日本人の日本人による日本人の為のホッケースタイル

カナダでコーチングを学んで早5年半、一貫性あるカナダホッケーからとても多くの事を学んだ。世界的プレイヤーが次々に生まれるのもチームカナダがずっと世界最高峰にいるのもうなずける。ただ日本がカナダスタイルホッケーを目指しても一生カナダには勝てないことも身にしみてわかった。カナダスタイルとはすなわち「パワー」を根本としたスタイル。ダンプイン(※1)からのフォアチェック、1on1でのボディチェック&ピン(※2)、ゴール前でのスクリーンプレー(※3)、そして乱闘。全ては個人のパワーをベースとしたシステムであり戦術である。日本はこのスタイルをコピーしても基本的なパワーの違いから一生カナダに勝つことはできないだろう。

じゃあ日本はどんなホッケーを目指すべきか?

これは正直私もまだまだわからない。ただ一つうっすら見えかけていること、それは日本人のクイックネス(※3)を活かしたシステムを構築すべきであること。日本人のスピード特にクイックネスは世界に十分通用するとカナダ人コーチも認めている。そのクイックネスを60分間フル活用する為にスタミナ消費が激しいボディチェックの量を減らすこと(状況を限定すること)、パワーにはスピードと技術で対抗する為に細かいプレーを正確にできるようになること、つまりスティックハンドリングやパス等の技術向上がクイックネスを活かした日本スタイルの構築につながると今は考えている。現在のNHL、技術を要求されるパワープレーセットは多くのヨーロッパ人で構成されているチームが多い。何故ならヨーロッパのホッケーこそ「柔よく剛を制す」、パワーよりも技術重視の指導を受けてきたからであると考える。

2年前カナダのコーチングマニュアルが何十年ぶりに見直された。話によるとスキル部門にはスウェーデンからコーチを呼んで彼らの技術向上プログラムを取り入れたとか。日本人の日本人による日本人の為のホッケーシステムはヨーロッパのホッケーを見ない限り完成しないと考える。

用語解説
※1 ダンプイン(DUMP IN)~ 相手ゾーン(Az)にパックを放り込んでから攻め入ること。
※2 ピン(PIN)~英語で留め針のこと。ボード(フェンスとは言わない)沿いにいる相手を針で刺したように押さえ込むこと。昆虫採集の標本で虫をピンで刺して留めるイメージだとわかるかな?
※3 スクリーンプレー(SCREEN)~相手ゴーリーにパックを見せないようにゴール前に立つプレー。基本的にパックとゴーリーを結んだ線上、ゴールクリーズぎりぎりに立つのが本来のスクリーンポジション。
※4 クイックネス(QUICKNESS)~敏捷性。短い時間、小さいエリアにおいての動きの早さのこと。スピードのある選手の中でも短い時間でトップスピードに乗れることを「クイックネスがある」と言う。