$風来坊の酒日記

先日の熟成のお話の続きですが、

熟成の要素は、温度、時間、酸化の三つで、

その関わり方で、味わいが全く変わってきます。

以前、伊勢元酒店さんの日本酒の会に参加したときのことです。

そのときに、伊勢元さんは、「陸羽132号」というお酒を出していました。

「陸羽132号」とは、秋田の刈穂という蔵元が出している純米酒。

酒米の名前から取った名前です。

以前にも、この「陸羽132号」を飲んだことはあったのですが、

とても硬いイメージ…硬いとは、「渋み」や「苦味」を強く感じるようなことです。

とても、美味しいお酒とは思えなかったのですが、

この会に出てきた「陸羽132号」は、とてもまろやかで、旨味を感じる味わいだったのです。


さて、後日。

この伊勢元酒店からお酒を仕入れている鶴君のお店に飲みに行きました。

すると、「陸羽132号」がある。

早速注文をしてみると…旨いことは旨いのですが、なんとなく味わいが違う…。

思い悩んでいると、そこに丁度、伊勢元さんが配達に!

理由を聞いてみると…。


もともと、伊勢元さんが「陸羽132号」を手に入れたのは、

蔵元さんを訪ねたところ、ちょうど2ケース(12本)余っていたので、

購入したんだそうです。

そこで、伊勢元さんは、その1本1本で、保存方法を変えたのです。

あるものは、冷蔵保存で…あるものは、常温保存で、

あるものは、未開封で、あるものは、開封して、

また、開封したものも、あるものは、瓶から少し酒を抜いて、空気の触れる量を多くしたり…。

だから、一本一本が、全く違った熟成をして、

全く違った味わいに…。

そして、同じものは2度と出来ないだろう…と説明されました。


同じ日に購入した日本酒が、保存の仕方で、全く違う味わいになるということを、

見せ付けられた出来事でした。


お酒の熟成。

それは、本当に、いろいろな要素が絡み合う、素敵な事象なのです。

2月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:1964ページ
ナイス数:7ナイス

風花風花
男女って、結婚すれば一区切り・・・みたいな感覚があるけど、実はそんなことはないんだな。そんな「夫婦」って言葉だけの関係は、とってもうつろいやすくて、夫も妻も、一人の人間として明日はどんな風に自分が変わるか分からなくて、その延長で、夫婦の関係もどうなるか分からなくて…。いま、自分が絶対だと思っている生活なんて、まさに「風花」のように、ちょっとした風に吹き飛ばされ、手に触れればすぐに消えてしまうような、そんな儚いものというのが正体なのかもしれない。
読了日:02月28日 著者:川上 弘美
これでよろしくて?これでよろしくて?
今までの川上弘美さんの本の中で、一番ぴんと来なかったなぁ。菜月以外の同好会の女性のイメージが、俺にはなんとなく際立って伝わってこなくて、同好会の楽しいシーンの雰囲気が中途半端に終わってしまった感じになってしまいました。
読了日:02月21日 著者:川上 弘美
夜の公園夜の公園
読了日:02月09日 著者:川上 弘美
夜の公園夜の公園
今まで読んだ川上弘美さんの作品の中では、一番ライトな感じで読みやすい。しかしながら、彼女の描く女性たちに一貫しているのは、「なぜ私はここにいるんだろう」という思いにとらわれる女性達を描いていて、とてもはかなく、しかしながら同時に、しぶとく感じられる。そして、男たちはそんな彼女達を見守り続けるしかない。「センセイの鞄」とは全く逆と言っていい男女の話ですけど、その両方を描ける川上さんの女性像は、僕は大好きです。
読了日:02月09日 著者:川上 弘美
決壊 下巻決壊 下巻
決壊というタイトルが、この物語の全てを言い表している。それは、集中豪雨によりダムの水がこらえきれず、溢れ出すように、社会と人の歪も、このままではいつしか溢れ出す。しかも、それは、集中豪雨のように分かりやすい形ではなく、静かに、しかし確実に積みかさなさっている…。2008年に書かれた小説だけど、4年が経とうとしているしてる今も、その歪の積み重なりは、変わらずに…否、加速度的に進んでいるような気がする。
読了日:02月05日 著者:平野 啓一郎
決壊〈上〉 (新潮文庫)決壊〈上〉 (新潮文庫)
読了日:02月05日 著者:平野 啓一郎

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター
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この前は、「老ね」と「熟成」の違いなんてことを書きました。

で、みなさん。「熟成」ときくと、「どのくらいの時間をかければ…」と思うかもしれません。

よくウィスキーとかは、「10年熟成もの」とか言いますものね。

しかし、日本酒の熟成の場合は、時間というより、温度…

厳密に言うと、積算温度…が重要になります。

例えば、積算温度1000時間の熟成を進めようとすれば、

20度で保存すれば50日…、逆に、5度で保存すれば200日の熟成が進むという考え方です。

そして、酒質の変化は、遅く進むほうが良く、

早く進むと劣化(=老ね)につながりかねないということです。

つまり、着実に熟成をさせたければ、低温で保存すればいいんですけど、

これまら厄介なもので、温度が低すぎると、いくら時間が経っても熟成が進まないのです。

ここらへんが、また、熟成酒の育てかたの難しいところでもあります。


また、開封をすると、空気にさらされて酸化が始まり、

熟成が加速されるということもあります。


このように、酒の熟成には、

温度 × 時間 × 酸化 

という三つの要素が絡み合うことで、様々な変化がでてくるわけです。

次は、その様々な変化を体験したお話をしようと思います。