風天童 -5ページ目
自転車を買ったのは、7年ぶりか
クルマと同じ 黄色を選んだ
5段ギアは必要ない ただ
静かにぶれずに走ってくれれば良い
小さい頃、長く念願だった自転車
やっと譲り受けた、知人のお古は
漕ぐたびにチェーンをこすり
かごが歪んだ車体にライトは無い
懐中電灯を縛り付けて、夜を走る
それは ワクワクする冒険だった
ドブ板の上を、電車になって走った
小さな灯りは 震えながら道を照らした
ずっと忘れてた記憶が よみがえる
夕暮れを、電車になって帰った
時間は止まってくれない
ジタバタと駆け回る毎日 でも確かに
僕らは栄光への階段を登っている
メディアにも取り上げられ
僕らの映像が地上波で放たれた
夜を徹して、会議資料を間に合わせた
僕も僕なりに、多忙なのだ
久しぶりの新幹線ホーム 相変わらず
にゅるりと走り出す 東京の風景
名古屋までの2時間足らず
邪魔されぬ眠りにつける至福
できることなら、ずっと乗りたかった
陽に映えるミラノレッド
今は力なく色褪せはしたけど
悪戯っぽい眼差し
手洗いをしては、愛しさを確かめた
君との出会いは、新鮮だったよ
ハンドル握るたび、わくわくした
下手くそな僕だから、幾度か傷つけた
洗車を怠けて、磨かない日々 ごめんね
我が家の暮らしのアルバムに
素敵な時間と風景を、ありがとう
お別れに、ひとっ走り あの海まで