「あい」という感じは沢山ある。


その分、沢山意味がある。




夏も下山して良い頃合いなのにまだまだという感じで。


でも、夏バテにはならなかったというか、肝炎自体がそうなのか…まぁ、悪くない状態であった。


そんな頃、私の肝炎が治った頃にヤツに出った。


ヤツの名前は…そうだな。本名出すとあれだから偽名を付けよう。


彼の名前はヒロミ。


最初に会った印象は、「うわ、この人鬱だな」と思った。


顔、傷だらけで。


後からの話じゃ、自転車で転んで怪我したらしい。


そして彼はアル中だった。


顔の表情筋をまるで使わない様な顔だ。


そしてヤツは病院で昼間っからビール飲んでて、あんまり喋る所を見た事も無くて。


日中はビール飲んでるか、勝手に外出してパチンコを閉店までやって。食事もしないで薬もまともに飲まず、寝てしまう。


周りからは「そろそろ、強制退院じゃない?」なんて呟かれていたし。


でも、奥さんは彼を面白いと何時も評価していたな。

アタシはガクさんの落ち込み様に激しく困惑した。


強制退院させてくれと看護師さんに頼んだくらいだ。


アタシのせいで死んでほしくない。


アタシが重い。はっきり云わせて貰えば。人間ってそんなもんだろ?


自分が可哀想だから泣くんだよ。


だから隣の奥さんに相談した。


「何となく解ってたよ」


だと。かおりさんもナベさんも。唯一解っていなかったのは、アキ兄だけだ。


奥さんの話ではガクさんは此処の常連で、しかも此処で恋人探しをする達人らしい。


奥さん曰く、「暇だから此処の中がラブワゴン状態になっているんだよ」と。


私は呆れて欠伸が出た。


ひたすら眠い。


何故なら、ガクさんが死なないか心配でしょうがなかった。


恐怖色で一杯だったからだ。

「ちょっといいかな?」


何時もよりテンションは高かったと思う。ガクさん。


でもアタシは早く寝たいという気持ちもあってどうぞとパイプ椅子に座るのを勧めた。


ガクさんはごにょごにょしながら、アタシはそれに少し苛つきながら。


そうしてやっとガクさんは、はっきりと述べた。


「俺、林檎ちゃんの事を好きになったんだ」


アタシは唖然としていた。


一時、恋はしなくていいと思っていた。


大好きだった人を1月の始めに亡くしてから、恋も曖昧だったからだ。


ガクさんは鬱病だったし、柔らかくそう…ソフトにお断りした。


帰り際はかなり落ち込んでいるのを見ると私は少し恐怖を感じた。


また、


誰カ死ヌンジャナイカ?


って。