ここでちょっと、俺が過去に遭遇したことのある「心霊現象」について話そう。

春先のあたたかくなり始めたころ、その日は連日の残業の疲れがたまりにたまり、疲れ果てていた。
そのせいか、布団に入っても眠いのと同時に眼が冴えるような、不思議な感覚になった。
そして、体が床につかないような浮遊感を味わいながら眠りに落ちた。

やがて(と言っても何時間も経っていたが)、変な暑さと重さを感じ目を覚ますと、全身が何かに縛られたように動かなかった。

(なんだ!?なにがあった!?)

なんとか自由な(気がした)首を左右に動かしてみても、動いた気がしない。

(強盗か!?)

そう思うと、目を開けるのがとたんに怖くなった。目を開けそこで強盗と目が合おうものなら殺されるかもしれない。
そのうち俺は眠ってしまった。
朝になって起きてみると、俺は縛られてもいなかったし、部屋からなにもなくなったものはなかった。

次の日。
昨日の出来事のせいで、少し不安を感じながら眠りに入ると、案の定というべきか、深夜に覚醒し、やはり体が動かなかった。
しかし、連日の現象に、強盗ではないだろうと見当をつけ、今度は意を決して目を開けてみた。

すると、そこにはこちらの顔を覗き込む何者かがいた。

性別も年齢もわからない。

なぜなら、全体に白くぼんやりとした姿形をしていて、顔も白く塗りつぶされていたからだ。(それが、俺が寝ぼけていたためか、その者がそうだったからかは、わからない。)
しかし、前かがみになってこちらに顔らしきものを向けている。俺は声を出せなかった。
相手は何もしてこないが、じっとこちらを見ているようだ。
しばらくすると、静かに玄関の方に向かい扉に手をかけた(そう見えた)ところで一度こちらに振り返った。

その時、俺は体を起こすことができた。
声も出せそうな気がした。

「誰ですか?」

出た。

にやり

そう笑った気がした。次の瞬間そいつは出て行った。

これが俺の体験である。
まあ、いわゆる「金縛り」である。

(続く)

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