10/4/10 Flower Voices 松本英子 玉城ちはる@表参 | 音楽偏遊

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最近見たライブや気になるアーティスト、気に入った店や場所など偏った嗜好で紹介してまいります。アーティストさんへの言及などは、あくまで私個人の見解であり、特に中傷や攻撃を意図したものではないこと、ご了解下さい。

3番手に登場したのが、松本英子。もちろん、ご存じ「Squall」で大ヒットした(CD売上は40万枚以上だったとか)現役大学生アーティストでした、10年前ね。でも、その後のことは、全然知らなかった。音楽を続けていたことさえも。それが、前回、2月のフラボの最後にホスト役のバトンを清家千晶から受け継ぐとの発表があって、本人が登場。きれいで、しなやかな女性との印象でした。

現在、松本英子がどんな歌を歌うのか聞いてみたいというのも、今日のフラボに来た動機の一つ。さて、その内容やいかに。

客席見てると、彼女の昔の歌を感無量といった面持ちで口ずさんでいる人が多数。結婚後に露出がぐんと減り、さらに2年前の出産以降は歌手活動をほぼお休みしていただけに、昔からのファンがかなり集まった様子。ファンとおぼしき人達に、女性が意外と多いのも特長。さっぱりした明るいストレートな性格が女性受けしたのかな。

1曲目分からなかったが、2曲目は「サヨナラ待ってて」。20歳の頃に出したセカンドアルバムから。大物作詞家にスウェーデンの著名作曲家を起用したという佳作。

3曲目に福山雅治プロデュースの「Squall」。知ってる知ってる。音符私恋をしている。もう隠せない~音符というくだり懐かしい。そして短調で物悲しく音階を下る最後の数小節が切なくていい。

しかし、個人的に気に入ったのは、4曲目に歌った、このほど発売した6年ぶりのアルバム「○~EN~」の中の1曲で、アイルランド民謡に日本語乗せた「Sally's Garden」かな。しっとりと叙情的なバラードで、彼女の声に合っていた。声が強く張りがあるタイプではないからね。

ラストの曲は「Life」。生命について。曲紹介で「結婚、出産を経て、伝えたいメッセージが変わった」と話されてた。ママさんアーティストは、みな似たような曲作ってくるなあ。それより、ご本人が肩の力を抜いてステージに立てるようになった事が大きな違いのような気がする。

多分、松本さんはかなり強気で真面目な性格。昔の映像をYouTubeでみると、全て表情が固いビックリマークいきなり売れてしまって、超多忙な毎日の中で「負けないぞ」と肩肘張って生きていたのだろう。取っ付きにくそうな感じだった。

それが、今日のステージでは柔らかな側面も垣間見えた。いい変化じゃないですか。これからまた歌い込んでゆけば、更によくなりそうでした。


さて、ようやっと今日の本命、玉城ちはる。相変わらず、全ての場を自分のペースに無理矢理にでも巻き込むノリと爆笑トークはさすが(笑)

松本英子さんをして、「私、普段はSではないけど、この女、時々イラッときて虐めたくなるよね」といたく刺激された様子。英子さんの、その強気いいねぇ。いじられ専門だった清家千晶ちゃんと違う掛け合いが面白い。英子さん、自分の出番の終わりに「さあ、次はお待ちかね、あの女の登場です」と紹介、玉城さんも「こんばんは、あの女、玉城ちはるでーす」W

そんな面白キャラなのに(関係ないかw)、歌はパワフルで誠実で、何よりスケール感があって圧巻。本当に素晴らしいアーティスト。本人の懐の大きさが、如実に曲に現れる。そういう点で、やはり生きざまも含めた全てが、アーティストという存在を規定するのだと彼女を見ていると思う。

それは楽曲にも顕著に現れる。例えば、こないだまで玉城さんの相棒ホストだった清家千晶の独特な音楽世界や「ユラー」みたいな曲は、彼女以外の誰も作れない。今回、玉城さんが3曲目に歌った「SunnyDay」も、紹介がなくても、玉城節で熱唱したのにも関わらず、どう聞いてもこの曲はハセガワミヤコだな、って分かってしまう。それだけしっかりした自分ならではの音楽世界を清家さんもハセガワさんも確立してるという事だ。

逆にアイドルの曲って誰でも書けそう。パターンが決まってるんだよね。まあ、自分では書けませんが、前にスピードプロデューサーの伊秩さんが、自分でもそのような事を話していた。それだけに、大石由梨香さんが、伊秩さんの定例音楽イベントに出るらしいが、少々違和感あるんだよなあ。大石さんが格好いいだけに、あの商業音楽とは一線引いて活動して欲しいというか。ま、大石さん自身が自分をしっかり演出できるプロデューサー的な資質持ってるようなので流されないだろうが。

さて、玉城さんのセットリスト。
1)僕のリズムで君のステップで(僕と君が逆か?)
2)夕立ち
3)Sunny Day
4)前を向いて
5)君が愛の種
en.出演者全員で新セッション曲(タイトルはずばりFlower Voicesかな)

この日の構成はフルバンド。いつものモジャモジャ頭兄さんのエレキギターが効いていて、ベース、ドラム、キーボードも。本当にいいサポート陣そろったよねえ。羨ましい。

1)は定番。すごくのれるアップテンポな大好きな曲。今日は玉城さん自らアコギも。ただ、ギターに気を取られて、ちょっとパンチ不足。この曲は自分で演奏しない方が良いかと思われ。

2)はミドルバラードかな。歌詞がいい。音符すべての意味をまだ知らない。いつか~音符というサビに、考えさせられる。ハセガワミヤコさんが作ってくれたという3)の軽やかさは、へビー級の玉城節にはちょっと似合わないかな。

それより、やはりこれぞ玉城ちはるというスケール感がある5)や6)がやはり最高。感動的で涙が出そうになる。この辺りの曲では、手話も発動し(ロケットパーンチみたいw)、全ての人にこの想いを伝えたいという真摯な気持ちが、パワフルな歌唱と共にひしひしと迫ってくる。

元々ガタイは大きい方だが、さらに手を大きく動かし、響く声で空間も大きく使えてるので、舞台上の彼女がますます大きく見えてくる。すごい存在感。

最後の「愛の種」では、音符君と、君と、君と、君と、君と、君と、愛の、愛の、愛の、愛の、愛の、種を植えよう~音符という曲のクライマックスで、会場のお客さん1人1人をしっかり見すえ、相手ごとに違う表情で呼び掛ける。その呼び掛け一つ一つが、力のこもった人と人のコミュニケーションなのだ。

玉城ちはるを思わず尊敬してしまう理由の根本には、この圧倒的なコミュニケーション力があると思う。彼女は一般大衆やファンといった匿名の塊ではなく、常に1人1人をしっかり見ようとしている所だ。

それってとてつもなく大変で、面倒で、覚悟がいることだ。出会った1人1人を背負い込めるほど大きな器を、自分は持ってない。いや、もっている人は稀だろう。勿論、玉城ちはるだって全て背負えはしないだろうが、それでも常に全力で努力している。その姿勢は美しくさえある。

そうした特性は、神山みさにも通じる。彼女も出会った全ての人を、塊ではなく個人として受け止め、1人1人を理解し、その幸せを歌を通じて願ってくれる。そうあろうと努力している。そこが魅力だ。

みさちゃんは、1万人を集めて武道館でライブしたいと、かねがね語っているが、その1万人を見知らぬ人の束とは考えてない。自分が本気で向き合った人たち、それこそ顔と名前が一致して何らかの時を共有した人で武道館を一杯にできたら、と考えている。それが実現したら本当に素敵な事だ。

玉城ちはるのパワーや想いも、人を集める。強い磁力を発している。そして「愛の種」だ。今、まさに社会では、人と人を繋ぐ生命の実感=愛?が求められている気がする。無機質な都会より、有機な野菜が好まれているのも、全て一緒なのではないか。こんな時代だからこそ、玉城ちはるには頑張って欲しいね。

そう、今回のフラボレポの導入で野菜の話をしたのは、実はここに繋げたかったからなのでした(本当か?笑)