実家で仕事をしてたら、固定電話が鳴った。

 

電話に出たばーちゃんが戸惑ってるので、電話を代わったら、“オレ“からだった。

 

いやね、これふざけてるわけじゃなくて、ホントにオレの名前を名乗ってんだよ。

 

詐欺ですよ。オレからすれば“オレオレ詐欺“じゃなくて、“オレの名前詐欺“。

 

ご丁寧に「コロナにかかっちゃってさ」なんて言って、咳までしちゃって、声の違いを誤魔化そうとしてる。

 

でもね、そんなこと言われたって誤魔化されないぜ! だってオレ、本人だもん。

 

だけど、あんまり堂々とオレの名前を騙るもんだから、一瞬「あれっ? じゃ、オレって誰なのさ?」ってなったよね。

 

仕事の途中だったから、あまり相手もできなくて、オレはちょっと怒りをぶつけるのが精一杯だった。

 

おい、おまえ! いつになったら貸したカネを返すんだよ! 困った時ばかり連絡してきやがって! 今から取り立てに行くから

な! どこにいるんだよ?!

 

オレが”オレ”を怒鳴りつけると、電話は切れた。