すみません。どちらのversionとか、もう関係なくなってますね。あっし、人生行き当たりばったりなものでびっくり


そこのあなた様!今回は2分で読むくらいが適切かもしれませんよ。



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「っあ!、これ…………最上君の紙袋……?」

椹は、キョーコと二人で新たなオファーの内容の検討をしたあとに解散したが、キョーコが紙袋を忘れていることに気が付いた。

(あの子はラブミー部部室で荷物を回収すると言っていたから、今ならまだ大丈夫だろう)と、椹は紙袋を手にとって、部室へ向かった。





部室の中にある、着替えのためのロッカーが奥まったところにあることを知っている椹。そのため、コンコンッとごくごく軽いノックのあとドアを開け、そして、その思考を止めた。

窓際には、にわかには信じがたい光景が繰り広げられていたからだ。

キョーコが蓮に雁字搦めに抱き締められ、激しい接吻を受けている。


「ぅぅん、…………ッ。はっんっ、」

「キョーコちゃん…………ちゅ…ぅ、。好き。……………………好き……ちゅ、く、かわいい。キョーコ…………俺のキョーコ……はっ、ちゅっ。」


椹は頭が真っ白になりながらも、ここはとりあえず出直して…………と、思い、音も立てずに後退ったのだが、またしても椹は、思考を止めるはめに陥った。蓮が、くったりとしたキョーコを胸に深く抱き込んで、色欲に燃えた目のまま、椹を緩く一瞥したのだ。

「……お疲れ様です。」

しかもあろうことか、蓮は、濡れた声で静かに挨拶を繰り出した。そんな蓮の腕の中で、明らかにびくんっとキョーコの体が揺れた。キョーコの顔は、蓮の上半身に完全に隠されているため表情は確認できないが、恐らくたった今、蓮の言葉で第三者の存在を知ったのだろう。蓮の背に回されたシャツを掴む手が、赤く染まって小刻みに震えだす。


「あ!、お、お、お疲れさんっ。」

「…どうかされました……?」

蓮の物言いは穏やかなのに、雰囲気はいかな男性の椹でも頭に血がのぼりそうな程に濃厚だ。

「あ、こ、これ!最上君の!」

「……ありがとうございます。」

もう出ていくしかないと悟った椹は、今なら紅葉でも演れるのではないかというくらいの素早さで部室を脱出した。

真っ赤な顔のまま廊下に出た椹は、廊下の向こう側であんぐりと口を開けた社と遭遇した。

「な、なんか、見ちゃ………………………………」

社の問いかけに、椹はぐったりとして頷いた。

その後、蓮が次の仕事へ移動しなくてはいけないタイムリミットの20分間で、椹は社からことの次第の説明を受けた。そして、己が蓮の「本能」を煽ったという事実を知ったのだ。












「も、もうっいいかげんにしてくださいっ!敦賀さん、ほんとにおかしいですよ!」

二人が付き合いだして一ヶ月程たったある夜のこと。キョーコは、蓮の車の中で非難の声をあげた。

公然の面前で、二人の関係を隠す気の薄い蓮の言動は、あのラブミー部部室の一件以来もずっと続いていた。

「さっきだって、『キョーコの作るご飯は毎日食べても飽きないんですよ。』とか。 もう絶対にADさんに勘づかれてましたよ!」

「え?……うん。だって、わかるようにしたんだから、逆にわかってくれないと困るし。」

「わ、わかるように!?」

「うん、そう。だって、あのAD、キョーコちゃんの差し入れの『お握らず』、美味しい美味しいって言ってあんなに食べて。それに、キョーコちゃんに話しかける時、体が近過ぎだし。」

「え?え?それとこれとの何処に関連が?」

「………………。ん、そう、だね。やっぱり………キョーコちゃんにはちゃんと話しておかないと伝わらないか……。」

「…………………そのお話を聞かせていただいても、敦賀さんの言動に対して私が納得できるとは思えませんけどね…………。」

「う…ん、どうだろうね……。でも、さすがにちゃんと知っててはほしいし、何はともあれ、ここはきちっと話そうかな。……あのね、キョーコちゃんは、恋愛面において特に自己肯定感が低いと思うんだ。……違う?」

「…………自己肯定どうのというか、実際に私なんかツルペタンで色気も何もあったものじゃ……それに、芸能人としての華も「……ほら、ね。」」

「じゃ、じゃあ、私の肯定感と敦賀さんの暴走とは何の関係が?」

「……『暴走』って……キョーコちゃんは面白いな。あのね、まず俺は、もうキョーコちゃんとは人前でも前みたいにまで距離はおけない。そばにいたいし、声だって聞いていたい。そこでね、俺達が中途半端に仲がいいだけだと、間違いなく、色々と勘ぐって要らない忠告やお節介をしてくる人が現れたり、横槍も入ってきたりするんだ。」

「……む……確かに…………。中途半端に私が敦賀さんと仲良くしたら、敦賀さんを狙う魅力的な女性方から、誹謗中傷されたり、嫌味を言われたりしそうです。というか実際に、それっぽいことは以前から何度か………。」

「…………うん、そうだよね。まあそれに、君だって、男が寄ってきてるだろう?」

「私に男?いえ、無いです。」

「ほら、キッパリ言い切るんだもんな………。本当に困ったもんだ。」

「む〰『困った』って……」

「ストップ!キョーコちゃんとこんなことでケンカはしたくないの。だから聞いて?あのね、自己肯定感が低い君には、君を狙う男共からの自己防衛が望めない。となると、俺が出ていくしかないだろ?それに、俺のお気に入りって周知されるだけでも、間違いなくアプローチは減るんだから。」

「…………はぁ。」

まだ納得のいかないキョーコは生返事だ。それを一瞬諦めるような目で見た蓮は、気を取り直したようにまた話し始めた。

「…………あとは、女性方からのキョーコへの対応もね。女性方のやっかみ?っていうのかな。そういうのを受けたキョーコが、俺と釣り合わないとか有り得ないことを思って自ら身を引いてしまったら、俺が可哀相過ぎるだろう?…………でも、せめてこうして会えた時に俺から堂々と愛情表現をされ続けていれば、キョーコちゃんには俺の気持ちが伝わらるよね?そしたら『敦賀さんを捨てたら、敦賀さんが可哀相かも。まだ恋人でいてあげようかな。』って優しいキョーコちゃんは同情して、離れていかないだろ?」

「………………………………。」

「…………どうしたの、またもやいつぞやの時のように目も口も全開大だよ。……もしかして、変顔対決?いいね、それ。仲良しな恋人っぽい。……ちょうどうちの駐車場に着いたしね。よ……し、と(バックで駐車)。…………(変顔作成)」

「ぶっはあ!!!ぎゃっアハハッ!やだ…………あはははは!!!!敦、賀さん、の、カ、オ……………………ッ!!!あははははひ〰ひ〰〰、息で、きなッ」

「ふふっ。俺の勝ち〰。」

「お腹、イタッ、あはっ!て、天下の敦賀蓮の、あん、なカオっ苦しっ!」
キョーコはお腹を抱えて笑い続けている。

「ね、キョーコちゃん、楽しそうでなによりだけど、勝者の俺にご褒美は?」

「ハーハーはぁ〰、あ〰お腹痛……………………ご褒美…………?」

「恋人同士のゲームには、恋人からの甘〰いご褒美が世の理だよね?ほら、ここ、ここにキョーコちゃんからのご褒美は?」

蓮は口を指差して、ニコニコと機嫌良くキョーコに迫る。

「……………………敦賀さん…敦賀さんこそ、なんだかとても楽しそうですね………。」

「え?うん、わかる?ふふ。」

「……なにかいいことでも、あったんですか…?」

「……そうだね、あったよ、いいこと。正直俺自身もこんなに幸せなことだとは思ってなかったんだけど。」

「?」

「キョーコちゃんと付き合えてるからだよ。」

「…………へっ。」

「あ、間違えた、違ったな、ごめん。付き合えてるのは、確かに本当に本当に言葉にできないくらい幸せなことだよ。そもそもずっと前から、付き合えたらきっとすごく幸せなんだろうなって思ってたし…………でもだけど、そうでなくて。」

「?」

「俺の本能を押さえつけずにいられることがね、『いいこと』なの。キョーコちゃんを好きだって気持ちを解放できるのが、こんなに楽しい気持ちになれることだとは思ってなかったんだ。」

ハニカミ全開の蓮。キョーコは、あまりの眩しさに、逆に目を反らせない。

「俺さ、キョーコちゃんに想いのままに好きって言えて幸せなんだ。あ、そうだ。それにさ、俺、恋人なんだから、キョーコちゃんを独り占めしたいって言ってもいいんだよ?それはほんとにすごいことだよ。」

キョーコの目を見て、にっこり、と微笑む蓮。その意味ありげな笑みに、キョーコが少し警戒すると

「他の男によそ見してほしくないとか、他の男と二人きりにならないでほしいとか、他の男のことは考えないでほしいとか、他の男に連絡先を教えないでほしいとか、他の男の「ちょ、待っ、も、わかりましたから!」」

「…………わかった?ほんとにわかったの?じゃあ、何がわかったのか言ってみて?」

「えっ、えぇ〰〰〰」

「ほら、Repeat after me.『敦賀さんは私のことが大好き過ぎるゆえの独占欲の塊で、ほんとに大変で、でもそんな敦賀さんも大好き「もう、なんですか、それっ!自分で何言っちゃってるんですっ!それに、無駄に発音がネイティブ過ぎるし〰」」

「……あ!ご褒美!ご褒美もらってない!」

「…………えぇっ!あ、あれ、冗談じゃ…………。あ、えと、その(私から口にチュウ?恥ずかし過ぎだし、やり方わかんないしっ)、あっダ、ダメ!ここ、駐車場でしたっ!ねっ!」

「じゃあ、駐車場じゃなければいいの……?」

「だ、だからぁ(蓮乃助…………可愛いな、コンチクショー!!!)」

「……キョーコちゃんからのご褒美…………ほしい…………(く〰ん。)」

「……え、えぇ〰」





本能を解放して愛を注ぎ続ける蓮に、キョーコの心も優しく引き上げられる。そうやって、二人は朗らかに恋人同士としての関係を育んでいった。

そしてその関係は、蓮がキョーコに諭した通り、この先に訪れる「二人の関係」を破壊に導こうとする外力を退ける力になることを、キョーコはまだ知らない。




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あと2話くらいで終わる予定ですが。
きちんと終わるといいな〰照れ