江國香織著の「きらきらひかる」は平成6年に書かれたものと知り驚いている
江國香織の作品は何冊も読んでいるけれど、きらきらひかるほど読み返したものも他にない
ホモのだんな睦月とアル中のつま笑子、だんなの恋人紺くんの恋愛小説。恋愛小説において、泥沼にならない三角関係とは果たしてなんなのだろうと思う。
泥沼にしているのは睦月と笑子の両親、笑子の友達であって、夫婦の揺るがない、情愛と違った愛情、思いやりが窺える作品だった。
江國香織小説の特徴というか、好みが分かれるポイントのひとつに「終わりが分からない」というものがあるかと思う。日常の中の些細な違和感やすれ違いを感じさせるのに、突然ぷっつりと切れてしまう。きらきらひかるもそれは同じで、最終的に紺くんと夫婦は3人が当たり前、という風に変わって本編は終わった。
笑子の寂しさや不安定さに溢れているのに、睦月の愛情はそれを薄めることは出来てないと思う。かまってくれる人間が欲しいわけじゃないけれど、自分以外に大切な恋人がいるのに自分を抱き締めてくれるその距離感が笑子には不可欠なのかもしれないと思う。そしてその距離感が崩れることを恐れて、踏み込ませない妻。睦月を大切にしたいのに大切に出来ない自分を、嫌いになりきれなくてもやもやしてる女というのが笑子のイメージ像だ。
笑子、という名前の、漢字と女性像の微妙に噛み合わなくて悲しいな。と読み終わったときいつも真っ先に考える。漢字の由来が手に取るように分かるから、両親の込めた願いが分かるからだと思うけど。
「ぬるい眠り」という短編集にきらきらひかるの続編というかスピンオフ、10年後のきらきらひかるの世界が書かれている。笑子と睦月は相変わらず夫婦で、睦月を捨てた紺くんの新しい恋人、その姉と姉の2度目の旦那の話。キャラクターの量が他の長編よりも多いな、と思う。
きらきらひかるの最後では笑子と睦月と紺くん、3人はぴったり納まっているように見えたのに、とちょっとだけ悲しかった。
江國香織の作品は永遠の関係、なんて温い口約束をことごとく裏切るものがある。リアルで、夢を見させないし、作品全体に悲しさが漂っているのに、余韻が忘れられなくなる作者。
