ああ、副題に恋バナと添えておけばよかった…←グチグチしつこい(-_-;)

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「…ななみさんが教えてくれたんだ。……最上さんは、その人のことを、本気で真剣に想っているんだって。その人のことをななみさんに話している時はすごく可愛い顔をするんだって。」

蓮は感情を押さえたまま、噛み締めるように言葉を綴っている。

(ななみさんたら、なぜになぜに敦賀さんにそのような情報を………!?そして、あの三つ巴は、一体なんだったのですか…!?)

キョーコは、蓮の様子を気にする余裕はなく、顔も既に埴輪と化していた…………のだが…

「それを聞いて…俺……。そんなことはあり得ないと自分に言い聞かせて。でももうどうしようもなくて。もしかしたら、もしかしたらって。どうしようもなく期待してしまったんだ。君の片想いの相手は…。ふーっ。君が、…もしかしたら、俺を…って…。…っはぁー…でも、そんな夢みたいに幸せなこと…。でも、それにその期待が違っていたら、君はななみさんに連れていかれてしまう。俺じゃない別の男のところに。彼女、最上さんの片想いの相手に告白しろって焚き付けにきたって言ってたから。…それを想像したら、怖くて……。さっきは、とにかく君をななみさんに渡したくなくて、気がついたら走り出してた。」

車内灯は消灯したままだが、駐車場の外灯が点灯したため、目が徐々に慣れてきた二人は、お互いの表情がほとんど見えるようになってきた。

キョーコの反応をうかがうようにしていた蓮だが、再びハンドルに突っ伏した。

「……っ。っあー!!もうダメだ!」

耐えきれないといったふうに、急に蓮が大きな声をあげた。

キョーコは口を真一文字にしたまま、目だけパチクリとしてしまう。

キョーコと真正面に向き合って、一気に破顔した蓮が、それはそれは嬉しそうに言う。声が完全に笑っている。

「もう、君はそんな顔をして。」

そんな顔?いったいどんな顔のことですか?と、キョーコは思う。

「ねぇ、もう白状しているようなものだよ?」

白状?何を?と、キョーコは思う。

「くす。ああ。君はほんとに。思ったことが顔に出すぎだ。」

蓮の蕩けるような視線に耐えきれず、キョーコは目線を反らしたかった。が、しかし、蓮の言葉にキョーコも「どうしても期待して」しまっていた。もしかしたらもしかしたらもしかしたら。そんなことはあり得ないと、あの敦賀さんがまさかまさか私なんかに……でも、でも。

「…そんな可愛い顔で、期待の籠った目で見つめられたら、もう我慢なんてできない。俺のいいようにとってしまうよ?」

そう。キョーコの顔は、もう埴輪なんかではなかった。

(敦賀さん、敦賀さんこそそんなことを言って。しかもそんな顔をしたら、私も自分のいいようにとってしまいますよ?七海さんに、散々言われてきたんです。『キョーコちゃんは両想いのはずだ、間違いない。』って。あれだけ言われ続けて、敦賀さんからもだめ押しのお言葉。私なんかでも、身の程知らずにも期待しますよ?)

キョーコは、湯気が出そうな程に顔を真っ赤にさせて、大きな目に涙をためたまま、ふるふると震えている。さらに熱を込めて、蓮の瞳を見つめ返した。

そうっと、蓮はキョーコに顔を近づけて、キョーコの唇に、自分のそれを押しつけた。

キョーコが逃げずに蓮の唇を受け入れてくれたことで、蓮は嬉しくてそのまま口内まで堪能しそうになったが、キョーコの気持ちはそういえばきちんと聞いていないと思い直して、断腸の想いで一度唇を離した。

キョーコは、ぽうっとしてキスの余韻に浸っていた。その顔が扇情的で、蓮はついたまらずに、震える吐息を漏らすキョーコの口を、再び柔らかく塞いだ。

キョーコの上下の唇をゆっくりと食みながら、唇を擦れ合わせて話す。

「You'd sly.But the more I think your lips if to confessin agent.Likely melt the brain with hot and sweet.Kyoko-chan,I love you.I'm love you.(ズルいな。君の唇はまるで自白剤かと思うほどだ。甘くて熱くて脳髄が溶けそうだよ。キョーコちゃん、愛してる。愛してるんだ。)」

しかも、思わず母国語まで飛び出してきた。つい先日までハリウッドでどっぷりと母国語に浸かっていたのも手伝ってか、気持ちの昂りがそのまま言葉となって現れた。

そんな蓮の、脈絡無く出現した英語だが、キョーコには大変耳障りがよく、ただぼんやりと聞き入っていた。








その後、一通りキョーコを堪能して少し満足した蓮は、キョーコを開放して再び車のエンジンをかけた。


キョーコは、蓮のマンション下のスーパーの駐車場に着いて、ようやく覚醒する。それと同時に一心不乱に買い物と夕食作りに専念した。気が緩むと憤死しそうなので、それはもう必死になって作り、あまりの速さに蓮を驚愕させた。

そんなキョーコを気遣って、蓮は努めていつも通りの、甘さの無い空気を全力で作り上げてみせた。


その甲斐あってか、キョーコは少し落ち着きを取り戻してきた。そうすると、今度はある疑問が気になってくる。

キョーコの疑問のうちの一つ、エントランスでの三つ巴については、蓮の方から説明があった。世間て意外と狭いよね。とか、社さんと七海さんて雰囲気似てるよね、と和やかに会話が弾んだ。


夕食後にキッチンを片付けながら、ややリラックスしてきたキョーコは、最大級に不思議に思っていたことを、横で同じように作業をする蓮に問いかけた。

「あ、あのっ、実は気になっていたのですけど…。どうして、七海さんの言う、そのぅ〰〰……わ、わ、私の片想いの相手が……貴方自身だと思ったのです……か?」

ん…、そうきたか…と苦笑した蓮はしばし思案したあとにぽつりぽつりと話しはじめた。

「…もう今だから白状しちゃうけど。実は社さんに協力してもらって、君の仕事のスケジュールをかなり正確に把握させてもらっていたんだ。できるだけ君にアプローチしたかったし、他の男の付け入るスキを与えたくなかったし。そういう、男としての下心があって。勝手なことして、ごめんね?」

ばつが悪そうに言う蓮に、ええ!?そうだったの!?、とキョーコは内心かなり驚く。

「で、なぜ俺がわかったかってことだけど…。
君の恋ばなを聞いただけで、ななみさんに『両想いだ』と確信されていたということは、ある程度の期間、それなりの密度でその男性と関わっていたことになる。そうでないと、話題も提供できないだろう?
そこで、だ。君は仕事以外は基本的に、学校とLMEの養成所とだるま屋の手伝いで多忙だ。君の数少ないプライベートは、意図的に俺が絡めとってきたから、俺の知らないところで、他の男のアプローチを単発で受けることがあっても、ななみさんが誤解できるほど、持続的かつ長期的に君と関わっていたのは俺以外にいるはずがないんだ。それに、俺の言動は君への気持ちで溢れていた。君は曲解思考の持ち主だからわからなかったかもしれないけれど、普通の女性が聞けば、絶対に俺達は両想いだと判断すると思ったんだ。」


蓮が白状している内容を聞きながら、なんて恥ずかしいことを尋ねてしまったのだろうと、キョーコは後悔していた。蓮に、改めて「告白をねだって」しまったような申し訳なさと、自分がされてきていた蓮からの束縛を感じてしまって、羞恥心でキョーコは目眩がしてきた。

蓮の白状話はなおも続く。

「君のことだから、相手の男の名前はななみさんには言ってこなかっただろう、と予測した。だから、ななみさんの話をエントランスで聞いているうちに、もうどうしても君の想い人は俺しかいないって。…99%ね、図々しくも確信してしまって。でも、残り1%に恐怖した。それはもう、1秒だって待てないくらいに怖かったんだよ。その1%が。」

キョーコは、蓮にそこまで思わせているのが自分なのかと驚きもあり。いつの間にか蓮にふんわりと抱き締められていて、体温は上がる一方だ。

またもや愛の言葉が降り注ぐのかと一瞬身構えたキョーコだったが、蓮からの言葉は意外なものだった。

「ね、キョーコちゃん?ななみさんとはこれからも仲良くね?」

「へぅ?」

「な、か、よ、く、ね?ハイ、返事は?」

蓮に、幼児に言いきかすかのように優しーく言われて、なんだかむず痒くなるが、「ハイ。」と頷いておいた。

蓮は満足そうに頷きながら、頭の中では少し打算的なことも考えていた。

(ななみさんとの仲の良さは妬けるけれど、最上さんを馬の骨から守ってくれそうだからな。それに……)

「それからね、俺とのお付き合いははじまったばかりでしょう?キョーコちゃんてこういうの、初めてだよね?」

「は、はい。」

真っ赤になりながら、質問を肯定で返すキョーコに、返事はわかっていたもののそれ以外の返答は許さないというていの蓮。


「あのね、これから先、キョーコちゃんにはちゃんと、分かりやすいように俺の気持ちを伝えていくつもりなんだ。どれだけ君を大切に想っているのかを、いやと言うほどね………。…でも…、時には、物理的な時間や距離、それに外野が、君の心に猜疑心や不安を植え付けるかもしれない。俺の気持ちを疑って、俺から離れようとするかもしれない。そんな時のためにね、ななみさんにはたくさん話しておくといい。俺とのことや君の気持ちを。君の心のわだかまりの全部が解消されるわけではないだろうけど…。彼女はきっと君を守って、そして君の背中を、それに、俺の背中も押してくれると思うんだ。」

キョーコは、蓮の言わんとする内容が全ては理解できなかったが、蓮の必死な、キョーコを想う強い気持ちを感じて、何度もコクコクと首を縦に振った。

キョーコの反応にふわりと笑った蓮は、あ、と呟いた。

「そうだ!ななみさんね、俺達の接吻&抱擁を見たがっていたんだよ。」

「…せっっっ!?」

「俺を焚き付けてくれたお礼に、いつでも応じますよ、濃厚なやつをたっぷりとお見せしますって、彼女に伝言を伝えておいてくれないかな?…と、いうわけで、練習しよっか?」

満面の笑みで蓮は言い放ち、そのままキョーコに濃厚な接吻&抱擁をお見舞した。

「うぅん〰〰〰っっ!〰〰〰〰〰〰」








数日後、キョーコは七海と会い、ことの顛末を報告した。七海はおめでとうよかったねと、とても喜んでくれて、キョーコは本当に嬉しかった。やはり七海との恋バナは、恋の良さをより感じさせてくれるものだな、とキョーコは改めて思った。

そこでふと思い出し、蓮に言われたことを七海に伝えてみる。

「…うん、そうね。恋愛というものは、純粋に好きって気持ちだけで続けられるものではないものね。敦賀さんの言った通り、相手にどれだけ好きだと伝えても、それだけじゃダメなのよ。これからきっと色々な壁に当たると思う。勉強やスポーツ、仕事も、みんな基礎や応用編を学んだりするでしょ?先生や、本とかの媒体から。恋愛は、究極のコミュニケーション技術を要するのよ。だって一対一で、二人だけでその在り方を構築していくのよ?とてもとても難しいことよね。一筋縄ではいかないわ。キョーコちゃんはそれを忘れないで?なにかしらうまくいかなくなって、「敦賀さんとはもうお終まいだ」みたいな結論に勝手に行き着く前に、まずは2人以上に相談するって決まりを立ててもいいわね?ほら、この仕事、いきなり上手にはできなかったでしょう?いっぱい基礎を積んで、悩んで誰かに相談して、やっとここまで来たんじゃない?それにいつまでたっても勉強と応用の繰り返しよね?完璧なんてない。敦賀さんとの恋愛もそう。ただ好きってだけじゃ躓いて、敦賀さんが示してくれている気持ちがみえなくなるのよ。だからね、これからも恋バナ続けましょ?」

朗らかに優しく笑いかけてくれる七海を見つめて、(七海さんてほんとに素敵なお姉さんだなあ)とキョーコはほにゃりらしてしまう。

「あ!思い出しちゃった!」

七海の突然の大声にキョーコが驚いていると、

「熱い接吻&抱擁!見たかったなあと思って!惜しいことしたよぉ。」

「っふぎゅっ!!」

赤色と青色を行ったり来たりするムンクと化したキョーコ。

「…っぷ!あはは!やだ!冗談に決まってるでしょ〰!」

七海が笑い飛ばしてくれたので、ホッとすると同時に。蓮が、接吻&抱擁を七海に見てもらおうと提案していたことだけは、この先も白状すまいと、固く心に誓うキョーコなのでした。




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言わずもがな……英語の文法は突っ込まないでやってください。人生において、一番苦手な教科でした…。

結局、書き出すと長くなる長くなる長くなる。文章が長くなる病?