老いた。老いました。

オープニング、千之助が田んぼに転がり落ちるシーン。カメラリハーサル後に天晴役の天笑が
「千さん、本番落ちたらあきませんよ。笑」と

振ってきたので可愛い後輩を裏切る訳にもいかず、
本番で落ちました😁

カメラアングルを変えて計３、４回ですかね。
濡れないように、小川にも転がり落ちました。

ロケでの撮影は空間が広くていくらでも動きようがあるので、楽しいですね。

前触れもなくあんなことをする役者を撮影するカメラさんは大変でしょうけど💦

＂人気者だったのに関わらず、現在の人があまり知らないのは、彼の出演する芝居のテレビ中継が少なかったから。なぜなら、アドリブが激しくて事前にカメラワークを決められず、芝居も時間内に収まるか計算できなかったので敬遠された＂

という、

千之助のモデルの方についての、

私が一番好きなエピソードに基づいただけですけどね😁

地方巡業中、五厘屋にすべてを盗まれ途方に暮れる中、千代が衣装も道具もいらない「狸の嫁入り」という芝居を提案するシーン。

台本には千之助が「アレやったらいける！まかせとけ！」と乗っかったものの、芝居がウケなくて千代にキレる旨が書いてあったのですが、

千之助が乗っかるよりも、逆に、千之助＂だけ＂が

乗り気じゃなくて無理矢理にやらされてウケない方が、全面的に千代の責任になって面白いと思うんだけど、と現場でみんなとディレクターに提案して、ああなりました。

「狸の嫁入り」という、架空の芝居なので、

【エンディングは皆で「ポンポコポン！ポンポコポン！」と腹太鼓を打って、お客さんの拍手の中終わる台本なのに、途中、あまりにもウケないので心が折れた皆は逃げるようにハケてしまって、残された千之助がどエライ空気の中、泣きそうになりながらひとりで「ポンポコポン！」をやる羽目になった】

というストーリーを私は勝手に想像して、

その旨のあの千之助のセリフも本番だけで言いました😁

千代も一平もさすが、

うつむいて笑ってましたが

漆原は完全に笑ってましたね😁

動かない身体を千代や香里に支えてもらい、

田んぼに転がり落ちたり、芝居中でも転ぶほどに老い、役者としても人としても終焉が近い残りわずかな時間、全国を家庭劇みんなで芝居をしながら旅することに今までにない楽しさや安らぎや愛しさや幸せを感じているであろう千之助と同じく、

それらを感じて撮影をしている私がいました。

そして、千之助と大山社長の今みでの長い付き合いで、直接言葉を交わしたシーンは初めてなんですよね。

（デビュー直後のあまりにも若い須賀廼家兄弟の時に

大入り袋をもらってお礼を言ってますが）

台本のセリフは敬語で「大山社長」呼びになっていましたが、経営手腕は認めているものの、その手腕での身勝手さで、今回も、そしてずっと自身も、劇団も＂弄ばれ（もてあそばれ）続けてきた＂千之助は、たとえ嫌味の意味でも敬語なんか使っているとは私は思えず、すべて怒りを含ませたタメ口にし、「大山社長」呼びも「大山のジジイ」に私はしました。

あの千之助が大山社長のこれまでの仕打ちにいつも怒りを堪えていたのは、座員のことを考えてです。

自分がキレたら、座長の一平や千代、座員たちの処遇が悪くなる。座員たちの家族の生活も。

私はそう考え演じていました。

だから今回、大山社長に言い放ったの一平の言葉は

千之助にとって驚きと頼もしさが入り混じったものでした。

明日からも千之助は自分の役目をまっとうするために、老体に最後の鞭を打ち続けます。

明日は須賀廼家万太郎、花道です。

写真は出番前。

狸の中では、千代だけがウケる気マンマンです。

狸の嫁入り、裏切りの座員たち。