ぽてとたべたいのブログ

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蓮兄様のターンですね。

京子12歳、蓮兄様16歳。

すっっげぇ、思いつくままに書いてます。
ちゃんとした文章が読みたい方も、読むのはやめておきましょう。





~~~~~~~~~~~~~








「ふ、ハアッ!蓮兄様、ほんとですね!?口から吐き出しませんね!?奥方様は、蓮兄様が口の中に入れた食べ物をいつの間にかこっそり出すのが得意だとおっしゃってました!ふぅ…、ハァっハァ!」

「ハハハ!毒物が仕込まれた可能性があるものを、吸収される前に嚥下せずにこっそり口の外に出す。忍びの基本の技だよ!」

「もう!へ理屈をー!……ふぅっ!そもそも奥方様のお食事はっ、毒物ではありませんー!…………ハァ…っ、ありがたく、………いただかなくては…っ!」

今度は、木の幹と縄を交互に組んだ、垂直の壁を登る。これは、この里の忍びの鍛練用に作成した器具だった。女性用の易しいもので、京子でも登りやすい作りなので蓮は選んだのだが、目に見えて京子の動きが鈍り、口数も減った。

「ハハッ!京子は、『頭領の妻である奥方様の作る食事』を口にしたことがないからそんなことが言えるんだ。京子の言う『毒物』なるもの…。ハハッ、…母様の食べ物の殺傷能力は、その類いに匹敵する……っえ?」

蓮はひそかに母親の料理を危険物だと、笑いにしながら話していた。…が、下の方から、すとっと何か落ちた音がした。まさかと思い蓮が見下ろした幹の棒には、いたはずの京子の姿が見えず、瞬間に焦る。

「京子!?」

しかし、下からは返答はない。

「京子!」蓮はもう一度声をかける。

そうして蓮は下に飛び降り、器具の下にうずくまっている京子の姿を見つけた。

「京子!京子!!どうした!」

「れ、ん、兄様……ご、めんなさい。」
京子が顔を上げる。真っ青だった。

「どこか打ったか?痛いか?無理して動かなくていい!」

「あそこから飛び降りたけれど、ちゃんと着地しました。どこも打ってません。」

「そ、そうか…、よかった…。…?、腹が痛いの?」
お腹をかばうようにしている京子に気づき、蓮はそっと背中をさすった。

「はい……実は朝からおかしかったのです…、でも、段々ひどくなってきて…そしたら、…っ、…ふぇ。」

「き、京子っ!?ど、どうしたんだ?」

「ち、血が…血が…!!」

京子が起き上がり、蓮がその袴の股から太ももの付近を見ると、血で汚れていた。

「っっ!」
と、京子が何かの病気かと焦って青くなった蓮だが、しかし、すぐに思い至ることがあり、今度は顔を赤くする。

「兄様、蓮兄様!どうしよう、どうしよう…!…うえ、うえ~ん、…ふぇ」
京子は、両手を蓮に伸ばしてくる。不安からくる行動なのだろう。事実、京子は、今までも蓮にたくさんおぶわれてきたし、鍛練で怖いことがあれば、抱き締めてもらいもした。

「…京子、京子、大丈夫だよ。大丈夫。怖いことなんてない。」
蓮は、そっと京子を抱き締めた。

「で、でも、血ぃ……お腹も痛い…腰も痛いの…、」

「うんうん。俺が里までおぶってやるから。ちゃんと、お雪さんに診てもらおうな。怖いことなんてないから。大丈夫だからな。」

「うえ~ん、蓮兄様ぁ…」
京子は、ぎゅう、と蓮にしがみつく。

そうして、蓮は京子を背負うと、元来た道とは違う、最短で戻れる、京子を揺らさなくてもすむ平坦な抜け道を素早く歩いていった。




蓮は、『ぐすぐす』と泣きながら自分の体にすがりついてくる京子と、その京子の体の感触に、今まで感じたことのない感覚が沸き上がってくるのを、密かに感じていた。

「大丈夫、大丈夫だよ。」
蓮は、そうして子供に言うように優しく優しく京子に言いながら、しかし、自分自身にも、『京子はまだ子供なんだ』と言い聞かせていた。

初潮をむかえたとはいえ、まだ子供の京子に、この邪(よこしま)な気持ちを悟られてはいけないと、そう何度も何度も言い聞かせていたのだった。













―――翌日。


「昨日はわあわあ騒いでごめんなさい。」
京子は蓮の鍛練場まで謝りにきた。その手には、お赤飯弁当。

「お蝶さんが炊いてくれたんだね。美味しそうだ。」

「…昨日は…自分のことなのに、全然思い至らなかったの。お雪さんからこの前、同い年の女の子達と一緒に、『もうすぐ始まるから心構えをしなさい』と教えてもらってたのに…。」
京子は、ガックリとしたように言った。忍びが、経血で現場を汚し証拠を残すことがあってはならないとまで教わっていたので、京子は忍びとして落ち込んでいるのだ。

「…でもまあ、京子は初めてなんだし。ここは里で任務中でもないのだし、そんなに考えこむことはないんじゃないかな?」

「………。」

「あ、で!京子、お赤飯食べてもいい?」

「っ!、あ、はい!どうぞどうぞ!そうね、私の落ち度なんて今はどうでもよいわね!蓮兄様に栄養つけてもらわなくちゃ!…この牛蒡の漬け物は自信作なの、蓮兄様のお口に合うといいな!」

「うん…ありがとう。そういえば、昨日の弁当もちゃんと食べたよ。茄子と人参の煮物も美味しかった。」

「でしょう?夏に採れたのを乾燥させておいて、水でもどしたの!以前、井津の里の頭領のお屋敷の調理場担当の方にね、色々教えてもらってたんだー!…あと他にもー……」

そう言って、嬉しそうに調理の知識を披露する京子。

そんな京子を見て蓮は思った。
(ほら、京子はこんなに楽しそうに料理の話をする。これでいいじゃないか。京子は、このまま里の中で、料理や工作で皆を支えれば。…そうだ、そうしたら、あんなこと…あんなことなんかしなくてすむ…)

そして蓮は、一ヶ月前の出来事も思い出していた。













―――      一ヶ月前…。

「蓮、こちらに座りなさい。」

夕餉のあと、蓮は父親に自室にくるように言われていたので訪れた。

「はい、父上、失礼します。」

「…単刀直入に言う。今夜、枕の指南を受けなさい。」

「…は…!?…はあ!?ま、枕の…?」

「…蓮、父親の部屋だからといって、大きな声で驚き過ぎだ。忍びとしては失格だぞ。」

「え?いえ、だって、そんな話、今まで少しも、」

「そうだな、たしかに初めて言った。…お前がそういう年になったということだ。そして、あとしばらくでお前は私の元を巣立つ。頭領としての仕事を教えるのはまた何年も先の話となるが、その前に、一人の忍びとして教えておきたい、最後の知識だ。」

「父上から最後の…?」

「色恋術に長けた忍びの業績は、時に、高度な忍術を体得した忍びの業績に匹敵する。」

「……、」

「蓮、お前は稀代の忍びになるだろう。…それは間違いない。だが、忍術だけを磨いても、この先遭遇する窮地を全てしのげるとは思えない。なぜなら相手は心のある人間なのだ。なにをしてくるかわからん。特に女は、私達男とは身も心も異なる生き物だ。そんな女がこの世の人間の半分を占めている。その女のことを知らずして、どうして優秀な忍びといえよう。」

「…た、しかに、俺は女性のことはわかりませんが……」

「そうだろう?お前は、母親に似て見目秀麗で、それだけで女を誑(たぶら)かすには十分な武器になる。だが、お前は女を知らんだろう。…それが、お前の疵瑕(しか)になっては困る。」

「……、」

「お前の…『頭領の嫡男』の任務中の失敗による死は、里の者にとって、相当な痛手となる。彼らの士気を下げ、不安を煽る。だからお前は、なんとしても死地から帰還しなくてはならない。そのために、泥水でもすすれ、藁をも掴め、死に物狂いで里に戻れ、と教えてきた。」

「はい。」

「蓮、枕の技は、いつか必ず必要になる。お前が死なずに生き残るための策として、女の体と心を取り込め。そしてその女を使え。これからの指南に否とは言わせん。お前が里を守る頭領となりたいのなら、死なぬためにでき得る限りの技術を身に付けろ。それがお前に課せられた責務だ。」


そして蓮は、それから一週間の間、指南を受けたのだった。毎晩異なる女性に手解きを受け、女性というものを学んでいった。

蓮は、ただひたすらに、忍びの里の次期頭領として、そして蓮の憧れの父のような、『任務を確実に遂行する忍び』になるために、指南に向き合い、技術と知識を得たのだった。