発音を褒められたいが為に、[]や[ɪ]の前に[ʃ](esh)がある語までもこれを[s]に直していた経験のある方がいらっしゃるかもしれない(これに関しては、今井邦彦著『ファンダメンタル音声学』Page 55も見よ)。

 

 具体的に考えられるケースとしてはshe(Pronoun:彼女)やsheep(Countable:羊)、sheet(Countable:紙の1枚、薄板)、sheen(Uncountable:輝き、光沢、艶)などがsea(Countable:海)やsee(Transitive:見える、会う)、seep{Intransitive(seep outの形で)しみ出る、(seep intoで)しみ込む)}、seat(Countable:席)、scene(Countable:場面、状況)などと混じってしまうというモノだろう。ここまで挙げた語は[]の前に[ʃ]が来る語の例である。僕自身は混じってしまった経験がないのでどのようにも申し上げられないが、「[]や[ɪ]の前に[ʃ]は来ない」と教わる場合(そのような方には、本記事へのコメントを切にお願いする)が原因として1つ考えられる(Ibidem)。この教え方については『ファンダメンタル音声学』に於いても指摘されている通り「明らかな間違い」であること(id est:語によって[]や[ɪ]の前に[ʃ]の来るモノがあること)を僕もまずここでしっかりと申し上げておかなくてはならない。例示した語のうち、sheen(艶)であれば[ʃíːn]、scene(場面)は[síːn]と言われ、各(オノオノ)異なる語だ

 

 また、[ɪ]の前に[ʃ]が来る語にはshift(Transitive:移す、音を推移させる)、shin(Countable:向こう脛)、shingle(Collective:海岸・河岸の小石)などがあり、これらがsift(Transitive:ふるいにかける、吟味する)、sin(Countable:道徳上・宗教上の罪)、single(Adjective:1つ1つの、1人用の、単式の)と混じってしまうというものだろう(Ibidem)。ここに挙げた語のうちshift(移す)であれば[ʃɪ́ft]、sift(吟味する)は[sɪ́ft]と各(オノオノ)言われる。「本当に良い発音」を身につける為にはこれらをきちんと区別した上で用いることが必ず求められる。勿論、「[]や[ɪ]の前に[ʃ]は来ない」と教わっていなくてもどこかでこの意識が働き、混じってしまうケース(そのような方にも、本記事へのコメントを切にお願いする)もあるかもしれない。そのような方は、本記事及び『ファンダメンタル音声学』(Page 55)をじっくりとお読み頂いた上で、同書にある例及びここに例示した語について(オノオノ)ペアで用い発音の練習を行うことが改善に向けた第1歩である(exempli gratia:sheep―seep, shift―sift, sheet―seat, et cetera)。これを繰り返し(1ペアにつき、少なくとも2度ずつ)行うことにより、例えばsheepとseepとは各(オノオノ)異なる語である、と自然に認識できるようになる。

 

 「[]や[ɪ]の前に[ʃ]は来ない」と主張する方々にここで改めて申し上げておく。[]や[ɪ]の前に[ʃ]が語によって来るモノがある。その為、『ファンダメンタル音声学』にもあるように例えば[ʃíːt](sheet)と[síːt](seat)とは(オノオノ)異なる語であることを伝えるのが正しいのである(そこには、shipとsipとの例もある)。