「あなたのいない人生なんてありえない」
「あなたは僕のすべて」

愛情を、特に、自分にとって、相手がどれほど重要な存在を伝える表現は様々だ。

上にあげた2つはそのごく一部と言っていいだろう。

では、(この2つの言葉に限って話をするが)9この言葉を使う人はその意味をどれぐらいわかっているだろうか?

「そんなの決まってる。『その人が大事』ってことじゃないか」

と思うかもしれない。

しかし、そうではない。俺が聞きたいのは、「文面通りの意味はどうか?」と言うこと。

「とにかく大事って言いたい」などと言う大雑把なとらえ方でなく、英語を逐語訳するように言葉の意味を見ていったらどうなるか?それを意識してみよう。

結論を言うと、上の2つに限っては

「あなたがいなくなったら死ぬ」

と言う意味になる。

当然、間に受けた場合の話だから、この「死」は、大げさでなく、掛け値なしに、なんのくもりもなく「死」だ。

「あなたがいない人生なんてありえない」と言うなら、「あなた」がいなくなった後、人生が存在してはおかしい。
「あなたは僕のすべて」と言うなら「あなた」がいなくなるということは、「僕」の全ても失われるということなのだから、そこで命が残っていてはつじつまが合わない。

俺は、中原中也の真意はここにあるのではないかと思う。

彼は、上のように「論理的に意味を突き詰めれば『愛するものが死んだら自分も死ぬ』と言う意味になる」ことをふだんから言っていたか、思っていたのではないだろうか?

いや、もっと直接的に、

「この子が死んだら生きていけない」

と思っていたのかもしれない。言ったことがあったかもしれない。

彼は、その言葉に責任を持とうとしたんだろう。そうでなければ、その言葉が嘘になると。

そして何より、わが子への愛が嘘になると。

だから、

「自殺しなけあなりません」

と言ったのだろう。実際、そのすこしあとに「そのもののために そのもののために」とある。

こんな気持ち、普段から適当に言葉を話している人間にはわかるまい。

それは、俺がここまで記事にしてきた「言葉の裏を読む」人間のことであり、「評価は人が決めるものと言いつつ、自身が下した他人の評価に対して一切責任を取ることがない」人間のことである。

そんな人間に、彼がどれだけ自分の言葉に真剣に向き合ったかなぞ分かるまい。

わかったとしても、その真剣さを嘲笑するか罵倒するかのどちらかだろう。

(続く)

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