我が家は上の子が、この4月から、「ピカピカのっ一年生♪」です。
稚宅では元々亀スピード更新てしたが、上の子のお弁当とかあれとかこれとかで、4月は間違いなく創作の時間が確保出来なくなる予感がしており、どうならことやら。職場では新人さんが入ってくるし……。本当に離職率が高すぎると思います。もう少し、皆が辞めずに続けてくれたらなあ~。
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「私の話も、聞いて、くれますか?」
「…!!うん、どんなことでも!」
小さな声の申し出。話し合う機会をキョーコが与えてくれたのが嬉しくなって、声が弾んでしまう。
「今度は……反論しないで、ただ聞いてくれますか?」
「あ……!、…はい、今度こそ…。」
「……ふぅっ。…あの。えと。ん、コホッ。ふ〰。………………………モー子さんが、昨日の夕方に言ってたんです。………私の誕生日とクリスマスが重なる時を、敦賀さんなら絶対に狙ってるって。『ホテルのスイートに泊まって、とか、雰囲気もきちんと計算して。キョーコは敦賀さんに大事にされてるから、お姫様みたいに扱ってもらえるよ。よかったね、幸せにしてもらっておいで』って。それ聞いて、……12月24日の夜はデートして、25日も予定を空けておいてほしいって敦賀さんからは既に誘われているわけですし、おこがましくもモー子さんの予想は一部当たってるかもって思ってしまって。………だって、だって、私たちは付き合ってるわけですし、敦賀さんは大人のひとですし。でも、でも私、怖くて。」
「………俺に……そういうことをされるのが?
」
「…いいえ。もちろん違います。あの、その、多分、一回そういうことしてしまうと、敦賀さんに『つまらなくてめんどくさい子』って思われて………私たちは終るんだろうなあって。それが怖くて。」
…………死ぬほど反論したかったけど、死ぬ気で耐えた。
「さっきは…最初は、備品をあんなに滅茶苦茶にしてしまった直後で、抱き合ったりとか、そんな心境じゃなかったんです。敦賀さんまで巻き込んでしまって、もう申し訳無さすぎて。そしたら、その、敦賀さん、が、色々…してこられて。怖かったです、すごく。男の人の力で押さえつけられて。」
きゅうっと俺に抱きついてきたキョーコの背中をゆっくりとさする。
「敦賀さん、こんなところでどこまでするつもりなんだろうって。何されるんだろうって。私、初めてなのに、ちゃんとした場所じゃなくてあんなところだったから、敦賀さんに大切に想われてないんだなって。それだけの価値は無いと思われてるんだなって。だって……敦賀さん、好きな子なら、大切に大切にするだろうから。モー子さんの言ったこと、クリスマスにはそうなるかもって、心のどこかで期待してた自分が恥ずかしくて。情け、なくて。」
…………キョーコさんのお話、まだ、続くの、かな、まだ、俺には発言権、無いの、かな。
「それに、社さん達が来たら、敦賀さん、いきなりいつもの状態に戻って。ああ、これって敦賀さんからしたらたいしたことじゃないんだって。私だけいちいち狼狽えて、滑稽だなって。」
そんなの、君だってよくご存じでしょう。俺は何を隠そう、俳優を生業にしているのです。「己の所業の非道さに耐えられず穴を掘って潜りたいところを、紳士面で誤魔化す」なんてことにもちろん演技力を駆使致しますとも。……なんて、今は言わせてもらえませんかね?
「衣装の山の中から助け出されてからは、敦賀さんの行為を上手に受け止められなかったっていう引け目が……もうどうしようもなくて。いつもいつもいつも敦賀さんにすり寄ってくる、綺麗な大人の女の人達への劣等感がどんどん強くなって。………どんどん…どんどん悲しくなって……。」
が、我慢、我慢我慢我慢我慢我慢!!!反論しないって、今度こそちゃんとキョーコの話を全部聞くって、約束したんだから!
「こんな中途半端な触れ合いが最初で最後だなんて、私、惨めだなあって 。でも、まあ、私にはそれがお似合いかもって。」
だから、我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢我慢!!!!!!
「こうなると、ほんとアイツのことばかりを責められませんね。私が悪いんですよね。自業自と「ご、ごめ、キョーコさん。」」
「…あ、はい?………あの、『キョーコさん』って………。」
「あの、反論がダメっていつまで続くのでしょうか?」
「あ…何かおっしゃりたいのですか?」
「え、ええぇっ!?、そりゃ、そりゃあもちろんでしょうよ!?その、発言権がいただければお伝えしたいことの、あれやこれや!」
「ふふ、敦賀さん…敬語なんて、変です。」
「…変て……キョーコさんのせいなんですけど……。」
少し笑ってくれるようになったキョーコの気分を害したくはないが、燻(くすぶ)っている不安と不満を、少しだけ声音に乗せた。
「……わかってます…そうですね、私のせいですね……。私が…敦賀さんの私への気持ちを信用しきれてなくて…、それに私自身が異常に自分を卑下してしまうから、私たちは今こんなことになってしまってるんですよね………。敦賀さんは………嘘……なんてついてない………んです…よね…………。」
「………キョーコさん「敦賀さん。」」
「あ、うん!」
「ごめんなさい。」
「え……と?」
「色々と、ごめんなさい。」
「いや、違うよ!悪いのは俺で。」
「いえ、『ごめんなさい』、です。でも、…………敦賀さん、も………やっぱり悪いと……思います。だから、だから、その………喧嘩両成敗ってことに……しません、か?」
「キョーコ………!!」
ありがとうの気持ちを込めて、キョーコをぎゅうぎゅうと抱き締めた。
キョーコと仲直りができて心に余裕が生まれると、今度はキョーコが俺を怒ってくれたことが、変かもしれないけれど、なんだか嬉しかった。俺に非があって、でもそれを後輩だからと我慢して不満を飲み込むのではなく、ちゃんと指摘してくれたこと、そして結果として許してくれたことが、二人の関係を確立させていくための階段をひとつ登れたみたいで嬉しかった。
恋人同士としての俺達には上下関係なんてなくて、それをキョーコが理解してくれたみたいに感じる。二人の間に揉め事なんて、もちろん無い方が楽しいに決まってる。でも、どこかでぶつからないままでは、キョーコはずっと後輩としての距離感を越えてはくれなかっただろう。
ふう〰っ。
安心すると、キョーコの感触を味わうことに集中できる。
ああ、キョーコ、可愛いなあ。
こんな時に言うべきじゃないかもしれないけど、でも、キョーコに自信をつけてもらいたいし……このまま勘違いさせたままかもしれないなんて、それだけは避けたいし。…よし、一か八か。
「…ね、反論じゃないから……言うんですけどね?あのね、キョーコさんの誕生日には…ホテルのスイートで、さっきの続きをしてもいいですか?」
耳元に優しく優しく囁いてお伺いをたてる。
「……はい。お手柔らかに……お願い致します……。」
キョーコは逃げるのではなく、俺の胸に顔を押し付けて俺の服をぎゅうと握り締めてきた。
「鋭意努力させていただきます。」
顔が緩んで緩んで仕方ないけれど、今はキョーコには見えないし、まあいいだろう。
キョーコの全部を、服なんて隔たりもなく堪能できるその日を思い描く。とりあえず、今日は手を出す気分でも雰囲気でもないし、今はキョーコと別れずにすんだことに感謝しよう。
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駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。本当にすみませんでした。しかも、短いから「後編の後編」でいけましたね。
ごめんなさい。