そう言い終わると、
「では、今から関連科目の試験を行う。」
と唐突に副学長は言った。
関連科目の試験と聞いて私は動揺した。
ネットで調べた時には、2次審査は「専攻科の楽器演奏の実技」とだけあったはずだった。
そもそも関連科目が必要ないから、出願していたのだ。
とにかく自業自得とはいえ、この30分の間に、ジェットコースターのようにあまりにもいろいろ思ってもみないことが起こり過ぎていた。
しかし、
「ここに来て座りなさい」
と副学長は容赦ない。
心の準備もないまま、いきなり関連科目の試験が始まった。
まず、初見。
知らない楽譜を渡され、すぐ弾いてみるように言われる。
これは子供の頃、ホラーク先生のレッスンでいつもやらされていた。
たとえ音を間違っても、音楽の流れを止めず、決して止まらないで、テンポ通り演奏を展開すること。
それから、譜面通りに弾くだけでなく、ダイナミクスを付けて感情表現も行うこと。
と習ったことを思い出しながら、演奏する。
「よし、この科目は履修免除。」
次はソルフェージュだった。
楽譜を渡され音名を口に出しながら、楽譜通りのリズムで、音名を言いながら歌う(というか読み上げる。歌うことが不可能なほど音域が広いので、音名だけ唱えるように言われた。)
「よし、この科目も履修免除だ。」
これが本場、ヨーロッパの音楽院のソルフェージュの試験なのかと内心驚いていた。
確かに楽譜自体は難しかったが、附属音楽教室で、子供時代にやっていたソルフェージュはもっと難しいものだった。
例えば、8小節の曲を3回だけ聴かされて、メモを取ることは許されない状態で、全て頭の中で暗記した後、楽譜に書き起こす訓練。
いきなり渡された伴奏のない楽譜に、即興で伴奏つけて、初見で演奏させられる訓練など。
実は日本のソルフェージュって、すごくレベルが高かったのではないか。この調子なら、関連科目はそんなに難しくはないかもしれない…。
私はそう思い始めたが、甘かった。