7/26の繊研新聞に掲載されていた百貨店特集で、10年度の上位100店の総売上は前期比2.8%減と5期連続して減少したが、08年の6.1%減、09年の9.3%減に較べると減少幅が縮小したと報じられていた。
それら売上統計に続いて事業構造の問題を指摘し、大手百貨店各社のMD統括役員の座談会を掲載していた。
よく出来た特集だと思うが、日本の百貨店が長い衰退のトンネルを抜けた訳でもその兆しが見えて来た訳でもない。
94年から02年の8年間でほぼ8ポイントも歩率を切り上げて百貨店ブランドのバリュー競争力を食い潰した果てに、駅ビルへのOL層の流失にあわてて駅ビルブランドの導入に走り、歩率がほぼ94年水準に逆戻りして収益を圧迫されているのが今の百貨店だ。
駅ビルブランド導入による歩率の低下を人員削減とオペレーションコストの圧縮で吸収して収益性を確保しているのはハイブリッド百貨店戦略を明確にした大丸松坂屋だけで、他百貨店はこれまでのヤング戦略の延長上で駅ビルブランドを部分的に導入しているに過ぎない。
本気で駅ビルと戦うつもりなら、本命はヤングOLではなくトランスキャリアであはないだろうか。
百貨店レディスファッションの中核を支えて来た百貨店トランスキャリアブランドはMDの小細工を繰り返して同質化しバリュー競争力を失ってしまった。
これを駅ビル系トランスキャリアブランド/セレクトショップに置き換えない限り、駅ビルへの顧客流失は止まらない。
それが、大阪駅JR三越伊勢丹の苦戦の要因のひとつとして指摘すべきであろう。
駅ビル系ヤング~ヤングOLブランドを部分的に導入するだけならコスト革新を先伸ばす事も可能だが、百貨店レディスファッションの中核たるトランスキャリアを駅ビル系ブランド/セレクトショップに置き換えるとなれば抜本的なコスト圧縮を避けては通れない。
トランスキャリアはハイブリッド百貨店が確立されるか否かを分ける分岐点となるのではないでしょうか。