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→「①遺言書あった。遺留分侵害なかった。でもモメた件」より続き
(「自分」はクセが強い?)
「自分」がいうにはこういうことでした。
亡義父はもともと大地主で、義母はその不動産の大半を受け継いだ資産家である。
義母には長女、二女と長男がおり、このうち長女が「自分」の妻である。
長男は既婚で長男夫婦が義母と同居している。
長女と「自分」との間には子供が2人いる。
二女には子供が1人いる。
長男には子供がいない。
なにぶん不動産が多いもので、あらかじめ遺言書を作りそれぞれの不動産の処遇を決めておきたいというのが、義母の考え。
不動産に詳しい「自分」が義母の負託を受け信託銀行に遺言作成の相談に来ている。
「ははあ。そうですか。それでご相談に見えられたのですか。では、お義母さまの面倒を見られているご長男さまが不動産の面倒も見られると」
「自分はそうは思いません」
「でも、ご長男さまがお義母さまの生活の面倒を見ているんですよね」
とたんに「自分」の色白い肌がもも色に上気しました。
「じ、じ、自分は、あ、あ、あの程度のことで長男がお、お義母さんの面倒を見ているとはと、と、とても思いません。あ、あの男がやっていることは、お、お、お義母さんをうま、うまくダマくらかして、いいようにカ、カ、カネを巻き上げているだけです。じ、自分が」
「あああ、はあ。はあ。わかりました。承知しました。お客さまが不動産にお詳しいというのは、そのような会社にお勤めだったということですか?」
「自分」はとたんに相好を崩します。
「ハイ!自分は、」
自分は胸を張りました。
「宅地建物取引主任者(当時。現、宅地建物取引士)の資格を持っております。自分が」
「・・・・・」
「あ、はい。えーと、あの、実務経験がおありとか」
「自分は不動産の実務経験はありません。有資格者であることで知識・スキルは十分であると考える次第です。自分が」
私はプロとして初見の方を前に表情を崩すことはしません。
しかし、宅地建物取引主任者の資格を持っているのみを持ってして不動産の専門家気取りとは。
有資格者の方にはゴメンナサイ、ですが。
多くの「資格」と言われるものは大抵その業務を行うにあたっての、最低限の知識水準をはかるためのものと私は理解しています。
信託銀行では不動産の仲介業務を銀行本体で行っています(信託兼営銀行以外の普通銀行では関連・関係会社などがその業務を担っています)。
このため、いち担当として不動産仲介業務に携わった経験からですが。
資格試験では、
前面道路が私道か、市道か、県道か、国道か、管理幅員をどう調べるかが問題になることはありません。
前面道路に埋設されている上水管や下水管の材質や口径をどう調べるかは問題になることはありません。
前面道路から背景の私有地へ上・下水道の引込管が埋設・通過している可能性を疑う質問はありません。
つまり、資格を持っているだけでは実務に精通しているとは言い難いと私は考えています。
・・・との私の本音を、このいささかエキセントリックなところがありそうな「自分」にぶつけた場合、かなりの確率で面倒くさいことになりそうだったので私は先を続けさせました。「お義母さまはどのような内容の遺言書をお望みなのですか?」
(この項続く)
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