「お前も野球部?」
高校の入学式で隣に座っていた坊主頭の奴が気安く話しかけてきた。
それが小泉との出会いだった。
俺も坊主頭だったので多分この頭を見て野球部だと思ったのだろう。
横に座る坊主頭の奴を俺も気にはなっていたが、野球部となればそいつはライバルになる。
そう易々と仲良くなってはダメだと、俺の中に変なプライドがあった。
が、小泉のその親しみやすさからそんな変なプライドなどすぐに何処かへいってしまっていた。
「レギュラーで甲子園行かないと意味はないやろ。
そう考えたら一番ここが可能性高いと思ってな」
その小泉と野球について話していた時の事だ。
別にその答えに興味はなかったがふと話しの流れで、なんでこの高校に進路を決めたのか
を小泉に聞いてみたらそう返ってきた。
さらに小泉はこう続けた。
「明星みたいな甲子園常連校へ行ってもレギュラーになれんやろ」
俺と同じ考えだったが、小泉の最後のその一言はただ強豪校へ行くのを逃げているだけの様な
言い訳に聞こえた。
「おまえはなんで?」と小泉が聞き返してきた。
小泉と同じ理由を言いたくなかった。
「なんとなくかな」
そう答えるしか俺は出来なかった。