私の一番最初の記憶は、34歳の頃、母の実家での記憶である。


その時、母や伯母達、祖母などの女性陣は台所仕事を皆でしていた。


私はたまたま台所に面した居間の台所の入り口のところにいたが、昔の地方の家なので、なぜかわからないけど、屏風のようなものがあり、屏風の陰に幼い私がいることには大人達は気づいていなかった。


その時、母が言った。

「他の(自分の)子はかわいいけど、香織はかわいくない。」


そのあと少しザワザワして、誰かの声が聞こえた。

「そんな。香織がかわいそうだ。」


夕方だったので、居間は暗く、屏風の虎の絵をじっと見ながら、「ママは私がきらいなんだ」と母自身の言葉で、はっきり言葉で知った瞬間だった。