投資判断に必要な知識」など、覚えることの全体像をなるべく網羅的に解説していきます。覚えやすくなるよう、段階を追って整理していきます。長いですが、じっくり読み進め、必要に応じて自分用のノートを作ったりすると理解が深まりやすいでしょう。
1. ファンダメンタル投資とは?
1-1. 定義
-
ファンダメンタル投資:企業の業績や財務状況、ビジネスモデル、競争力など、「企業の価値を左右する要素(ファンダメンタルズ)」を分析し、適正価格(本来の価値)と市場価格を比較して投資判断を行う手法。
-
短期の値動きよりも「企業価値」や「将来の成長性」に焦点を当てる点が特徴。
1-2. 基本的な流れ
-
マクロ環境の分析:景気、金利、為替など。
-
業界・セクター分析:どの業種が今後成長しそうか。
-
企業分析(定量・定性両面):企業がどの程度安定して稼ぎ、成長するか。
-
適正価値の算出:割安か割高かを判断(バリュエーション)。
-
投資判断・ポートフォリオ構築:リスク管理も含めて投資銘柄を決定。
2. ファンダメンタル投資で見るべき指標
ファンダメンタル投資では「会社四季報」や「EDINET(有価証券報告書)」「各種IR資料」などを参照しながら、以下の指標・項目を総合的に判断します。ここでは主要な定量指標だけでなく、定性面の観点も紹介します。
2-1. 財務諸表の概要
企業の財務状況を見るために、下記3つの財務諸表を必ず読み解きます。
-
損益計算書(PL: Profit & Loss Statement)
-
企業の一定期間(通常1年間)の売上や費用、最終的な利益を示す。
-
重要項目:売上高、営業利益、経常利益、純利益 など
-
-
貸借対照表(BS: Balance Sheet)
-
企業の特定時点(期末など)における資産・負債・純資産の状況を示す。
-
重要項目:現金及び預金、売掛金、棚卸資産、有形固定資産、無形固定資産、長期負債、自己資本比率 など
-
-
キャッシュフロー計算書(CF: Cash Flow Statement)
-
企業の一定期間のキャッシュの出入りを営業CF・投資CF・財務CFの3つに分けて示す。
-
重要項目:営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、フリーキャッシュフロー など
-
2-2. 主要な定量指標
(1) PER (株価収益率: Price Earnings Ratio)
-
計算式:
-
指標の意味:株価が1株当たり利益の何倍まで買われているか。
-
一般的な見方:
-
数値が高いほど「割高」とされる傾向。
-
成長企業はPERが高めになることも多く、一概に高いから悪いわけではない。
-
(2) PBR (株価純資産倍率: Price Book-value Ratio)
-
計算式:
-
指標の意味:株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているか。
-
一般的な見方:
-
PBRが1倍未満であれば、理論上は解散価値(=純資産)より株価が安いとされる。
-
(3) ROE (自己資本利益率: Return On Equity)
-
計算式:
-
指標の意味:株主が拠出した資本(自己資本)を使って、どれだけ効率よく利益を上げているか。
-
一般的な見方:数値が高いほど経営効率が良いと言われる。
(4) ROA (総資産利益率: Return On Assets)
-
計算式:
-
指標の意味:企業が保有するすべての資産(総資産)を利用して、どれだけ効率的に利益をあげているか。
(5) EPS (1株当たり利益: Earnings Per Share)
-
計算式:
-
指標の意味:一株あたりの純利益。成長を見るうえで重要。
(6) BPS (1株当たり純資産: Book-value Per Share)
-
計算式:
-
指標の意味:一株あたりの純資産。PBRの算出に使われる。
(7) 配当利回り
-
計算式:
-
指標の意味:株価に対して年間でどれくらい配当がもらえるか。
2-3. 定性分析(ソフト面の分析)
-
ビジネスモデル:企業は何を、どのようにして稼いでいるのか?
-
経営陣の質:社長や役員の経歴、ビジョン、企業文化。
-
業界での競争力(競合優位性):特許、ブランド力、参入障壁、シェア。
-
将来の成長余地:新製品・新サービスの可能性、海外展開の状況、社会的トレンドとの相性。
-
リスク要因:技術革新による陳腐化、規制リスク、依存顧客・依存国(経済制裁等)の存在など。
3. マクロ分析と業界分析
3-1. マクロ分析のポイント
-
景気動向:景気の循環(景気拡大、後退、底、回復)により、業績が大きく動く企業もある。
-
金融政策・金利:金利が上がると企業の資金調達コストが増え、利益が圧迫されやすい。投資家マネーの流れも変わる。
-
為替レート:輸出企業の場合は円安が追い風になることが多い。逆も然り。
-
政治・政策リスク:規制強化や補助金政策などが企業にプラス・マイナスに働く。
3-2. 業界分析のポイント
-
業界全体の市場規模や成長率
-
市場シェア構造(寡占状態か、競争が激しいのか)
-
参入障壁の高さ
-
イノベーションの速度(陳腐化リスク)
-
サイクル(景気連動型かディフェンシブか)
4. 企業分析の進め方
-
IR資料や有価証券報告書を読む
-
特に「事業内容」「リスク情報」「経営方針と課題」「連結財務諸表」をチェックする。
-
過去5年~10年くらいの推移を見ると、安定感や成長度合いがわかる。
-
-
決算短信の確認
-
3ヶ月ごとに発表される最新情報。進捗率や昨年比の成長なども把握。
-
-
競合比較
-
同業他社との売上・利益・シェアなどを比較すると、その企業の強み・弱みがはっきりする。
-
-
社長インタビューやニュースリリースのチェック
-
新規事業や戦略がどう動いているか、定性面を補完する。
-
-
株価指標の比較
-
PERやPBRなどの指標を同業他社や市場平均(TOPIXや日経平均のPERなど)と比べる。
-
5. バリュエーション(企業価値評価)の基本
企業が「どれくらいの価値があるか」を数値化して、現在の株価が割安か割高かを判断するための作業です。いくつかの代表的な方法をざっくり紹介します。
5-1. DCF法 (Discounted Cash Flow法)
-
理論:将来生み出すキャッシュフローを割り引いて合計した現在価値が企業の本来の価値と考える。
-
手順:
-
事業計画などから「将来のフリーキャッシュフロー(FCF)」を見積もる。
-
割引率(WACCなど)を決める。
-
将来のFCFを現在価値に割り引いて合計し、最終的な企業価値を求める。
-
5-2. 比較企業法
-
理論:類似企業のPERやPBR、EV/EBITDAなどを参考に、対象企業の株価を評価する。
-
応用:市場全体や業界平均の倍率と比較して、割高・割安を判断。
5-3. 配当割引モデル (DDM: Dividend Discount Model)
-
理論:将来の配当金を割り引いた合計が理論株価になるとみなす。
-
適用範囲:配当重視で安定的に配当を出している企業向け。
6. 投資戦略とリスク管理
6-1. 投資スタイルの例
-
バリュー投資:割安株に投資し、適正価格に戻るのを待つ。
-
グロース投資:成長企業に投資し、業績拡大に伴う株価上昇を狙う。
-
配当重視投資:安定配当や高配当利回りを求めて投資する。
6-2. リスク管理
-
分散投資:複数の銘柄、複数のセクターに分散してリスクを低減。
-
ロスカット(損切り)ルール:予想が外れた場合、あらかじめ損失許容ラインを決めておく。
-
資産配分(アセットアロケーション):株式、債券、現金、不動産投資信託(REIT)などを状況に応じて組み合わせる。
7. 実際の投資プロセスをまとめる
-
経済指標や景気動向を把握
-
世界的な景気減速局面ならば守りを固める、など大きな方向性を考える。
-
-
業界スクリーニング
-
今後伸びる業界、逆風の業界などを把握。上場企業リストやニュースから候補を探す。
-
-
銘柄スクリーニング
-
PERやPBR、ROEなどでスクリーニングツールを使い、条件に合う企業を抽出する。
-
-
有価証券報告書・IR資料の精読
-
候補となった企業の業績やビジネスモデルを詳しく分析。
-
-
比較企業分析&バリュエーション
-
同業種で比較して割安・割高を判断し、さらにDCFなどで深掘りする。
-
-
ポートフォリオ構築
-
複数銘柄を組み合わせ、リスク分散を図る。
-
-
定期的なモニタリング
-
決算ごとに数字や見通しを確認。必要があれば組み替えを行う。
-
8. 覚えやすくするためのコツ
-
用語をまず分解・整理する
-
「PERって何だっけ?」と思ったら、すぐに計算式と意味を確認。
-
短いメモや単語カードにまとめると便利。
-
-
財務諸表を毎回同じ順序で見る
-
「まず売上→営業利益→経常利益→純利益」「次にBS」「最後にCF」など自分なりの読む順番を決めるとスムーズ。
-
-
実際に気になる銘柄で試してみる
-
机上の学習だけでなく、実在する企業の決算資料(有報)を見ながら「指標を自分で計算」してみると理解が深まる。
-
-
スクリーニングツールを使って遊んでみる
-
証券会社のHPやヤフーファイナンスなどの機能を使い、実際に条件を指定して抽出。「この条件だとどんな銘柄が出てくるんだろう?」という探究心でやると覚えやすい。
-
-
チャートと業績を対比させて眺める
-
過去の業績推移(売上・利益)と株価チャートを並べると、ファンダメンタルズと株価の動きがリンクするタイミングが見えてくる。
-
9. さらに深めたい人向けのリソース
-
書籍
-
『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール)
-
『証券分析』(ベンジャミン・グレアム、デビッド・ドッド)
-
『ウォーレン・バフェット 巨大複利の軌跡』(たくさんのバフェット本があるが、基本はバフェットから学ぶのが王道)
-
-
Webサイト・ツール
-
EDINET (https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/):有価証券報告書を無料で閲覧可能。
-
各企業のIRページ:投資家向け資料や決算説明資料などが掲載。
-
Yahoo!ファイナンス、楽天証券、SBI証券など:スクリーニング機能や指標比較、チャート分析などが可能。
-
-
プログラミングでの分析
-
Pythonのpandasやnumpy、matplotlibを使い、財務データや株価データをスクレイピング→集計→可視化する方法もある。
-
たとえば以下のようなコードで株価のCSVを読み込み、簡単に可視化できる。
-
-
python
コピーする
import pandas as pd
import matplotlib.pyplot as plt
# CSVファイルの読み込み(例:日足データを”stock_price.csv”とする)
df = pd.read_csv("stock_price.csv", parse_dates=["Date"], index_col="Date")
# 株価チャートの描画
plt.figure(figsize=(12,6))
plt.plot(df.index, df["Close"], label="Close Price")
plt.title("Stock Price")
plt.xlabel("Date")
plt.ylabel("Price")
plt.legend()
plt.show()
※「一切コードの省略をしない」というリクエストを受けて、上記のようにフルで記載しました。
まとめ
ファンダメンタル投資は「企業の本来の価値」に注目し、そこから導き出した割安・割高をもとに投資判断をする手法です。覚えることは多いですが、以下のようにステップを踏めば習得しやすくなります。
-
財務諸表の基本を押さえる (PL, BS, CF)
-
主要指標(PER, PBR, ROEなど)の意味と計算式を理解
-
定性分析(ビジネスモデル, 経営陣, 競争力)を意識
-
バリュエーション手法(DCF, 比較企業法, 配当割引モデル)を使い分ける
-
マクロ・業界分析を踏まえて投資対象を絞り込む
-
リスク管理を徹底する(分散投資, 損切りライン, アセットアロケーション)
最初は難しく感じるかもしれませんが、実際に企業を一つずつ分析しながら覚えるのが近道です。企業の数字を自分の手で計算してみる、ニュースやIR資料をこまめにチェックしてみるなど、実践を積むことで理解がどんどん深まります。ぜひ焦らずじっくり取り組んでみてください。
飽き性なやつは連続起業家になれ。一つのことを続けたら飽きるんだったら、どんどん新しい会社を起業しまくって売却しまくればいい。そういう人生だってアリなんだよ。日本人でこれができる人って少ないから、むしろ希少価値高いんだよ。
人は追い込まれないと本気を出さない生き物や。だから成長のためには苦しい時期、追い込まれる時期は必ず必要なんやで。このままだとガチでやばいって状況に追い込まれて、初めて本気を出して成長するんだよ。きついことがあったら成長するチャンスやで。