――夜道――






夏の夜の帰り道。







背後から近寄ってくる影。







女子校生は恐怖に怯えながら振り返った。







「なんだお父さん」



「なんだおまえか」






そう言った父は見慣れぬトレンチコートを着ていた。


おれはもうだめだ…置いてってくれ…


おまえは悲しみを乗り越えて、先へ進むんだ…






痛っ!おい!だからって踏んづけていくなよ!


ねこがにゃあと鳴いたから



女の子はご飯を食べることにした。





ねこが大きなあくびをしたから



女の子は学校へ出かけていった。





ねこがとなりで丸くなったから



女の子はその毛をそっとなでていた。






幾日が過ぎて



ねこが動かなくなったから



女の子は途方に暮れていた。





彼女はハーモニカを取り出して



曲にならないまま吹きつづけた。



途切れがちのその音は



泣き声よりも悲しげだった。

――勝手にアフレコ――






懸命に追いかける刑事






(待って! 待ってくれ! ぼくはきみのために胸が張り裂けそうだよ!)






必死で逃げる犯人






(いやよ! もう追いかけないで! あなたの束縛はうんざりなの!)
――リモコン――





「このテレビも買い換えどきかもしれんな」






そうつぶやきながら、テレビに向かいエアコンのリモコンを操作する父。






「いやねえお父さん、それじゃないでしょ」






と、たしなめ顔で電話の子機を渡す母。
――不要品――







「古くなった家電製品、パソコンなど、ご家庭で不要になりましたもの、なんでもお引き受け致します…」





廃品業者の軽トラックが目の前を通り過ぎた。





荷台に膝を抱えた隣のご主人が乗っていた。

――銀婚旅行――



あるホテルの一室。



老年の夫婦がくつろいでいる。



長い時間を共に過ごしたふたりは、
この旅行が最後になるかもしれないと、出掛けてきた。




夫は連れ添った妻の肩をやさしく抱きながら、
遠くを見るように目を細め、呟いた。




「昔はああやってよく遊んだものだな」





「そうね。楽しかったわ」




妻も同じように目を細め、画面を見つめた。




テレビは有料チャンネル。




モザイクがかかっていた。

――雨のコンビニ――





突然降り出した夜の雨。




コンビニのレジに男が買い物カゴを置いた。




レジに立つ綺麗な女性が愛想よく応える。




「今すぐ使われますか?」



「え…」




絶句した男のカゴの中にはビニール傘。




その陰に家族計画。