虹色の羽を持つ鳥


虹色の羽をを持つ鳥
世にもめずらしい
虹色の羽を持つ鳥
その大きな瞳を
きらきら輝かせている
この大空を
どこに飛んで行こうかと 


虹色の羽を持つ鳥
大空に恋焦がれる
眩いばかりに白く光る雲
鮮やかに浮き立つどこまでも青い空
あの青空に恋焦がれて


あの青い空に溶け込んで
どこまでも好きなところに飛んでいこう
虹色の羽
七色に輝くこの羽
どこまでも どこまでも
あの青い空を飛んでいったのなら
きっと この世界は
この七色の光を受けて
きっと ますます
輝くことだろう


虹色の羽を持つ鳥
心をときめかしている
どこまでも青い空に恋焦がれて
そのときめきに はやされて
心臓まで いそがしく
めいいっぱい 伸縮を繰り返す


虹色の羽を持つ鳥
胸がいっぱいで
目には
希望の泪すら浮かべている
どこまでも青いあの空を
自由に飛び回れる喜びを感じて


熱い熱い血が
虹色の鳥の体中を駆け巡り
虹色の羽
心なしか
さらに熱を帯び
輝きをましてゆく


“ ズキューン ”
からりと晴れ渡った空に
けたたましく鳴り響いた銃声
虹色の羽
人間の銃に
撃ち抜かれた


虹色の羽を持つ鳥
高い高い青空から
真っ逆さまに落ちてくる
青い空に溶け込んでいた
針の先程のその姿は
見る見るうちに
大きくなってゆき


そして
“ ドサッ ” という
重い…  鈍い…
大きな音をたてて
生い茂る緑の雑草の中へと
墜落した


銃を片手に
人間達が駆け寄ってくる
今の獲物は何であろうかと
期待に胸を膨らませて


雑草の茂みから
七色の弱々しい光が
かすかに空へと
解き放たれている


雑草の緑の中に横たわる
虹色の羽を持つ大きな鳥を見つけて
人間達は大喜び
“ 今日の獲物は
 世にもめずらしい
 虹色の羽を持つ鳥 ”


人間達は喜び勇んで
その鳥を連れて帰る
この鳥は殺さずにおこう
世にもめずらしい鳥だから
水を与え 食べ物を与え
世話をしてやろう


虹色の羽を持つ鳥
人間達に捕らえられた


その晩
どこまでもどこまでも青い空は
激しく激しく泣いた
激しい激しい雨が
とどまることを知らず
この大地を
激しく激しく打ちつけた


あんなに大空に恋焦がれているのに
虹色の羽を持つ鳥
くる日もくる日も
悲しみの声で泣く
大空に恋焦がれる
悲しみの歌を


人間達は一向に気にしない
虹色の羽を持つが歌う
大空に恋焦がれる悲しみの歌を聞いて
“ この鳥は
 羽も虹色の美しい羽だが
 鳴き声も それに劣らず
 美しい 虹色の声である ”


ビール片手に
満足気に 虹色の羽を眺め
虹色の声で耳を潤しては
高らかに笑う


人間達は
虹色の羽を持つ鳥に
水を与え 食べ物をやり
世話をする
そして
虹色の羽を
心ゆくまで眺め
虹色の声で
心ゆくまで
自らを潤す


銃に撃ち抜かれた
虹色の羽の手当ては
ろくにはしない
傷が癒されて
飛び立っていってしまうと困るから
傷が癒されて
飛び立っていってしまったら
美しい心慰みがなくなってしまうから
それが いやだから


虹色の羽を持つ鳥
もう 何年も 何年も
悲しみの歌を歌い続けている
どこまでもどこまでも青い
あの青空に向かって
かつて
あんなに恋焦がれた青い空
窓越しに見る青い空は
あんなにも遠い


あんなにも遠いけれど
虹色の羽を持つ鳥は
歌うことをやめない
青い空を恋焦がれる思いは
死ぬまで 消すことができないものだから


虹色の羽を持つ鳥
それはもう
何度も 何度も
死の淵まで行き
あと一歩で
永遠の世界に行きかけた
この世とは違う
永遠の世界へ
… … 激しい
激しい悲しみに
激しく激しく
押し潰されたから


けれど
虹色の羽を持つ鳥は
希望の歌を歌う
全身悲しみの血で染まった
その体で
希薄になった体中の力を掻き集め
力を振り絞って謳う
希望の歌を


恋焦がれる青い空を見上げて
恋焦がれる青い空を見つめて
虹色の羽を持つ鳥の
恋焦がれる青い空
あの空まで届く声は …
きっと …      きっと …
希望に満ちた
虹色の声だから


どこまでもどこまでも青い空
その青い空は
虹色の羽を持つ鳥の
その虹色の声を聞きつけて
高い高い所から
舞い降りてきて
手を差し伸べようとする
“ 君が来るべき場所は
 君がいるべき場所は
 ここだよ ”    と言って


どこまでもどこまでも青い空の
その声は
虹色の羽を持つ鳥の所まで届いて
虹色の羽は
俄かに
鮮やかな光を帯び初める
空ろな悲し気な瞳がまた
かつての輝きで
光り初めた


人間達は
虹色の羽を持つその鳥の
鮮やかな光と輝きに
怯え始めた
この鳥を
いつまでも自分のものにしていては
いけないのだ


何故かそういう考えが
芽生え初め
そして
人間達を怯えさせる
この鳥をここから
逃さなくてはいけない


人間達は
虹色の羽を持つ鳥の
その羽の治療に
勤しみ始めた


虹色の羽を持つ鳥
恋焦がれる青い空に向かって歌う
恋の歌を


私たちは 近いうちに
きっと
見られるだろう


虹色の羽を持つ鳥が
力強く
一直線に
どこまでもどこまでも青い空
あの青い空に向かって
虹色に輝く翼を
大きくはためかせて
急角度で飛んでいく
その姿を


そして
虹色の羽を持つ鳥の
大きな輝く瞳は
どこまでもどこまでも青いあの空を
限りなく美しく輝かせるだろう
虹色に光るその羽は
私たちが踏みしめるこの大地を
限りなく美しい光で包むであろう



1999.9.7.