行くすべを 誰も知らぬ 闇の世界
前ぶれもなしに
眠りが我らを誘うこともある
千の光が矢のように…… 突然
…… まるで潮が満ちるように
音もなく こちらに 押し寄せてくる

タタン どこかに天使が舞い下りた
光かすかに照らされた 薄暗い湖に
幾重にも広がる 水輪

タタン またどこかに 天使が
今度は まだ明けやらぬ 草叢
七色に光る羽 そっと隠れた

何一つ見えぬ 闇の世界
萬の光が 射貫いた時
そこに あらわれたのは
幻の…… 故郷…… ?

わたしは 小高い丘に立ち
体は水のように透明で ほどよく冷たい
目をつむり スッと背筋を伸ばし
わたしの左肩 後方
聖なるこころ 白亜の教会

わたしは 旋回し
踊りながら すべるように
丘の坂道 下りてゆく

これほどの快感 これまで
味わったことがあったろうか

わたしは まるで
全身の力を すべて抜き去り
母なる海に 己が身をすべてゆだね
波のまにまに
ゆられ ゆられしているが如く

わたしは 気持ち良く
海の 底へ 底へ 沈んでゆく

わたしは 靴を脱ぎ
両手に持って
なおも 小高い丘を
踊りながら 旋回し
下へ 下へ 下ってゆく

途中 途中の道
はなやかな人たちが
はなやかな衣装に 身を包み
楽しげに 談笑している

わたしは 踊りながら
旋回しながら
その人たちの間を
すべるように 縫ってゆく

闇の世界は わたしを
前ぶれもなく ユートピアに誘い
闇のわたしは ユートピアの世界
気持ち良く 沈み込み

闇の世界 この上ない幸福
今も思い出しては 心を潤す



by ミミchan