バタフライスタイルは進化してきたのでは?
スタンディング(※1)スタイルが主流だったのはひと昔前、1980年代後半パトリック・ロワがデビューしてNHLゴーリーのトップに君臨してからはバタフライスタイル(※2)が世界的に主流となったのは皆さんもご存じかと思います。ただ最近NHLを見ていると「えっ?!何かゴーリーが転がりながらセーブしているぞ?」というシーンをよく見かけます。バタフライの神様がロワならその対極にいる我流の神様はドミニク・ハシェック(よく転がります)、最近の流れではこの2人のスタイルを組み合わせたスタンディングバタフライが主流になっているような気がします。(すいません、このスタイル名は私が勝手に命名しました)

New Jerseyデビルスのマーティン・ブロドューワCalgaryフレイムスのミカ・キプルソフDallasスターズのマーティー・ターコDetroitレッドウイングスのドミニク・ハシェックNYアイランダースのリック・ディピエトロTrontoメープルリーフスのアンドリュー・レイクラフトNYレンジャースのヘンリック・ランクエスト彼らは皆、今季NHLで失点率や防御率で上位にいるゴーリー達だ。
でも彼らのセービングを見ていると時にはバタフライなんだけど、時にはスタンディング、時にはくるくる回りながらセービングする。つまりロワとハシェックを足して2で割ったようなセービングスタイルなんだよね。これってバタフライの進化型なのでしょうか?それにしてもくるくるまわりながら160km/hのシュートを本当に彼らは良く止めますよ。感心するのはパックを見る動体視力とそれに反応する瞬発力ですね。

さてここで私の持論をひとつ。「バタフライ」はロワがするから世界最高のスタイル。足が長く座ってもゴール下部分は全てパッドでカバーされ、背が高いから肩口も開かない。後はキャッチングとブロッカー裁きで残りのスペースをカバーする。カバーできている部分においてはシュートは「止まる」、カバーできていない部分ではシュートを「止める」という理にかなったスタイルだね。でも背の小さいゴーリーがバタフライをしたら?!?ポストからポストまでカバーできる足の長さが無く、座ったら肩口はがら空き。これじゃ世界最高のスタイルでも世界最低のセービングになってしまうんじゃないかな?

コーチはプレイヤーに限らずゴーリーにもその子供にあったスタイルを奨めてあげるべきです。ただゴールテンディングを教えるのは研究に研究を重ねたゴーリー専門コーチもしくはゴーリー経験者ではないとコーチにとっても相当難しいことです。ただ基本は教えられます。スタイルで止めるのではなくパックを見て反応で止めるのが基本です。座るのが早いのは「止まる」のを期待しているだけであって、「止める」と思っていないからです。まずはどんなにゴールされても最後までパックを見て反応で止めようとすることです。バタフライスタイルを取り入れるにしてもスタンディングで守るにしてもパックへの反応無くして成功はしないはずです。

もう一度繰り返します。
バタフライは恵まれた体の人には世界最高のスタイルです。ただ一歩間違うと世界最低のセービングになってしまいます。だからNHLのゴーリーはそれぞれのスタイルから良いところを取って自分のスタイルを見つけ始めたんじゃないかな。

用語解説
※1 スタンディングスタイル~文字通り、パックを最後までよく見て両手両足の反応でシュートを止めるスタイル。ゴーリーは一度座るとその後のリバウンドに対応しづらい。スタンディングで止められればリバウンドにも素早く対応できるというメリットがある反面シュートを立って止める為低めのシュートにめっぽう弱い。
※2 バタフライスタイル~座った形が蝶のような形からネーミングされたスタイル。パッドがアイス面に1直線になる為低いシュートはほぼ止まる。パトリック・ロワが刻んだ数々の歴史的記録はこのバタフライ無しではあり得なかっただろうね。