貸してから、ゆまは何だか落ち着かず、隣の班にいるりさちゃんの席をチラチラと伺いながら、消しゴムがちゃんと大事に扱われているか確認していた。


今のところ、大丈夫そうだ。

多分、りさちゃんのことだから大丈夫だろう、ほっと胸を撫で下ろし大丈夫だと自分に言い聞かせながら4時間目が終わるまで気にしないようにした。


給食を食べたあと、さとみちゃんたちと一緒にジャングルジムへと駆け出した。

その頃にはすっかり、クマの消しゴムのことを忘れて、みんなとの鬼ごっこを楽しんだ。


56時間目の図工には一心不乱に版画を彫り、ゆまは自分の世界に浸った。自分で描いた北村くんの似顔絵を、細太の彫刻刀を使い分けて丁寧に彫っていった。


岡田先生がじっとゆまの様子を眺め、「うん、神山さんグッド」と声をかけてくれたのも聞こえなかった。


北村くんが着ていたTシャツの胸元を彫るときに、小さなクマのロゴと目が合い、りさちゃんに貸したクマの消しゴムのことを思い出した。


そういえば、もう鉛筆も消しゴムも使わないから返してもらおう。


ゆまはりさちゃんに声をかけに行った。

「りさちゃん、今朝貸した鉛筆と消しゴムなんだけど……

りさちゃんは思い出したように、「そう!ごめんね、ありがとう!」と鉛筆2本を返してくれた。でも肝心な消しゴムが見当たらない。






つづく