よく私は旅と旅行は違う!と、主張しています。

しかしながら、それではどう違うのかと言うと中々言語化しきれていないのが現状です。

感覚として、間違いなく違うものという確信はあるのですが、自身の言語能力の貧弱さが悩ましいところです。

ですが旅と旅行の違いの中の一つの要素として「開拓」の精神の有無は重要ではないかなと思っています。

何もないところから、もしくは埋もれているものを改めて掘り起こす。

そして新しい土地、物、考え方、価値観などなどを見つけることは旅を色づける大きな要素と言えるでしょう。

毎度前置きが長いですが、今回はそんな開拓の結果今もなお価値を残し続けている場所の紹介です。

大王わさび農場は長野県安曇野市にある観光地の一つです。

あまり人の多いところには出向かない私ですが、ここは綺麗で気持ちよく散策するだけでも楽しいので以前は何回か行っていました。

もとは深澤勇市さんが始めた開拓でした。

橋のない川をじゃぶじゃぶ渡り、土地を手に入れるために2年も交渉し、資金調達に苦労し…

この広大な農地を開拓したようです。

そこから200人にものぼる人夫の方々を率いて農場を切り開いたそう。

当時の開拓者、その事業を引き継いできた方々は延べ40万人にもなるそうです。

その途方もない労力と努力のお陰で、今では沢山の爽やかなわさびが供給されていることに感謝しかありません。

ここを楽しむポイントは散策や農場見学、グルメに歴史に伝説にと長くなってしまうのでその中から特にこの農場の名前の由来となっている魏石鬼八面大王(ぎしきはちめんだいおう)の伝説について少しだけご紹介します。

その昔、全国統一を目指した大和朝廷によりこの地の住民は貢物や無理難題を押し付けられ、大変苦しんでいたようです。

そんな中安曇野に住んでいた八面大王は朝廷軍と戦い続けました。

結果敗れてしまいましたが、朝廷軍は八面大王のあまりの強さに復活を恐れ身体をいくつかに分けバラバラの場所に埋めたといいます。

その中の一つ、胴体が埋められたという塚が農場内にあったことから大王わさび農場と名付けられたようです。

敗れた、そして言ってしまえばお墓なのですがそれを尊重し、さらには農場の名前にまでしています。

今でも、この地で八面大王は英雄として語られます。

それほど人に慕われる名士だったのでしょう。

その一方で、八人の盗賊だった説、悪鬼だったため討伐された説など真反対の印象の伝説も残ります。

これを立場の違い、口伝ゆえの内容の歪み、そもそも別の人物の話など、どんな理由であるか考えてみるのも楽しみ方の一つかと思います。

補足ですが、西のほうに20分程のところに八面大王足湯という綺麗で無料の足湯や、温泉もあります。

こちらでのんびり歴史に思いを馳せてみるのもいいかもしれません。