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スペインの“本当の”サッカーここバルセロナの生活をし始めて早くも3カ月が過ぎた。様々な期待と不安をもって始まった留学生活も、今ではだいぶ慣れてきて、僕自身バルセロナの街にずいぶん馴染んできた。 ここまでの留学生活を振り返ってみると、バルサのリーガ優勝に始まり、W杯開幕、そしてスペインの優勝と続きなかなか体験できない経験をしてきた。そのせいもあってか、未だ“W杯ノスタルジア”が抜けない。 実際、現在スペインはバカンス期間。もちろんサッカーの方もオフシーズン。プレシーズンも始まっているところもあればもうすぐ始まるところもある。そういうわけで、たいして大きなニュースもなくゆっくりと時間が流れていく。 最近、ここ3カ月間で出会えたサッカー関係者(ライター、コーチ、選手、カメラマン)の人達ももちろんオフシーズンなので、その人達とよくビーチサッカーや草サッカーに興じているのだが、そこで聞ける話がものすごく勉強になるのだ。 §現場の人達が見たスペインサッカー§ スペインのサッカーと言われると、バルサを筆頭とした美しくスペクタクルなサッカーを思い浮かべるだろう。実際、W杯を見事なパスサッカーで制したスペイン代表が一番すぐに脳裏に浮かぶはず。 しかし、一般的に言われる“スペインのサッカー”を行っている(行うことができる)のはバルサなどのビッグクラブと代表クラスの選手達ぐらいで、ほとんどのチームはそんなことはできないのだ。 まずスペインのサッカーリーグの構成を紐解いていくと、 スペイン・サッカー連盟(RFEF)が統轄 ・プリメーラ・ディビシオン(いわゆるリーガエスパニョーラで1部リーグ) ・セグンダ・ディビシオン(2部リーグで来季からバルサBが参戦) ・セグンダ・ディビシオンB(3部リーグ) RFEFと各自治州のサッカー協会(17州)が統轄 ・テルセーラ・ディビシオン(4部リーグ) 各自治州のサッカー協会(17州)が各地域ごとに統轄 ・ディビシオネス・レヒオナレス(5部リーグに相当するのだが、このカテゴリーから各州によって形式が異なる) ※カタルーニャ自治州の場合 カタルーニャサッカー協会が統轄 ・プリメーラ・カタラナ(5部リーグ) ・プレフェレンテ・テリトリアル(6部リーグ) ・プリメーラ・テリトリアル(7部リーグ) ・セゴナ・テリトリアル(8部リーグ) ・テルセーラ・テリトリアル(9部リーグ) となっており1部、2部がプロ・リーグで残りがアマチュア・リーグとなっている。 このようにして見てみると、リーグのシステムがかなり細分化されておりチーム数が圧倒的に多いのがわかる。 そしてもう一度言うと、“スペインのサッカー”を行っているのが1部のさらにその中の数チームのみなのだから、いかに“スペインのサッカー”を行っているチームが少ないかがわかるだろう。 ここからはここバルセロナのサッカー関係者から聞いた話に沿う。 それでは大部分のチームはどのようなサッカーをするのか。それはフィジカル・サッカーだ。フィジカルを生かして中盤をとばし、真っ先にゴールを目指すサッカー。内容よりも結果を出すことが求められるため、綺麗なパスサッカーはいらないと言う。 蹴って、走って、シュート、蹴って、走って、シュート・・・の繰り返し。そして激しいタックルも多々あるので退場者も多く出るとか。没収試合も1年に何回かみられるという。とにかくみんな口をそろえていうのは「バルサのサッカーとは全くの別物」。 スペインがW杯優勝したときにスペイン国内では『育成の成功』と言われたが、日本がよくいう“育成”とは少し違うと僕は思う。 ここでの育成はもちろん日本が指す育成(優れた指導者の下、優れたサッカー観を養うこと)の意味と、スペインの厳しい競争社会を生き抜く逞しさや精神力の強さを育てる育成があるんだと思う。 日本がスペインのようなサッカーを仮に目指すならそちらの育成、つまりリーグ数を増やし、チーム数を増やし、さらなる競争社会のできるリーグ編成をしないといけない。 美しいサッカーは美しくないサッカーを経ずして美しいサッカーにはなれないのだ。 そして選手達個々についてもおもしろいことを聞いた。 ここスペインの選手達は自主練を全くやらないのだ。自主練はいわゆる居残り練習。ここで指導している人いわく、彼らは練習が終わるとすぐさまドレッシング・ルームに戻り各自のプライベートの用事に出かけるという。 ある選手はデートに行ったり、ある選手は家族サービスに行ったり、ある選手は親に連れられてどこかに遊びに行ったりといった感じに。それはユースチームでもそうだし、常にレギュラーが確定されていない選手でさえそうなんだとか。 自主練をしない分、練習での集中力が高いのかって言ったら、案外練習中にぶつぶつ文句を言っていたりするらしい。これはエスパニョールのフベニール(高校生の年代ぐらい)でコーチをしていた人から聞いたのだから余計に驚きだ。 そして下部のリーグのチームになると、日曜がだいたいリーグ戦でその前日の土曜日はなぜかOFF。これにはものすごく驚いた。そしてここバルセロナにいる選手いわく、「多くの選手が身体を何かしら動かして汗をかいているものだと思ったら、ほとんど選手ががっつり休んでいた。」そう。でも、「試合ではなぜか身体を動かせる。」という。 また、選手としてきている女の子がいるのだが、彼女が今練習に参加しているのはカタルーニャ州の2部にあたる女子チーム。そのチームに参加した彼女いわく、「みんなシーズンが終わったからか全く本気でやっていなかった。」そうだ。シーズンが終わり、オフシーズンに入る前とはいえ、練習には常に真面目にという日本人からしたらおかしな話だ。 また大体の選手はプレシーズンがあけた当初は、みんな身体が重く全く動けないのに、なぜかシーズンが始まるころには100%に戻してきているという。これはもはや文化の違いと片付けていいものか。とにかく彼らはケジメがびっくりするくらいはっきりとしているのだろう。 このようにいろいろと話を聞いていると、今までの自分の考え方が何度も覆されたことか。日本にいては見えてこない世界王者のサッカーの現状が、いろいろなことを通して見えてくる。 もし日本がスペインのようなサッカーを目指すとしたら、スペインの表面上の部分だけでなく全部を知るべきだ。つまり直接現地に赴いて、直接世界のサッカーに触れる。これが育成云々の前にしなければいけないことだと僕は思う。
W杯総括②W杯が終わってはやくも1週間が過ぎ、ここバルセロナもバケーションモードに変わってきた。様々なドラマを見せてくれた南アフリカ大会も今じゃ遠い昔のよう。 かくいう僕自身は決勝を一番盛り上がる首都の(わざわざ決勝を見るために足を運んだ)マドリッドで目の当たりにし、それ以来なにやら抜け殻状態。いつもみたいにビーチに行っていろんな国の人とビーチサッカーするも、やっぱり心にぽかーんと穴が空いている。 先日も、地下鉄で携帯電話を盗まれ今日新しいのを買うはめになった。ここバルセロナに来て一度もそういう目にはあったことがないのに、W杯終わった途端このざまだ。 ただ時おり、ホストファミリーが爆音でW杯のテーマソング『Waka Waka』を流しているのを耳にするとその穴も自然と満たされる気がする。ただ爆音で流すたびにスピーカーを使い過ぎているようで、毎回停電する度にその気持ちが萎えるのだが。 こんな状態だが、気持ち切り替えるためにもちゃっちゃとW杯総括してしまおう。 §W杯総括§ 今大会は美しいパスサッカーを標榜するスペインの優勝に終わり、これからのサッカースタイルに影響を与える可能性を残していった。しかし大会自体を振り返ると全ての試合で美しいサッカーは見られなかった。 前回の記事で取り上げているように今大会の得点数は今までに比べて低い。そこからも攻撃的なサッカーを標榜するチームの少なさが伺えよう。なぜこうなったのか自分なりにいくつかの点に分けて考えてみたい。 ①アフリカ勢の予想外の姿勢 地元開催であるアフリカ勢の多く(ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア、南アフリカ)は守備からのアフリカ人特有のスピードとバネを生かした速いカウンターを軸に試合を運んでいた。 地元(アフリカ大陸をひとくくりと考えて)なのだからブブゼラの後押しをうけて、前がかりにくるものだと思っていたが、欧州勢に対する実力不足を懸念してか多くのチームが守備的だった。 ②フォーメーション 今大会をざっと見渡すと、同じようなフォーメーションで戦っているチームが多かった。とりわけ強豪国にもそれが見られ、その布陣というのが4-2-3-1と4-4-2の2ボランチを置く形だ。 4-2-3-1 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 4-4-2 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 思いだせる限りでも4-2-3-1ではオランダ、ドイツ、ウルグアイ、ブラジル、ガーナ、フランス、デンマーク、スロヴァキア、ホンジュラス。4-4-2はイングランド、韓国、セルビア、アメリカ、南アフリカ、スロヴェニア、イタリア、スイスといったところか。 挙げた国の中でも、強豪国に入るオランダ、ドイツ、イングランドは自分たちでボール保持することが多く、2ボランチのうち片方が上がって1ボランチっぽくなることが多かった。(スペインを相手にしたドイツ、オランダは2ボランチになってしまっていたが。) 一方ブラジル、ウルグアイなどと言った実力的にも上に位置するが、自分たちでボール保持していても2ボランチが上がらずにその形を保っていたチームもあった。これらのチームは攻撃を前線にまかせるタイプだ。 あとは実力的に劣るというのもあって一つ前にポジションをあげて、前線に人を費やさずに2ボランチを保つチームが多かった。 そして2ボランチではなくとも、日本やギリシャ、ナイジェリア、ニュージランド、北朝鮮(5バック、3ボランチ)といった実力的に下位に位置するチームはボール保持を諦め、最初からカウンターを狙っていた。 つまり2ボランチの状態を攻撃時も保つゆえに前線に人数をかけられず、カウンター、もしくは個々の能力、セットプレーによる得点を狙ったチームが多かったため攻撃的な試合が見られなかったのだ。 ③W杯ゆえの特徴 W杯はどうしても世界各国(主に欧州)リーグにあわせるため、リーグシーズンオフからプレシーズン開幕までの間の月、6、7月開催になってしまう。そしてFIFAが求める選手の予備登録期間(30名まで)が5月11日までとなるのでW杯開幕まで準備期間はおよそ1カ月間。 普段から集まって練習し一つのチームを仕上げるクラブ・チームとは違い代表ではシーズンの途中に何回か招集を受けて代表の練習に参加するだけである。もちろん試合が終わればすぐさまクラブに戻るため、ほとんどが傭兵状態だ。つまりたった一カ月で監督が考えるコンセプト、戦術を浸透させなくてはならないため、どうしても守備的な戦術をとってしまいがちになる。 もちろん守備的な戦い方が一番簡単とは一概に言えないが、スペインのようにボールも動いて人も動くパス・サッカーよりは選手達に浸透させやすい。前線でどういうポジショニングをしてどういう風に動くのか、そしてどのようにプレスをかけてボールを奪うのか。やはりスペインのようなサッカーをするには事細やかにポジション修正していかないとなかなか効果はでない。 そう考えるとほぼバルサとマドリーの選手でチームを構成したデル・ボスケの選択は、クラブと代表間のギャップというそのデメリットをうまくかわしたと言えよう。 加えて、最大でも7試合で優勝が決まるその試合数の少なさも少なからず影響している。4年に一度の大会で、かつ国の責任を背負う選手達にとっては1シーズンかけて戦うリーグ戦やカップ戦とは比べ物にならないほど、一試合一試合が重くのしかかるはずだ。 それゆえに無意識に慎重に試合を運んでしまうのであろう。リスクを避けるパスの数も増え、ドリブル突破の回数も必然とクラブ間のリーグやカップ戦よりもあまり多く見られなかった。 つまり、幾分かW杯ゆえの影響もみられたのだ。 ④高地とジャブラニ 今大会は多くのスタジアムが1000m以上の高地に位置し、(10スタジアム中6つ)64試合のうち37試合が1000m以上の標高で試合が行われた。 1200m強の高さでは選手達の得られる酸素濃度は薄くなり、体が重くなる選手も現れる。しかもその高さに慣れるには一週間ほどかかると一般的に言われており、ただでさえ少ない練習期間の一週間をまず高度に慣れさせなければならない。 かつ、以前にも書いたが問題ありの公式球“ジャブラニ”はただでさえ多くの問題点を抱えているにもかかわらず、高地では空気抵抗が少なくなるため球のスピードが増す。かつカーブや曲がる球も普段より曲がらないため、それを考慮しなければミスが増えてしまう。 実際にミスは多く見られ、フリーキックやミドルシュートも枠外に飛んで行っていた。つまり高地ゆえに運動量が落ちやすく、そしてボールのせいもあって攻撃時の効率性が低下し、守備的にならざるを得なかったのである。 §2014年に思いをのせて§ ここまでざっと思いつく限りの点で今大会のW杯を総括してみた。次回は2014年のブラジル大会。EURO2008の優勝と今大会のW杯優勝をパスサッカーを標榜するスペインが成し遂げたこともあって、これからのサッカースタイルも徐々に変化するかもしれない。実際に世界的な流行りもその方向に向かってきている。たった4年でどこまで変わるのか。次のW杯も楽しみで仕方ない。