令和六年十一月場所も無事に千秋楽を迎えた。

今年最後となる場所も終わり、よってこの1年の本場所もこれで終わったわけである。

振り返ってみればいろんなことがあった1年であったが、これは言い出すとキリがないのでやめよう。

まず驚いたのは十一月場所が1996年以来28年ぶりに「札止め」となったことだ。

故に、年6場所の全90日間の「札止め」も28年ぶりである。

「札止め(ふだどめ)」とは、チケットの完売を意味する。

今までは、もし九州場所を観に行くことになってもチケットは余っているから大丈夫だろう、

とタカをくくっていたことが、そんな事態ではなくなったのだ。

筆者は2011年の相次ぐ不祥事の影響による大相撲の人気低迷時代ももちろん体験している。

あの時は本場所が行われている午後に行ってもまだチケットが売れ残っていたのだ。

なので、時間が空いたから相撲でも見るかぁ…と気楽な感じで観戦出来ていたのだから、

今となっては信じがたい状況である。

28年前は「若貴ブーム」に後押しされたものであったが、当時は異常な人気で、じゃあ

今の相撲もそれほどの人気なのか?と問われると疑問も出る。

おそらく、インバウンドによる外国人の団体ツアー客の増加によるものと推察される。

これは喜ばしいことではあるのだが、日本の国技である相撲のチケットを当の日本人が

入手出来ないのはいかがなものか…。

 

■場所中の訃報

場所中に元横綱・北の富士さんの訃報が伝えられ、関係者も大いに驚いたことであろう。

北の富士さんのことは改めて追悼コラムで述べたいと思う。

元横綱とかいうだけではなく、本当にいい方だった…合掌…。

 

■最高の形で締めくくられた場所

先場所は共に8勝7敗と大関としては物足りない成績で終え、大の里にすべてを持って

いかれたような両大関であったが、今場所は人が変わったかのように勝ち星を重ね、

両力士ともに1敗の相星で千秋楽結びの一番で雌雄を決すという形となった。

大関同士が優勝を懸けての千秋楽相星決戦はこれも実に21年ぶりとなった。

21年前は2003年の名古屋場所、魁皇(現・浅香山)と千代大海(現・九重)との

対戦であったが、この時は11勝3敗同士で優勝した魁皇は12勝3敗。

今場所の14勝1敗は高い水準での優勝と言えよう。

筆者はこの決戦を前に、今回は豊昇龍が優勝を決めるだろうと思っていた。

それは今までの対戦成績でも勝っているし、これまでの流れも運も含めて豊昇龍に流れが

来ているだろうなと感じていたからである。

それに豊昇龍はここ一番での勝負運も強い力士だ。

ただ、心情的にはそろそろ琴櫻にも初優勝を決めてほしいという気持ちももちろんあった。

結果的には足を仕切り線で滑らせた豊昇龍に土がついたわけだが、気合いとしては十分だった。いや、気合いが入りすぎていたのかもしれない。

その点では、琴櫻は実に落ち着いていたのである。ここが豊昇龍を上回っていた部分であろう。

 

■3代にわたる相撲一家が成しえた功績

ご存じの通り、琴櫻の祖父は元横綱・琴櫻(先代・佐渡ヶ嶽)である。

その祖父の四股名を継いで今は同じ琴櫻を名乗っている。

現役時代は猛牛と称され、親方になっても厳しい稽古で有名だった彼岸の祖父もきっと

喜んでいるに相違ない。

父であり、師匠でもある元関脇・琴ノ若の佐渡ヶ嶽もこの日だけは父の顔になっていた。

オヤジの成しえなかったことを息子が果たしてくれたのは感慨無量であろう。

実に3代にわたって角界に功績を残しているのだ。

とは言え、琴櫻はまだこれからである。

今回の優勝で何だかまた一段上に上がったような気がするので、綱とりはかなり現実的に

なってきていると思う。

筆者も幼少の頃の将且(まさかつ)少年を知っているが、相撲部屋で育った彼は2歳から

相撲を始め5歳からは道場に通い、それこそ礼儀作法から相撲の稽古まで祖父に叩き込まれ、

いろんな意味で最高の相撲環境を過ごして今の琴櫻があるのだ。

こうなると4代にわたり…の期待もある。

綱とりが今一番大事であるが、そろそろ嫁取りも気になってくる。まぁ、いらぬお世話か…。

 

■綱とりへの期待

協会の審判部からは公式に両者ともに来場所が綱とりの場所になると発表されている。

ここ最近はあともう一つかな…と筆者も思っていたのだが、13勝1敗同士の大関が

千秋楽で相星決戦を戦ったことを考えても、また内規である「優勝」「優勝に準ずる成績」

にしても両力士は十分その評価に値するものであったと思う。

今場所と同じ状況で今度は豊昇龍が優勝してももう両者を昇進させてもいいのではないか

と思う。

そうなれば、照ノ富士も安心して引退を迎えることが出来るだろう。

 

■試練となった新大関の場所

大の里は新大関の場所で、「新大関で優勝」という白鵬以来の期待もかかっていたが、

試練の場所となった。

結果的には早々と優勝争いから脱落し、9勝6敗に終わってしまったが、

大の里は基本的には強い力士である。

この場所をいい経験として、来場所以降でまた大の里らしさを出していってほしい。

そして、俺が先に横綱になるんだ!の気概でまた両大関と戦ってほしいと思うのである。

■またもや振り出しに戻った霧島

今場所の霧島はまったく本来の実力が出せなかった。

初日からの連敗も響き、結果的には6勝9敗で今場所を終え、大関復帰どころか、

来場所は平幕となるのが決定的だ。

しかし、霧島が本来のチカラを取り戻せば三役復帰は濃厚。また頑張ってほしい。

 

■三役陣は明暗

大栄翔は何とか8勝7敗と勝ち越して関脇の座を守ったもののここから先に行くには

やはり二桁勝星がほしい。

若元春は二桁10勝と勝ち越し、来場所の関脇返り咲きを確実にした。

久々の三役となった正代は4勝11敗と大きく負け越し。

ご当地の九州場所だったが、やはり正代もいい時と悪い時のムラがある。

■活躍した三賞受賞組

共に関脇経験のある平幕力士が今場所は活躍した。

東2枚目の若隆景は二桁10勝を挙げて5度目の技能賞を受賞。

兄の若元春と共に来場所は三役での活躍が期待される。

東3枚目の阿炎も今場所は得意の突き押しが光った。

その強い突き押しがあって、豊昇龍に突き落としで勝ち、準優勝力士に相星決戦以外で

唯一土をつけたのである。その白星を評価されて2度目の殊勲賞を受賞。

受賞が決まってからの千秋楽の相撲は残念だったが…。

 

隆の勝も先々場所、横綱と優勝決定戦を戦った時のように前半から勝ち星を重ね、

優勝争いに名を連ねた。後半で星は落としていたものの、大の里戦での見事な相撲もあり、

11勝を挙げて4度目の敢闘賞も受賞。

三役まではあと一歩。この調子を来場所も維持できれば三役返り咲きも濃厚だろう。

 

■戻してきた豪ノ山

入幕以来、平幕上位で戦ってきた豪ノ山で、三役昇進も目の前と思っていたが、

ここ数場所は負け越しが続いた。

しかし、今場所の豪ノ山は本来のチカラが戻ってきたようないい内容だった

これで平幕上位へとまた戻ってくる。来場所での豪ノ山にも期待だ。

 

■家賃が高かったかな…

東西4枚目の美ノ海と欧勝馬は自己最高位であったが、共に4勝11敗と大きく負け越し。

ちょっと家賃が高かったかな…。

※「家賃が高い」…力士が自分の実力以上の地位にいること。

 

■若手はもっと前へ出る相撲を!

少し残念に思っているのは西5枚目の琴勝峰。

途中休場も含めて大きく負け越したが何だか消極的な相撲が目立つ

それと、ここ数場所負け越しが続いた湘南乃海だ。

今場所は8勝7敗とギリギリ勝ち越したものの、この力士も消極的な相撲が目立つ。

いい身体があるのだから、二人とも若手なのだから、もっと前に出ようぜ!

下記のセンパイを見習ってくれ!

 

■アラフォーの2人がスゴい!

東11枚目の玉鷲が今場所で40歳を迎え、8勝7敗と勝ち越し!

40歳を迎えての幕内勝ち越しは本当に凄いことなのだ!

西10枚目、花のロクイチ組、つまりは38歳の宝富士も8勝7敗と勝ち越し。

先場所で妙義龍と碧山が引退した為、ハナのロクイチ組で残る関取は宝富士ただ1人。

まだまだ頑張ってくれそうな気がするのである。

 

■待望の新入幕!?

十両東4枚目の玉正鳳が二桁10勝を挙げて来場所の新入幕濃厚だ

義兄の玉鷲と共に幕内で相撲を取るのは感無量だろう。

他に来場所は4人の再入幕が考えられる。

十両優勝した金峰山はもちろん、伯桜鵬、北の若、輝だ。

逆に幕内からの降下は、大きく負け越した佐田の海、竜電、武将山、それと獅司、朝紅龍の

新入幕の2人。また来場所再入幕を期待したい。

 

■十両は混戦を勝ち抜いた金峰山が優勝

幕内経験もある金峰山が12勝で十両優勝を決めた。

西の筆頭で来場所は再入幕と共に大きく番付を上げるだろう。

他にもそれに続く二桁勝星力士が続く。

剣翔は途中まで優勝争いトップだったけどな…

剣翔の他に伯桜鵬、紫雷、途中休場の欧勝海、新十両の安青錦、再十両の栃大海が二桁10勝。

安治川部屋の安青錦は今後の活躍も期待される。

栃大海が10勝を挙げたのも大きい。

先場所に碧山が引退した為、春日野部屋の関取がいなくなる危機もあったが、

このまま入幕まで一気に駆け上がってほしい。そのチカラは十分にあると思っている。

来場所番付を上げてくる元十両の栃丸もそのうちに戻ってくるだろう。

 

■文句なしの新十両昇進、羽出山

先場所16枚目での幕下優勝であったが為に西幕下筆頭に留め置かれた羽出山(はつやま)

だったが、今場所は筆頭の地位で5勝と好成績を挙げ、今回は文句なしの新十両昇進を決めた。

東洋大学4年時に全国学生選手権16強の実績を残したため、令和4年三月場所に

三段目最下位格付け出しで初土俵を迎え、幕下で停滞したものの、先場所幕下優勝で一気に

関取の座まで駆け上がった。

来場所の新十両での戦いも期待したい。

 

今回、十両昇進は少なくなるであろう見込みだ。

東2枚目で5勝を挙げた木竜皇が1場所で再十両となる見込み。

 

逆に十両で大きく負け越した東10枚目の阿武咲(2勝11敗2休)と

西11枚目の千代丸(1勝14敗)の幕下降下はもはや避けようがない。

2人とも幕内上位で戦ってきた力士であるので、寂しさも漂う。

もう全盛期のチカラはないかもしれないが、まだまだ本来のチカラを発揮すれば戦える。

また頑張ってほしい。

来場所は若ノ勝、大辻、今回幕下優勝の長内あたりが新十両を狙える感じだ。

 

■幕下以下では…

幕下は前述の高砂部屋の長内が優勝を決めた。

来場所は幕下上位に上がってきて、新十両を狙う。

三段目では炎鵬に勝った藤闘志が優勝を決めた。

正に四股名の通り、闘志たぎる相撲で元幕内力士をねじ伏せた感じだ。

惜しくも三段目優勝を逃した炎鵬だが、身体を見てみると仕上がってきている。

このまま順調に幕下から十両へと戻ってくる可能性は大きいと思う

序二段は芝田山部屋の錦国、序ノ口では武隈部屋の豪ノ湖が優勝した。

 

今場所は久々に番付上位の大関同士が戦うという本来の形に戻った

これはいいことなのだ。

そして琴櫻と豊昇龍は更に上の番付を目指していってほしい。

ただ、もう一人の大関・大の里もこのままでは終われないだろう。

来場所は年明け1月12日が初日となる。

力士にとっては少し余裕のある日程だ。

横綱・照ノ富士の存在が薄くなっているが、初場所は出場してくるのだろうか。

巡業中の力士の感想では、横綱が軽くなった感じがすると言っていたようだが、少し心配だ。

来場所以降は横綱昇進レースと共に、返り三役も含めた三役陣が大関昇進への足掛かりを

作れるかどうかも見ものだ。

 

そんないろんなことを期待して、来年最初の一月場所を待ちたく思います。

ますます入手困難になるであろうチケット…。一月場所は無事に入手できるかなぁ…。

 

令和6年11月25日(文・呼出 民男)