自分のホッケースタイルを追求しよう。
coaching

カテゴリー「コーチング」において前回から引き続き「ホッケースタイル」についてです。前回は日本全体の目指すべきスタイルについてでしたが、今回はもう少し的を絞って各コーチ自身のスタイルについてです。皆さんもご存じかと思いますが、NHLには色々なタイプのコーチがいます。攻撃重視、守備重視、トラップを多用するヨーロッパスタイルのコーチもいればフォアチェック中心のこてこてカナダスタイルにこだわるコーチもいる。各チームのカラーはそのままコーチのカラー。選手はそれぞれのコーチ自身が考えた「チームにあったチームの為のスタイル」に基づいてプレーし、それがそのままチームの特性になるんだよね。

日本は昔から全ての技術を満遍なく育てる基本に忠実な指導法、逆に言えば基本からはずれることは好まれない。ゴルフをやっても綺麗なスウィングと我流スイングでは尊敬されるのは基本に忠実なスウィングですよね。日本文化を批判しているわけでは決してありません。私は日本人で日本と日本人と日本の文化が大好きです。ただ基本を重視するあまり個性を育てる教育は海外諸国に比べると若干遅れているように思います。とくにスポーツの世界ではそれが顕著に表れている。「この選手を見習え」「このプレーは良いけどそれはダメ」。平均の取れた選手を育てることが良いコーチングとされている。

決して悪くはない。でもそうじゃないコーチがいてもいいんじゃないか?ちなみに私は「個性を伸ばす」ことが今後の日本アイスホッケーを成長させる鍵であると信じている。例えば足は速いが体が小さい選手に「でかい相手にも負けずに体で行け」「チェックから逃げるな」「パワーをつけろ!」と言うよりも「スタミナ消耗するから無駄なチェックはするな」「やばいタイミングのチェックは逃げろ」と私はアドバイスする。加えてスピードを活かす為に「スピードの緩急をつけてみて」「3歩でトップスピードに乗れるように」等のアドバイスで「スピードプレイヤー」を育てる。
もしくは体が大きいけど動きが遅い選手に「走り込みで脂肪を落とせ」「毎日スケーティングでスピードをつけろ」と言うより、「その体重をキープしながら3ピリまで持つスタミナをつけろ」「ボディチェックでは誰にも負けないパワーをつけろ」等のアドバイスで「パワープレイヤー」を育てる。

こうして育てた個性ある"駒"を氷上という"将棋盤"で使うわけです。個性の組み合わせによっては1/2の力しか出ないこともあれば10倍の破壊力を生むこともある。パワープレーのスペシャリストもいれば、ペナルティキルの仕事人もいる。チーム全員が同じスキルの選手よりも個性ある選手が多くいた方が"駒"の使い方のバリエーションも多くなるわけです。そしてその"駒"を使いながら相手の戦術を読み、それに対するシステムを駆使し司令官としてチームを勝ちに導く。これがアイスホッケーでこれがコーチングなんです。

そして何よりも一番大切なこと、それは「コーチ自身の個性です」。フィンランドが強いからフィンランドのスタイルを。カナダが世界一だからカナダの戦術を。スウェーデンが金メダルだから彼らのシステムを。それじゃいつになっても自分の求めるスタイルにはたどり着きません。日本ホッケーも各コーチが自分の個性を活かして「自分自身が考えるチームの為のチームにあったスタイル」を考えなければならない転機に来たのです。選手の個性、コーチの個性、そしてそれらの個性によって構成されるチームが持つ特性。各チームのポテンシャルが無限に広がります。皆さん!コーチングを楽しんで下さいね。ENJOY HOCKEY!!