天木直人氏のブログより

「空自の輸送支援活動は不要になる」と発言したマリキ首相

「空自の輸送支援活動は不要になる」と発言したマリキ首相

   連休明けの国会で真っ先に野党が追及する問題はこれで決まりだ。5月6日の大手各紙は殆ど取り上げていないが、イラクのマリキ首相が4日、共同通信との単独会見で、イラクでの航空自衛隊の輸送支援活動について、需要はながく続かないとした上で、「今年中にも日本の部隊は必要なくなる」と言明したという。
   これを正面から報じたのは私の見る限り毎日新聞だけだ。日経新聞は皮肉にも、政府がイラク復興支援特別措置法改正案の採決を週明けにも踏み切る、という大きな記事の下に、一段の小さな記事で「年内にも自衛隊は不要になる」というマリキ発言を掲載して滑稽ぶりだ。
   安倍首相が国民投票法案を強行採決し、集団的自衛権を可能にしようとしている状況にあって、連休後の政治論争は改憲問題に集中しつつある。しかし改憲が具体的に国民の前に提示されるのはまだ先だ。そもそも改憲論議のきっかけは日米軍事同盟強化の必要性であり、そのさらに根本にあるのがイラク戦争に追随したわが国の自衛隊派遣の是非がある。
   イラク戦争から4年がたち米国のイラク攻撃が間違いであった事は世界が認めるに至った。残り一年余のブッシュ大統領の最大の政治課題はイラク撤兵問題である。ブレア首相はイラク戦争支持という最大の汚点を残して支持率低下のままに英国政治の舞台から去ろうとしている。唯一日本の首相だけが、このイラク戦争を今でも正しかったといい続け、自衛隊のイラク派遣の正当性を繰り返す。
   そしてイラク派遣の正当性の最大の理由として小泉、安倍政権が繰り返し強調してきたのがイラクから要請されているというものである。その理由を言わんが為に、日本政府はあらゆる工作をしてイラク関係者に喋らせてきた。しかしそのイラクの首相が5月4日の時点でとうとう「需要は年内にもなくなる」と明言したのだ。
   それにもかかわらず安倍自公政権は、イラク派遣を更に2年延長する法案を成立させようとしている。野党はこの発言を真っ先に国会で取り上げるべきだ。政府は今度こそ返答に窮するに違いない。