すみません、ごめんなさい。芸能界のことは全くわかりません。一般的社会人のお仕事もよくわかりません。なので、その辺は、サラ〰ッと読み流していただきたく
…………この言い訳は、よく書いている気がします。だって、本当に知らないんですよぉ、わからないんですよぉ。でも、書きたいんですよぉ
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「こちらは、『Hope』のギター担当の小池真也さんです。」
「そしてこちらは、LME所属の京子さん。」
「「はじめまして。よろしくお願いします。」」
CMの打ち合わせが始まり、初対面の二人は挨拶を交わした。
爽やかさがキャッチコピーの5人組ロックバンド『Hope』。ギター担当の真也は、自身のバンド専属での作曲家も兼任していた。
このCMはリニューアルされたばかりのブレンド茶のもので。真也は、CMのための曲を書き下ろし、CM内でキョーコの横で歌う。キョーコは、『爽やかに』微笑みながら、ブレンド茶を『美味しそうに』飲むというものだ。
その後は打ち合わせはスムーズに進み、2時間程でお開きとなった。
この打合せで仕事が終わるキョーコは、帰宅するべく飲料メーカーのビルのエントランスを進んでいた…………のだが、
「京子さんっ、京子さんっ、待って、待ってください!」
「…………あ、はい!?」
真也がエスカレーターの上から、キョーコに声をかけてきた。
びっくりしたキョーコが立ち止まってそのまま待っていると、真也がキョーコのもとまで駈けてくる。
「ハアッはあ〰。あ〰すみません、いきなり。打ち合わせが終わってすぐに声をかけようと思っていたんでけど…………ちょっと捕まっちゃって。」
苦笑いをしながら早口で話す真也。
「あ、はい?何かありましたか?」
「ええと、単刀直入に話します。メーカーさんからは、ブレンド茶のみならず、あなたのイメージにも合うような曲作りをと依頼されてまして。」
「っえ、私?私…………なんか、ですか?」
「『私なんか』ってことは無いですよ!このお話を頂いてから、京子さんの作品は、『キュララ』に始まり、『PVの天使』、『美緒』と、その後も全て拝見させていただきました。どの作品もひとつひとつ魅力的なんですが、正直なところ…………イメージがバラバラ過ぎて…いや、もう曲にしづらいと言いますか、何と言いますか…………。」
エヘヘと苦笑いをする真也に、キョーコはなんだかよくわからないが人様の仕事の進行を難航させてしまい、申し訳なくなる。
「…………あ、なんかすみません………。」
「あ、いや、謝ることなんて全く!僕は、すごいなあって、さすが女優さんだと感動してるんです!………ただ、曲作りが進まないのも事実でして…………でも、今日実物の京子さんにお会いしたら、『これだ!』って感じが見えてきたんですよ!」
目をキラキラさせた真也は、キョーコの手をパッと取ると、ぎゅうっと握った。
「僕は、『素の京子さん』がいいなって。飾らない、『何も演じてない京子さん』にイマジネーションを刺激されたんです!」
「…あ、ありがとうございます………。」
真也があまりにも嬉しそうに話すので、キョーコもホッとした。
「そこでですね、できましたら、もっと京子さんの人となりを教えていただきたいなと思いまして。」
「…………私の人となり……を……。え、と。どのように…したら……?」
「はい、もしよろしければ、今から晩御飯を一緒に食べに行きませんか?」
「………ぇぇ。…………と…」
キョーコは返事につまった。色々と思うところはあるのだが、何よりも、蓮の言葉が頭をよぎったからだ。しかし真也は、キョーコが難しいことを要求されて困っているのだと考えて、さらに誘いの言葉を続けてきた。
「僕のマネージャーの光子さんが、お勧めのお店をおさえてくれてます。だから3人で、ね?さっき言った通り、飾らないそのままの京子さんを知りたいんです。難しく考えなくても大丈夫ですよ。美味しい食事をしながら、気軽におしゃべりをするだけで大丈夫ですから。あ、必要でしたら、うちのマネージャーから京子さんの事務所に連絡を入れておきますから。」
「あ、あ……それでしたら…………。」
真也の言葉に、キョーコは安心して笑って応えた。そして、真也はその言葉を聞いて、とても喜んだ。
「…………へぇ。ゆうべそんなことが。」
翌日の午後、移動中の車内で、社は今朝仕入れたばかりのキョーコの情報を蓮へ伝えていた。
キョーコは蓮と付き合いはじめてすぐに、蓮の勧めでラブミー部を退部した。その後に社長の発案で、社が蓮とキョーコの兼任マネージャーとなったのだ(最新本誌を読まれた方へ:帳尻を合わせてみました)。
そのためキョーコは、今朝顔を合わせた自身のマネージャーである社に、事の次第の報告と、事後報告となってしまったことへの謝罪、心配性な蓮への伝言を依頼したのだった。最も、社はあらかじめ椹から上記の情報は伝達されていたが。
「その光子さんとかいうマネージャーさんは最後まで一緒だったんですか?会話の内容は?」
蓮は社に向けてすぐさま疑問を口にする。
「あ、うん。だるま屋の近くまで光子さんとやらの車で送ってもらったって。会話の内容は、そうだな。京都出身だと言ったら、京都の名物と観光名所で話が盛り上がって…………とか、あ、キョーコちゃんが、お手製の琴南さんのマスコット人形を持っていたのを見られて、お裁縫が好きだと言ったら、光子さんが編み物が趣味だとか…………そんな感じ?」
「……………………フォーカスが、『女優京子』ではなく、『最上キョーコ』ですね。」
「ああ、キョーコちゃんは『本当に素の私のことで……あんな話で曲作りができるのか心配ですけど。真也さんは、これで一気に書けそうってご機嫌だったので、一応はご期待にそえられたようなのですが。』って言ってた。…………って、お〰い、蓮君。顔、怖いから。」
「………………そもそもなんで事後報告な上に、俺に直接じゃなくて社さんづて………………。」
「事後なのは、もともとゆうべは『敦賀蓮』の方の大事な商談中で、基本的には電話に出られないって言ってあったんだよ。何かあったら椹さんに相談してねって。あの飲料メーカーのCMは、担当者とはもう話は詰めてあったし、無理難題を吹っ掛けられるような内容のCMでもないしな。その場でキョーコちゃんなりに、あちらのマネージャーさんから連絡するのが筋だし、あちらの事務所も大きいから大丈夫だと判断したんだろ。…………あと……俺づてなのは……、ほら、キョーコちゃん的にはビジネスライクにいきたかったんじゃないのか?男と食事をしたとはいえ、あくまでただの仕事の延長ってことにしたいんじゃないのかなと。だからキョーコちゃんは、『敦賀さんにわざわざ言わない方がいいでしょうか?でも、もし人づてで後から聞かされたりしたら、逆に申し訳ないですよね…………。』って、はじめはお前に言うのもやめておこうとしていたくらいだし…………って、俺がわざわざ説明してやらないと、キョーコちゃんの気持ちは本当にわからないのか?」
「…………わかってますよ…………でも、俺自身の気持ちを整理するためにも……念のため確認です。」
「…………。キョーコちゃんの、電話ではこういう話をしたくないっていう気持ちもわかってるんだろう?」
「…………はい…………。」
「うむ、よろしい。まあ、お前のヤキモキする気持ちもわかるよ?二人が付き合いはじめてからのスケジュール組みは、細切れで会える時間よりも、ちゃんとゆっくりとできる時間を確保することを優先してるからなあ。その分、ほいほい会えないし……。でも明後日の夜は、晩御飯も一緒に食べられるように仕事の予定を組んだからさ。疑問があるなら、そこで本人にぶつけてこい。穏やか〰に、な。」
「…………はい。」
「でも、なんだな。俺はお前たちのスキャンダルに結構気構えてたんだけどな。杞憂だったよなあ。蓮の、キョーコちゃんへの愛情表現の方向性の賜物なのかなあ。ボディータッチに関しては頭を撫でる程度だし、雰囲気も爽やかで、しかも逆に発言がオープン過ぎだからなあ。」
「………………………………。」
「俺なんか昨日は局のスタッフさんに、『すご〰く仲のいい先輩後輩なんですね』、とか言われたしな。」
「……………俺、間違ってますかね?」
「んにゃ、いいんじゃないか?少なくとも、お前は自然体だろ?最近、牽制も堂々とできて、楽しそうだもんな。それにキョーコちゃんだってオタオタと慌てながらも、お前に大事に扱われて満更でもなさそうに見えるし…………。」
「…………社さんがそうおっしゃるなら………いいです。」
「うん、まあ本気でNGだと思ったら、ちゃんと止めるから。あ、そうだ!今日の夕飯はキョーコちゃんお手製のお弁当だからな〰気張ってこー!」
「ぉーっ。」
「ヌオオッ!蓮君、どうしたの!?可愛いお返事だな!図体はデカいけど!」
「……………………む、せっかくノッたのに。」
「ハハハ。可愛いなあってほめてるんだから、むくれるなよ。」
社は朗らかに笑った。蓮はそれを受けてさらに、ぷ、とむくれた風の顔つきで車窓に視線を移す。蓮の空気は、この話はもう切り上げようと言っている。それを横目で確認した社は、車のハンドルをキュッと持ち直して、意識を完全に前方に移した。
(蓮の奴……変わったよな…………。キョーコちゃんへの言動が本能に忠実になったら、普段の言動自体まで少し可愛くなっちゃって…………。椹さんに煽られた直後は目がギラギラして、やっとこさ男気を見せるのかと嬉しい反面、キョーコちゃんのことが少し心配だったけど………。結局は、いまだに最後までは手を出してないみたいだし。さっきも、以前なら闇の國のお人が出現する場面だったけど、どっちかと言うと、大型犬が出てきた感じだし……しかも、ドーベルマンとかよりはゴールデンとかラブラドール的な………。………もしかすると、今の甘えん坊な感じが、本来の元の蓮の性格に近いのかな…………?)
社は、真っ黒な大型犬がわふわふっとキョーコに飛び付く様を想像して、一人小さく笑った。