先日の熟成のお話の続きですが、
熟成の要素は、温度、時間、酸化の三つで、
その関わり方で、味わいが全く変わってきます。
以前、伊勢元酒店さんの日本酒の会に参加したときのことです。
そのときに、伊勢元さんは、「陸羽132号」というお酒を出していました。
「陸羽132号」とは、秋田の刈穂という蔵元が出している純米酒。
酒米の名前から取った名前です。
以前にも、この「陸羽132号」を飲んだことはあったのですが、
とても硬いイメージ…硬いとは、「渋み」や「苦味」を強く感じるようなことです。
とても、美味しいお酒とは思えなかったのですが、
この会に出てきた「陸羽132号」は、とてもまろやかで、旨味を感じる味わいだったのです。
さて、後日。
この伊勢元酒店からお酒を仕入れている鶴君のお店に飲みに行きました。
すると、「陸羽132号」がある。
早速注文をしてみると…旨いことは旨いのですが、なんとなく味わいが違う…。
思い悩んでいると、そこに丁度、伊勢元さんが配達に!
理由を聞いてみると…。
もともと、伊勢元さんが「陸羽132号」を手に入れたのは、
蔵元さんを訪ねたところ、ちょうど2ケース(12本)余っていたので、
購入したんだそうです。
そこで、伊勢元さんは、その1本1本で、保存方法を変えたのです。
あるものは、冷蔵保存で…あるものは、常温保存で、
あるものは、未開封で、あるものは、開封して、
また、開封したものも、あるものは、瓶から少し酒を抜いて、空気の触れる量を多くしたり…。
だから、一本一本が、全く違った熟成をして、
全く違った味わいに…。
そして、同じものは2度と出来ないだろう…と説明されました。
同じ日に購入した日本酒が、保存の仕方で、全く違う味わいになるということを、
見せ付けられた出来事でした。
お酒の熟成。
それは、本当に、いろいろな要素が絡み合う、素敵な事象なのです。